潮干狩りで賑わう横浜市の海の公園

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 ゴールデンウイークの連休期間に入り、開放的な海辺でのレジャーを楽しむ人も増えてきた。海水浴にはまだ早いが、磯遊びや潮干狩り釣りなどのほか、浜辺でバーベキューを楽しむ機会も増えそうだが、海の生物を捕ることにルールがあるのをご存じだろうか。対象によっては捕ること自体が禁じられていたり、捕り方に条件が定められたりするケースもある。しかも、ルールを破ると、思いのほか重い罰則が科されることもあるのでご注意を――。【川本大吾/時事通信社水産部長】

【写真】レジャー感覚で捕ると“密猟”になる危険性も! 行楽中に気をつけるべき魚介類とは?

海の魚介類は誰のモノ?

「養殖魚ならともかく、海の天然魚介類はすべて漁業者のモノなの?」といった疑問を抱く人もいるであろう。海やそこに生息する魚や貝は「誰のモノでもなく、みんなのモノ」と考える向きがある。しかし、実際にはそうではない。なぜか。

潮干狩りで賑わう横浜市の海の公園

 全国津々浦々、多くの沿岸では漁業者が漁業権を得て生産活動を行っており、国はその権利を侵して一般の人が魚介類を捕ることを制限している。「海の魚介類は誰のモノでもなく、みんなのモノ」と言いたいところだが、漁業者の権利を無視して捕ることはできないのだ。

 漁業法など、関係法令に違反して魚介類や海藻類などを捕る行為を「密漁」と呼ぶ。ここ最近も、アワビやナマコ、シラスウナギなどを暗闇で捕り集め、逮捕されるニュースが各地で伝えられる。こうした組織的な密漁は、巧妙・悪質化する傾向があるが、密漁は決して組織的、計画的なものばかりではない。

アワビの密漁は最大で「罰金3000万円」!

 密漁を減らすため、国は漁業法を改正。2020年12月に施行された改正漁業法では、「特定水産動植物の採捕」に関する規定が新設された。原則として、アワビやナマコを捕ることを禁止し、2023年12月からはシラスウナギ(13センチ以下)を追加。それぞれ「採捕した数量や場所に関わらず、個人的な消費を目的としたものであっても採捕は禁止」とし、違反者には3年以下の懲役または3000万円以下の罰金を科すことにした。

 さらに、漁業権の対象となるサザエ、イセエビなどを一般の人が捕ることについては、「漁業権または組合員行使権の侵害」として罰金が従来の20万円以下から100万円以下に引き上げられた。

 しかし、罰則が強化されても密漁は多発している。水産庁によると、全国の密漁による検挙数は20年ほど前から増加傾向を示している。河川などを除く海の密漁に関する2022年の検挙数は、全国で約1527件(速報値)。このうち漁業者以外、つまり一般の検挙数が9割近くを占めている。かつての密漁はルールを知り尽くした確信犯・漁業者の仕業だったが、今では状況は一変、非漁業者の密漁が頻発しているのだ。

 もちろん検挙数は、氷山の一角であり、実際の密漁はその何倍にも及ぶとの見方もある。ただ、同庁は「資源管理のルール順守が浸透してきた漁業者とは違って、一般の人の密漁により水産資源に悪影響を及ぼしている」とみており、自治体と連携しながら密漁防止を訴えている。

レジャー感覚でも犯罪の可能性

 組織的・計画的な密漁は言語道断だが、磯遊びなどで「少しくらい……」「見付からなければ」といった軽はずみな違反行為も見逃せない。前述の通り、アワビ、ナマコ、シラスウナギの採捕は全面禁止、つまり「一発アウト」。無人島であろうとなかろうと「捕ったどー!」では済まされないのだ。

 このほか、サザエやイセエビなどを捕ることも禁止されており、都道府県ごとの漁業調整規則を知っておく必要がある。海辺には、そうした密漁行為の抑止策として「密漁は犯罪です!!」などと表記した看板などが設置されており、注意が必要だ。

 手軽なレジャーである潮干狩りでも、「禁止されている漁具を使ってアサリやハマグリなどを大量に捕る例が散見される」(潮干狩り場の管理組織)という。地域ごとのルールで例えば、潮干狩りでは熊手はOKだが、大がかりな鋤簾(じょれん)や、熊手の爪の間に網が付いた「忍者熊手」はNG、といったルールが設けられていることもあり、違反者には罰則が科されることも。

 このほか、本マグロについては今、釣りが全面禁止されている。30キロ未満の小型は以前から禁止されているが、今年4月6日から5月31日まで、30キロ以上の大型も、釣るのはご法度だ。遊漁採捕量が規制の上限に迫ったためで、こちらも無視して釣り上げれば罰則が適用されるため、十分ご注意を!

川本大吾(かわもと・だいご)
時事通信社水産部長。1967年、東京生まれ。専修大学を卒業後、91年に時事通信社に入社。長年にわたって、水産部で旧築地市場、豊洲市場の取引を取材し続けている。著書に『ルポ ザ・築地』(時事通信社)など。最新刊に『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』(文春新書)。

デイリー新潮編集部