高木豊のセ・リーグ順位予想

 セ・リーグは3カード連続で勝ち越したDeNA、3試合連続の完封勝利を挙げた中日が上位に。昨年の覇者である阪神も、攻守に"らしさ"が出始めているが、これからリーグはどのように動いていくのか。

 かつて大洋(現DeNA)の主力選手として活躍し、現在は野球解説者YouTuberとしても活動する高木豊氏に、セ・リーグの順位予想と展望を聞いた。


開幕から中日の4番として活躍する中田翔 photo by Sankei Visual

【1位予想:阪神】

――今季も阪神が1位と予想されましたが、その理由は?

高木豊(以下:高木) 今季は出だしこそ悪かったですが、チーム力はあります。やはり投手力が高く、リズムをつかめばそれなりに勝っていくはずです。新外国人投手の(ハビー・)ゲラもいい働きを見せていますね。

 村上頌樹はオープン戦の時からよくなくて、シーズン初登板のDeNA戦でも打ち込まれるなど心配していましたが、(4月9日)の広島戦では復調していましたし、岡田彰布監督もひと安心でしょう。それと、二軍で好投している門別啓人が出てくるんじゃないか、という期待感もあります。

――野手陣はどう見ていますか?

高木 岡田監督は「現有戦力では連覇は難しい」とオフの時から常々言っていましたが、野口恭佑や井上広大ら期待していた若手は二軍にいて、一軍でプレーしているのは前川右京ぐらい。底上げができませんでしたね。ただ、逆に変わらなかったのがプラスに働くかもしれませんし、どちらに転ぶのかはわかりません。他チームの戦力を考えると、現有戦力でも十分に勝っていける気もしますね。

【2位予想:中日】

――2位予想の中日は、広島との3連戦で3試合連続完封勝利を挙げるなどピッチャー陣が奮闘しています。

高木 投手力は先発陣もリリーフ陣も阪神に引けを取りません。柳裕也や小笠原慎之介らはもちろん、今季は涌井秀章や大野雄大といったベテランも調子がよさそうで、昨季からの上積みが期待できます。

 なので、打線が少しでも打てば勝ちを拾っていけるんじゃないかと。田中幹也や村松開人が順調にきていますし、三好大倫はキャンプの時からいいです。高橋周平も今季は戦力になってくれそう。ただ、不安な点は守備ですね。記録に表われないエラーが目につきます。

――新加入の中田翔選手に期待するのは、やはり打点でしょうか。

高木 それに関しては中田の加入が大きいですし、昨季よりは点を取ってくれるはずです。ただ、新外国人の(アレックス・)ディカーソンが、オープン戦で日本のピッチャーに対応し始めていたので「わりと打つかな」と見ていたのですが、早々に離脱してしまったのは残念です(3月30日に腰痛で登録抹消)。昨季より野手陣の層は厚くなっているので、今のところはそれほど影響がなさそうですが、シーズンは長いですし、戻ってきた時に戦力になってもらわないと困りますね。

【3位予想:巨人】

――巨人は先発ローテーションの一角、フォスター・グリフィン投手が右腹直筋筋損傷で4月8日に登録抹消。もともと先発陣が課題だっただけに痛い離脱になりました。
高木 戸郷翔征、山粼伊織、今季は状態がいい菅野智之がいて、グリフィンもいれば......というところでしたが、痛いですよね。赤星優志あたりが出てきてくれないと。それでも、西舘勇陽、中川皓太、(アルベルト・)バルドナード、大勢と、勝ちパターンのリリーフ陣が形になりつつあり、僅差の試合を拾っていけると思います。そこが昨季とは違う点ですね。

――内野陣はファースト・岡本和真選手、セカンド・吉川尚輝選手、ショート・門脇誠選手、サード・坂本勇人選手で固定されています。

高木 固定したことによって守備力が安定し、打つほうにもいい影響があるでしょう。ただ、全体的に右バッターが不足しています。オコエ瑠偉や萩尾匡也あたりが台頭してくればいいのですが、頼れる右バッターが少ない。左ピッチャーのリリーバーが多い阪神の継投にやられてしまうんじゃないかと。

