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日本弁護士連合会の渕上玲子会長が4月22日、東京都の日本記者クラブで「女性法曹について」と題して会見した。日弁連の女性会長は1949年の発足以来初めてで、法曹3者のトップとしても初。2月の当選時から注目を集めていた。

現在、弁護士45809人のうち女性は9200人と、2024年度に初めて20%を超えた。しかし、司法修習生の進路として裁判官や検察官といった公務員、組織内弁護士に後れを取っている。「フリーランスとしての働き方の法整備や、産休・育休の制度を整えていくよう法律事務所にも啓蒙していく」と話した。

NHK連続テレビ小説「虎に翼」にも言及。モデルとなった女性初の裁判官・三淵嘉子さんは、1980年の司法試験合格後に日本婦人法律家協会(現日本女性法律家協会)会長だったと説明した。接触はなかったものの、伝記などを読み「ドラマも一生懸命見ております。私たちのころより、もっと逆風の中で目指した人は素晴らしいと再認識している」と語った。

●法律事務所も、女性弁護士の働き方を考えるべき

渕上氏が弁護士登録した1983年は、男女雇用機会均等法の施行前で、修習同期(35期)の女性弁護士は358人中34人(日弁連データによる)。法律事務所の就職にも苦戦したという。「うちの事務所は女性は採用しない」と言ってはばからないところもあった。

しかし、戦前の女性弁護士を知るにつれ、もっとマイナスな状況から弁護士を目指していたんだと痛感したといい、女性修習生の任官について差別しないように要望書を出したという経過についても「先輩の労苦に感謝する」と述べた。

2000年代以降は司法制度改革で法曹の数が増えるにつれ、女性弁護士の比率も少しずつ上がって来ている。しかし、課題も多い。修習後の進路で、2023年は検察官が49.3%、裁判官が38.2%に比べ、弁護士は26.4%。さらに、組織内弁護士の女性の割合は4割を超えており、ワークライフバランス重視の傾向が顕著だ。

渕上氏は「主要ポストにつく裁判官や検察官が増えており、女性弁護士の割合上昇も不可欠」とし、健全な社会の維持・発展、ジェンダーバイアス解消のために女性弁護士の確保は重要な課題だとした。

また、共同親権など家族法制の変更や家事事件の増加で、家裁の重要性が増していることを挙げ、「法曹界の意識を変革するだけでなく、社会全体の男女参画を進め、多様性を認めることが日弁連の目標のひとつ」だと説明する。

夜間などに開催される弁護士会の会務に参加しにくいという声もあることも課題に挙げた。「会務への女性弁護士の参加を推進しなければ、委員会の意見が多様なものにならない」として、運営方法や負担の軽減など改善の必要性に言及した。

【プロフィール】 1977年、一橋大学法学部を卒業。1980年に司法試験2次試験に合格、1983年に弁護士登録した。1996年に日比谷見附法律事務所を開設。2017年度に日弁連副会長、東京弁護士会会長、2020〜2021年度に日弁連事務総長を務めた。