最近、完全ワイヤレスイヤフォン(TWS)の上位モデルが高価格になっており、4万円、5万円は当たり前という世界になった。しかし、あまり高価だと落として無くすのが怖かったり、バッテリーの消耗なども気になってしまうもの。

そうなると気になってくるのが、数千円で購入できる安価な完全ワイヤレスイヤフォン。ネットにも様々な製品は存在するが、最近はダイソー、3COINS、ドンキホーテ、ゲオなどの店頭で、各社ブランドのイヤフォンを目にする機会も増えてきた。「このお店でイヤフォン売ってるんだ!」と驚いた人も多いだろう。

そこで、ダイソー、3COINS、ドン・キホーテ、ゲオで売っている完全ワイヤレスイヤフォンを買ってみた。各機種の情報は以下の通り。ゲオのモデルは最上位が6,000円を超えていたので、アクティブノイズキャンセル(ANC)搭載で5,000円以下に収まるモデルを選んだ。

ダイソー「TWS001」 1,100円 3COINS「2413-KRU04-0000」 1,650円 ドン・キホーテ「JN-DQTWSS-BL」 3,278円 ゲオ「GRFD-TWS TH03」 4,378円

ダイソー

有線イヤフォンと違って、アンテナやらバッテリーやらをその筐体に詰め込んでいて、さらに左右でも通信を安定させる必要があるTWSが1,100円で購入できる。その時点でもうすごい気がするダイソーのTWS。

今では当たり前な「ケースを開けたら自動でペアリング済みの機器と接続する」こともしっかりできる。マイクも一応搭載していて通話可能で、音声アシスタントの呼び出しもできる。正直、この価格だったら音楽を再生できるだけでも十分なのでは? と思ったのだが、TWSに求められていることは、機能的な部分の方なのかもしれない。

気になるポイントは、イヤーピースが装着されている1サイズのみ、充電端子はUSB-microBと、諦めているポイントはしっかりと諦めていること。しかし、音質は音量を上げすぎなければ(iPhoneの音量バーの半分を超えなければ)、低域強めでボーカルもしっかりと届く音にまとまっている。控えめな音量で聴く分には全然問題なさそうだ。

ちなみに音量を上げすぎると高域側が割れていくので、音量が上がりがちな周囲が騒がしい場所や、そもそも大音量で聴く人は避けた方が良いと思う。

3COINS

続いて、3COINSのTWSなのだが、このTWSが一番予想外だった。その理由は後ほど。

1,650円とダイソーとの差は550円。イヤーピースは装着済みのもののほかに1つ付いてくる。Bluetoothのバージョンは5.3でAACにも対応する。一方で連続再生時間は4時間、ケース込みでも10時間と少し短めだが、筐体とケースが共にかなり小さいので、上手い具合にコストカットとデザイン面がかみ合っているように思う。

そして、予想外だったポイントが音質。ドンシャリ傾向ではあるのだが、低域の量感と解像感をしっかりと両立しており、ちゃんとベースの弦が震えている様子が見える音をしている。女性ボーカルは鮮明で、声の低い男性ボーカルも低域に埋もれることなく耳に届く。「ガジェット感がなくて良いな」と思ってチョイスしたTWSからかなり本気度を感じる音が再生されて正直意外だった。

ちなみに外箱は3COINSを運営するパルが販売者となっているが、本体の充電ケースには委託先だと思われるコーリュウという社名が入っていた。

ドン・キホーテ

3つ目はドンキホーテが企画/開発する情熱価格ブランドから出ているTWS。外箱には「元オーディオメーカーイヤホン担当者がメーカーと何度もやり取りしてワンランク上のサウンドを実現!」と書かれており、気合いの入れようを感じさせる。箱の横側を観ると製造を担当したのはグリーンハウスのようだ。

低遅延モードも備えているので、試しに音ゲーで筆者がギリギリクリアできる難易度の曲を試してみたら、違和感なくプレイできた。動画を観るときにずれを感じることはまずなさそうだ。

こだわりの音質は、低域の量感がしっかりと出ていて、ボーカルはウォームな印象、長時間ゆったりと聴くのに向いているように感じられた。装着感も軽めで聴き疲れしない音なので、作業のお供や、動画/配信を視聴するのにちょうど良さそうだ。

音像が少し離れた位置にあって、BGM的に音楽を楽しむことを想定した音作りのように感じるのだが、この傾向、筆者としてはAirPods Proが意識されているのでは? と思う。そう考えるとANCはついていないが、3,278円なので価格は10分の1以下だ。

ゲオ

今回のラインナップでは値段が一番高い4,378円だが、唯一ANCと外音取り込みに対応。同機能を備えていることを基準とすれば、5,000円を切っているこの金額は十分低価格帯だ。低遅延で通信するゲーミングモードも備えている。

ANCは簡単に説明すると、イヤフォンに搭載されたANC用のマイクで外音を認識し、逆相の音を耳の方へ再生することで、耳に届く雑音を打ち消す機能で、その技術も発展を続けて、最近の高価格帯のTWSに搭載されているものは、同じ空間に居るとは思えないほど周囲の音が消えてしまうものがほとんど。

だが、この機能も10年前などは「おそらくこれが逆位相の音なんだろうな」という音が聴こえたり、周囲の音は小さくなっているけど、別のノイズが聴こえるといったことも少なくなかった。

ゲオのTWSはそこまで酷くはないが、この一昔前のANC特有のノイズが若干聴こえる。とはいえ、カナル型のイヤフォンの元々の遮音性の高さも手伝い、十分静かにはなっていると感じる。さすがに地下鉄の走行音など、騒音が激しい環境ではもう少しANCの強さが欲しいところだ。

音質はけっこう強めのドンシャリで、低域の量感はしっかりと出ているが、中低域が弱めで高域側が少し高めに上がっているのか、女性ボーカルやシンバルの音がシャリシャリとしている。

ゲーミングモードは、ドンキのTWS同様、音ゲーが違和感なくプレイできる程度なので、動画視聴ではまず問題ないだろう。ちなみに、ケースから取り出して接続までが最速だったのがこのゲオのTWSだ。毎回ANCオフの状態になっているのは若干気になるところではあるが。

安いTWSでも“ちゃんとしてる”。用途に寄っては選択肢に

安いイヤフォンで思い浮かぶのが、中高生の頃に使っていた3,000円で買える有線イヤフォン。バイトも禁止されていた当時、月のお小遣いで買える中でとりあえずちゃんとしているのがこのランクという印象があった。

そして、今主流となっているTWSでこの“3,000円有線イヤフォン”と同ランクくらいのものを買おうとすると、8,000円~1万円程度になっていると思う。ある程度の音質や強度を備えつつ、有線イヤフォンよりも使っているパーツが多いTWSでは、この価格になってしまうのはしょうがないことだ。

それを考えると、今回の中でもとくにダイソーと3COINSは“百均有線イヤフォン”の立ち位置くらいの価格なのだが、“安かろう悪かろう”という印象は無く、しっかりとこの価格帯でのTWSを実現しているように感じた。

とくに、1,650円とは思えないくらい音がしっかりと調整されている3COINSのTWSと、昔の3,000円有線イヤフォンを思わせるクオリティを3,000円台で実現しているドンキのTWSは予想を大きく上回った。「完全ワイヤレスを試してみたい」「無くしてしまってもダメージが少ないイヤフォンがほしい」「とにかく安いのが欲しい」といった際には十分選択肢に入れて良さそうだ。