刺激すると臭いを放ち、苦手な人も多いはず。紹介した対策で自宅に近づけないように(写真:共同通信)

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今年は春先から例年にないカメムシの大量発生が報告されている。 昨年秋に異常発生が報告されたが、今年もすでに全国各所で発生しているようだ。

「昨年の秋に大量に発生し、大阪の中心地、梅田の街中でも見られたのはツヤアオカメムシという緑色のカメムシでした。

そのなかから越冬できたカメムシが、暖かくなって活動し始めている状態です」

こう話すのは、長年カメムシを研究している、伊丹市昆虫館学芸員の長島聖大さんだ。

「カメムシは集団を作って越冬するため、生存数に地域差があります。今、街中に出現しているカメムシは今後、山へ行って産卵してから死にますから、やがて数は落ち着くと思います。

今夏〜秋に卵が孵化して成虫になるには、気温、降水量、餌の量などさまざまな条件が複雑に絡み合うため、容易に予測はできませんが、母虫の数が多いことから、多くの卵を産むことは予想できます」

カメムシは果樹や稲など農作物につく害虫でもあるため、各都道府県の病害虫防除所から注意報が発表される。農林水産省によると、愛媛、香川、山口、京都、和歌山など、すでに15府県(5月9日時点)で注意報が発表されている。

なかでも例年の何十倍ものカメムシ発生を報告しているのが兵庫県だ。兵庫県病害虫防除所主任研究員の柳澤由加里さんに話を聞いた。

「果樹カメムシは、桃、梨、かんきつなどの果実を加害して、果実の商品価値をなくしてしまうことから、果樹カメムシの発生動向を知るためにフェロモントラップを用いて、そこにかかった虫の数を調査しています。例年は5月中旬から7月下旬に発生するのですが、今年は例年より早い4月中旬から発生が確認され始めました」

■今年4月下旬の夏日のような暑い日を境に報告が増えて

果樹カメムシには30を超える種が報告されているが、防除対策を必要とするのは主にチャバネアオカメムシ、ツヤアオカメムシ、クサギアオカメムシだ。

「今年は4月下旬に夏日のような暑い日がありました。その辺りを境に果樹カメムシの目撃報告が増えているようです」(柳澤さん)

兵庫県南あわじ市に設置されたフェロモントラップに捕獲されたチャバネアオカメムシの数はグラフのとおり。例年は0〜1頭なのに、今年は4月の後半から急増しているのがわかる。

さらに今年はチャバネアオカメムシだけでなく、ツヤアオカメムシまで混在していたのだそう。 「ツヤアオカメムシは、4月末時点での捕獲数は前回の多発年でも1頭のところ、今年は79頭も捕獲されています。これも珍しいことです」(柳澤さん)

こうした農地や山間地から飛来してくるのが、街中で見るカメムシというわけだ。 前出の長島さんにカメムシ対策について聞いた。

「カメムシは紫外線を好み、夜になると紫外線を放つ蛍光灯の光を求めて活発に活動します。ですから、明かりは紫外線を発する蛍光灯を避けてLEDライトにする、電気をつけた状態で窓を開けっぱなしにしない、紫外線カット効果のあるカーテンを使用するなど、紫外線を出さない工夫をすることで、室内に入ってくるのを防ぐことができます」

マンションなどの集合住宅では、廊下の電灯をLEDにしたり、照明の数を減らすなど、明るさを落とすことで、建物にカメムシが寄り付きにくくなるという。

■トウガラシを入れたネットを排水口付近に置いても

カメムシ対策に10年以上苦労してきたという節約ブロガーの安藤未紗さんは、トウガラシスプレーが効果的だったという。

「近所の線路沿いにカメムシが大量発生する場所があり、一年の半分以上はいつもカメムシに悩まされていました。ベランダや共用階段にびっしりとカメムシが集まっていたのです。

でも、小さな子供がいるため、できるだけ殺虫剤は使いたくないと思っていろいろ調べていたところ、カメムシがトウガラシに含まれるカプサイシンのにおいを嫌うことがわかり、トウガラシスプレーを作ってみました」

トウガラシスプレーは、市販のトウガラシ約15g(10〜20本)を輪切りにして200mlのエタノールに漬け込み、それを約30倍の水で薄めてスプレーボトルに入れて使う。安藤さんは頻繁にベランダの手すり、壁、床、網戸、物干しざおなどに加え、共用階段などにもスプレーしていたのだそう。

「ベランダでは洗濯物を干す前に、周辺全体にかけますが、洗濯物には直接かけません。また、トウガラシを何個か入れたネットを排水口付近に置いたりもしました。トウガラシスプレーを使うようになってから、ベランダに来るカメムシの数が激減したと感じています」(安藤さん)

また、明るい場所を好むカメムシは白色の洗濯物につきやすいと知って以来、白色の洗濯物は外に干さないようにしているのだとか。

前出の長島さんは、室内に入ってしまったカメムシは、底を切ったペットボトルの中に誘導し、外に放つことを提案している。

「カメムシは刺激さえしなければ、臭いを放ちませんから、落ち着いて容器に入れてその容器ごと外に出しておけば、触れることなく放すことができます」

カメムシを寄せ付けないための対策、参考にしてみてほしい。