 阿部慎之助監督になって、1点を泥臭くもぎ取る緻密な野球にシフトしようとしているのは方向性として間違っていないのですが、選手のレベルが足りていないような気がするんです。今まではホームランを打って勝つ、大味な試合が多かったじゃないですか。そこから、オープン戦でホームランの数がすごく減っていて、それは得点圏で右打ちしたりといった野球を浸透させようとしていた結果だと思いますが、1年目からすんなりできるかは不透明です。

【4位予想:DeNA】

――DeNAは3カード連続で勝ち越すなどいいスタートをきりました。今永昇太投手とトレバー・バウアー投手が抜けた穴をいかに埋めるか、打線がどれだけカバーできるかが注目されています。

高木 打線はいいのですが、守りがよくないですね。先発ピッチャーは、東克樹が昨季のように勝ち星(16勝)を挙げるのは難しいんじゃないかと。また、茺口遥大は投げてみなければわかりませんし、大貫晋一も一時期のいい時よりはちょっと力が落ちているかな......。新外国人投手の(アンドレ・)ジャクソンはいいのですが、先発陣が不安です。

4月から5月下旬ぐらいまでは、日程的に先発ローテーションが5枚あればいいので、順位もいい位置をキープできると思います。でも、それ以降は日程がタイトになってくるので、先発ピッチャーの枚数が足りなくなるはず。その時が勝負どころになります。(タイラー・)オースティンが戻ったとはいえ、それを打線がカバーできるのか。もしできるのであれば、上位も狙えると思います。

【5位予想:ヤクルト】

――山田哲人選手、田口麗斗投手が開幕直後の3月30日に登録抹消。打率.360をマーク(4月8日時点)し、好調を維持する西川遥輝選手や、先発ですでに2勝を挙げたミゲル・ヤフーレ投手など新戦力は活躍しているものの、苦しいスタートを強いられています。

高木 山田が離脱しましたが、塩見泰隆、西川の1、2番コンビは走れるし、ホームランもあるから相手は嫌でしょう。4番に村上宗隆がいて、その脇を(ホセ・)オスナと(ドミンゴ・)サンタナが固める。打線の破壊力は他チームより上です。

 先発陣は心もとなく、ヤフーレは出てきましたが、小川泰弘が出遅れていますし、高橋奎二は状態がいいとも言われていますが、制球の悪さは急には解消できないと思うんです。「10勝しても10敗するタイプのピッチャーかな」とも思うので苦しいかなと。リリーフ陣も田口が不在でガタガタしていますし、田口が戻ってきてもどこまでやれるのか不安です。

【6位予想:広島】

――広島は新外国人のマット・レイノルズ選手が左肩痛、ジェイク・シャイナー選手が右手指剥離骨折で3月31日に登録抹消。開幕直後にまさかの離脱となりました。

高木 ふたりともオープン戦で苦労していて、シーズンに入ってどうアジャストしていくか期待していただけに残念ですね。打線は4番に適した選手が不在ですし、エースの働きが期待されていた森下暢仁が右肘の張りで開幕ローテーションから外れ、投打の主軸がいないのが痛い。それと、安定していたセットアッパーの(ニック・)ターリーが抜けた穴も大きいです。

 結局、打線は鈴木誠也が抜けた穴をずっと埋められていない。小園海斗はすごく成長していますし、田村俊介も今年1年我慢して起用すれば成長するはずが......。それと、新井貴浩監督は「"つなぎの4番"でもいいんだ」という考えがあって、僕はその柔軟さが好きなのですが、点を取るとなると厳しい。広島というチームは独特な雰囲気があってチーム一丸で戦えるのですが、戦力的には苦しいですね。

(篠塚和典、真中満、井口資仁の順位予想など、今季のプロ野球ニュース>>)

【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)

1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。