集合体恐怖症(トライポフォビア)はハチの巣やハスの実の穴(花托)など、小さな穴や粒が大量に集まっている様子に対する恐怖症のことです。新たな研究では、集合体恐怖症はインターネットやSNSなどによって増幅されている可能性があると判明しました。

The social learning account of trypophobia - Geoff G. Cole, Abbie C. Millett, Marie Juanchich, 2024

https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/17470218241232665



Internet Could Be Worsening Our Fear of Small Holes, Psychologists Say : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/internet-could-be-worsening-our-fear-of-small-holes-psychologists-say

集合体恐怖症が初めて科学文献に登場したのは2013年のことであり、記事作成時点では医学的に正式な恐怖症としては認められていません。2013年の論文では、約15%の人々が集合体恐怖症であると報告されていましたが、中国の若者を対象とした2023年の大規模な研究では、17.6%の人々が集合体恐怖症であることがわかりました。

集合体恐怖症については、インターネットの掲示板やSNSでたびたび話題となっているため、インターネットで初めて存在を知ったという人もいるはず。人間の肌などにハスの花托をコラージュした「蓮コラ」の画像はミーム化しており、時には嫌がらせに使われることもあります。

以下の画像をクリックするとモザイクが外れ、集合体恐怖症の人に嫌悪感を抱かせるとされるハスの花托が見えます。蓮コラではもっと極端に大量の穴が空いていたり、気味の悪い色の粒がずらっと並んでいたりします。



新たにイギリス・エセックス大学の心理学者であるジェフ・コール氏らの研究チームは、19〜22歳の被験者289人を対象に調査を行いました。調査では、まず被験者が集合体恐怖症であるかどうかを調べる実験を行った上で、集合体恐怖症について聞いたことがあるか、聞いたことがある場合はどこで聞いたのかを答えてもらいました。

実験の結果、集合体恐怖症を持っている被験者の約4分の1は、これまで集合体恐怖症について聞いたことがないと回答しました。これは、一部の人々は本当に生まれつき集合体恐怖症を持っていることを示唆しています。

しかし、過去に集合体恐怖症について聞いたことがある場合、集合体恐怖症である可能性が有意に高いことも判明しました。集合体恐怖症について知っていた人のうち64%は、インターネットやSNS経由で知ったとのこと。研究チームは「集合体恐怖症がインターネット上に広く存在することが、この現象の社会的学習の側面に寄与している可能性を示唆しています」と述べました。



恐怖症を社会的に学習すること自体は驚くべきことではなく、ヘビやクモといったその他の恐怖症も、「世間がヘビを怖がっているから」「家族がクモを見た時に怖がっていたから」といった理由で発症するのはよくあることです。しかし、集合体恐怖症はインターネット上でミームとなっているため、インターネットの影響を受けた人がかなり多い可能性があります。

集合体恐怖症を持つ人が実際に小さな穴や粒の集合に脅かされた可能性は低いですが、研究チームは集合体恐怖症が寄生虫のまん延や感染症、腐敗といった人間の健康を脅かす可能性があるものに似ているため、進化的に恐怖や嫌悪感を抱くようになったかもしれないと考えています。

研究チームは、「集合体恐怖症についてのインターネットを介した別の説明としては、以前はその症状を自覚していなかった人が、自分が穴に対して敏感であることに気づき、インターネットを通じて情報を求めるというものです。インターネットはその人が以前疑っていたことを裏付けます」と述べました。

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