京都の古い町家で夫、娘、息子と暮らす40代の美濃羽まゆみさん。洋裁作家・手づくり暮らし研究家として活躍しています。ここでは、自由なアイデアで使いやすく整えられた美濃羽さんの台所をご紹介。すっきり片づき掃除もラクになるキッチンアイテムの収納術など、取り入れやすいコツが満載です。

毎日立つ場所だから、台所は動きやすく、心地よく

洋裁作家・手づくり暮らし研究家の美濃羽まゆみさんは、築約100年の町家に家族4人暮らし。住居とつながる隣の町家を仕事場にしていることもあり、一日の大半をこの連棟で過ごしています。

【写真】町屋の特徴を活かした、美濃羽まゆみさんの台所

なかでも台所は、朝から晩までくり返し出入りする場所。毎日のごはんをはじめ、梅干しや漬物など、保存食も手づくりする美濃羽さんにとっては、第二のアトリエともいえる大切な存在です。

「ひととおりリフォームされていた町家に引っ越してきたので、台所にも手を入れず、そのまま使ってきました。初めのころは独立型のキッチンに憧れたりもしましたが、使ってみると案外ゆったりしていて、掃除もラク。16年たった今では、すっかりなじみました」(美濃羽まゆみさん、以下同)

町家の特徴でもある奥行きと吹き抜けはそのままに、床は土間から板張りに改装され、たっぷりの収納棚も備わった美濃羽家の台所。調理台には水きりラックもなく、すっきりとした印象ですが、コンロまわりに吊るされた、いくつもの使い込まれたザルからは、日々の食に丁寧に向き合う、暮らしの気配が伝わってきます。

「野菜を切って入れたり、そうめんやパンを盛りつけたり、ザルは便利なので、よく使いますね。拭かなくても、吊り下げておけば乾いちゃう。油がとんだりしているかもしれませんが、野菜や麺の湯きりなどで毎日使っているせいか、とくに気になりません」

身近なアイテムを組み合わせた“見える化収納”で出し入れスムーズ

ザルと同じく、自然素材のカゴもお気に入りで、じつは食器の水きりには、「水に強いと教わった」ワラビのカゴを愛用。シンクの上の棚に吊るしておき、必要なときだけ下ろして使うため、広々とした調理空間も確保できています。

もちろん、カゴは収納にも大活躍。シンク右手のオープンラックには、茶碗やグラス、カトラリーなど、毎日使うものを入れた大小さまざまなカゴが。ふたりの子どもたちも、カゴごと食卓に運んだり、戻したり。これならお手伝いも任せられそうです。

毎日のことだからこそ、気軽でわかりやすい収納を

それぞれに、理に適った収納法を取り入れている美濃羽さん。その使い勝手のよさは、見えるところだけではありません。収納棚の中も冷蔵庫の中も、なにがどこにあるのかがひと目でわかり、取り出しやすいように整えられています。しかも、どの整頓術も、すぐにまねしたくなるような、手軽なアイテムを活用したものばかり。

たとえば、冷蔵庫。半分だけ残ったタマネギやニンジンは、使いやすい大きさにカットして、透明の容器に入れています。

「中身が見えるので使い忘れもなくなりましたし、切っておくと、ぱっと使えて便利です」

品名や日付が必要なら、気軽に使えるふせんやマスキングテープを活用。袋類の収納にはブックエンドを使い、「下のほうが隠れてしまうことがないように」立てた状態で並べています。

細やかな収納術を実践している美濃羽さんですが、意外にも、「もともと片づけは苦手なタイプ」。

「苦手なところを直そう、がんばろう、という方向ではなく、“見えていないと忘れちゃう”とか、“ラベリングにこだわると続かない”とか、“自分のアカンところ”を受け入れたら、前向きになれました。それからですね、工夫するのが楽しくなっていったのは」