「毎月の家賃が〇万円だから、住宅ローン返済も毎月〇万円なら無理がない」と考えている人は多いのではないでしょうか。しかし、マイホーム購入後にかかる費用は、住宅ローンの返済金だけではないので「無理がない」とは限りません。固定資産税、火災保険料、修繕費…合計年間数十万円かかる場合もあります。「購入後の費用」を考慮しておかないと、マイホームに住み始めてから予期していなかった家計負担に慌てることになるでしょう。今回は、戸建てのマイホーム購入後にかかる費用について、確認しておきましょう。

戸建て住宅の購入後にかかる「税金」「保険料」「修繕費」

マイホーム購入後、保有中にかかる費用は、住宅ローン返済額のほか大きくわけて3つあります。

一つ目は「税金」です。土地や家屋を保有している人は、固定資産税・都市計画税を支払うことになります。

二つ目は「保険料」です。ほとんどの場合、万一の火災や自然災害への備えとして火災保険に加入するでしょう。地震に備える地震保険には、2022年には35%の世帯が加入しています。

参考:グラフで見る!地震保険統計速報 損害保険料率算出機構 

三つ目は、「修理・修繕費」や「リフォーム費用」などが挙げられます。戸建ての場合は、マンションのように「修繕積立金」を毎月徴収されるわけではないため、購入してしばらくは意識することがない費用かもしれません。しかし、新築で購入した家もいつかは傷んだり、ライフスタイルが変わって不便になったりするものです。いつか必要になる修繕やリフォームに備えた資金計画を考えておく必要があります。

これらの費用について、具体的にみていきましょう。

土地や家屋の保有者が支払う「固定資産税」「都市計画税」

固定資産税は、毎年1月1日時点で土地や家屋を保有している人に、市町村から課税される税金です。固定資産税は、3年ごとに見直される「固定資産税評価額」に対して、税率(1.4%)を掛けて計算されます。税率は標準税率である「1.4%」が一般的ですが、市町村は必要に応じて異なる税率を条例で定めることができます。

固定資産税:固定資産税評価額×1.4%(標準税率)

また、市街化地域に家屋や土地がある場合には、都市計画税も課税され、固定資産税と一緒に納付することになります。都市計画税は、固定資産税評価額に税率を掛けて計算されます。都市計画税の税率は自治体により個別に定められるとされていますが、「0.3%」を超えてはならない、となっています。

都市計画税:固定資産税評価額×0.3%(制限税率)

しかし、マイホームの場合、家屋・土地それぞれに軽減特例があり、適用条件を満たしていれば各税額は低く抑えられます。

家屋の固定資産税・都市計画税

固定資産税には、新築後の一定期間、床面積120平方メートルまでの固定資産税額が2分の1に軽減される特例があります。戸建ての場合は、新築後3年間(長期優良住宅の場合は5年間)、固定資産税額が2分の1になります(適用期限:2026年3月31日)。

仮に、住宅(100平方メートル)の固定資産税評価額が1,000万円だった場合、新築後3年間の固定資産税額は

1,000万円×1.4%×1/2=7万円 

になります。

4年目以降、固定資産税評価額が変わらなかった場合の固定資産税額は

1, 000万円×1.4%=14万円

になります。

実際には、年を経るほど住宅の評価額は下がっていくので、固定資産税額は下がっていきます。

家屋に課される都市計画税には軽減特例はないので、上記の例で税率が0.3%の場合には、

1,000万円×0.3%=3万円

が都市計画税となります。

土地の固定資産税・都市計画税

土地の固定資産税評価額は、公示価格の70%程度とされていて、3年に1回見直されます。住宅用地の場合は、固定資産税・都市計画税ともに、図表1のような軽減特例があります。

したがって、仮に、住宅用地で土地面積が200平方メートル以下で固定資産税評価額が1,500万円の場合には、

固定資産税:1,500万円×1/6×1.4%=3.5万円
都市計画税:1,500万円×1/3×0.3%=1.5万円

となります。

上記の例では、新築後3年以内の固定資産税・都市計画税の合計額は

家屋:7万円+3万円=10万円
土地:3.5万円+1.5万年=5万円 合計15万円 

となります。

火災以外も補償される「火災保険」。地震による火災は「地震保険」で

住宅ローンを利用する場合には火災保険への加入が求められるため、多くの住宅購入者は火災保険料を負担することになります。火災保険や地震保険は、建物だけでなく家財にもつけることができます。今回は「マイホームにかかる費用」ということで、建物に対する保険の保険料について確認してみましょう。

火災保険は、火災だけでなく、台風や大雨、落雷などの自然災害や盗難なども補償対象とします。補償の組み合わせによって、また、建物の構造や築年数によっても保険料は異なります。契約期間5年の1年あたりの保険料は、5万円前後くらいになるようです。

注意したいのは、火災保険では、地震、噴火、津波による損害や、それを原因とする火災は補償されないこと。したがって、地震等による補償は地震保険でカバーしなければなりません。。地震保険は単独では加入できず、火災保険とセットで加入することになります。火災保険と地震保険に加入した場合の保険料は、1年あたり10万円前後になるようです。

損害保険会社のホームページには保険費用の簡易試算コーナーが設けられている場合もあるので、利用して金額の目安を付けてみるのもよいでしょう。

リフォーム費用は200万円以上

家を新築した場合や新築住宅を購入した場合には、すぐに大きな修繕費用やリフォーム費用がかかるケースは少ないと考えられます。しかし年数が経つにつれ、家の内外には傷みがでてきますし、キッチン・バス・トイレなどの水回りの機器に故障が生じることもあります。住む人も年を取って生活スタイルが変わり、住みやすく使いやすくするリフォームを考えることもあるかもしれません。

国土交通省のリフォーム実施者への調査では、リフォームの動機で最も多いのが「住宅のいたみや汚れ」となっています(図表2)。

図表2 リフォームの動機

国土交通省 住宅市場動向調査(リフォーム実施者の複数回答)
国土交通省 令和5年度 住宅経済関連データ より

修繕やリフォームのタイミングは、目安としては、水回り設備の交換時期は10年~20年、屋根や外壁などは20年になるようです。「傷みが出てから修繕すれば」と考える方もおられるかもしれませんが、水漏れなどがあると建物の劣化が進んでしまいます。3~5年単位で点検し、傷んだ個所を早めに少しずつ補修していったほうが、結果的にかかる費用を抑えることになるようです。

令和4年度の国土交通省の「住宅市場動向調査」によると、リフォーム資金は平均206万円となっています。「思ったより少ない?」と思われたかもしれませんが、どこをリフォームするのか、どんなリフォームをするのか、どこに頼むのか…等で、かかる費用には大きな幅があります。

たとえば、キッチンのリフォームはどんな機器を選ぶのかによって差が大きくなるところ。複数の住宅機器メーカーのサイトをみると、数十万円~数百万円まで、大きな幅がありました。外壁の塗り替えや屋根の改修・葺き替えなども、工事内容によって70万円~150万円程度の幅があるようです。複数個所を同時に工事したとすると、かかる費用は数百万円以上。工事内容によっては、工事期間中の仮住まいの費用などもかかることになります。

将来、どんな修繕・リフォームをすることになるかはわかりませんが、リフォーム費用として、少なくとも200万円以上の支出は、考えておいた方がよいでしょう。

住宅ローン以外の「住居費」は年間20万円以上

このように、住宅購入後は、住宅ローン返済額のほかに、固定資産税・都市計画税、火災保険料や地震保険料、修繕・リフォーム費用などがかかってきます。

仮に、固定資産税・都市計画税の合計が15万円、火災保険料と地震保険料の合計が10万円とすると、年間費用は25万円となります。月額2万円程度は、住宅ローン返済以外に「住居費」がかかると考えておいたほうがよいでしょう。
また、将来のリフォーム費用を400万円と設定して、20年間かけて準備していくとすると、1年分は20万円となります。税金と保険料に加え、リフォーム準備費用の合計は45万円になりますね。

実際には、家の種類や、保険やリフォームでどんなプランを選ぶかでかかる費用は違ってきます。とはいえ購入の際には、住宅ローン返済のほかに年間数十万円の費用がかかることはしっかり「覚悟」しておきましょう。

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