ツインのクランクマス可変にチャレンジしたGR650!【このバイクに注目】(このバイクに注目)
1976年にGS750で4スト化の最後発だったスズキは、GS1000を経て1980年には4バルブTSCC燃焼室のGSXシリーズへと急ピッチで進化、そこからKATANAや2スト250Γに油冷のGSX-R系列まで、全方位といえる様々なカテゴリーへ新たなチャレンジを繰り返し積み上げていた。
そんな中、1983年にリリースされたGR650は、約3,000rpmを境に低回転域だと大きなフライホイールマスでトルキーに、そこを超えるとフライホイールマスが小さくなり、トルク変動の少ない滑らかな高回転域となる、いわば2気筒と4気筒の、ふたつの顔を持つエンジンにチャレンジしたバイクだった。
このメカニズムは、サブフライホイールが2,500rpm以下ではスプリングでクランクシャフトと密着、いわゆる2気筒らしい低速トルクと回転すると変動するトルクの山も感じられるエンジン特性となる。
それが3,000rpmを超えると遠心クラッチが離れ、サブフライホイールがフリーとなりエンジン回転と関係なくなるのだ。
2気筒のトルキーなエンジンは、中速域以上の高回転域で、大きなフライホイールマスのためピーク域で鋭く吹け上がらず、スロットルに対しレスポンスが鈍くなる傾向にある。
それがこの3,000rpm以上だと、サブフライホイールを伴わない作動となるため、滑らかで俊敏な4気筒のような高回転域が得られるというワケだ。
因みに最高出力は53ps/7000rpmで、最大トルクは5.6kgm/6000rpm、車重は乾燥で178kgに収まる。
これは単にフライホイールを可変とするだけでなく、ジェネレーターなどをフライホイール効果を得るため重く大きくしていたことから、クランクの軸受けなど相応に強度を必要としていたのが、負荷がグンと減るため強度を落とすことができて軽量化にも繋がるメリットが大きい。
4気筒化を急ピッチで押し進めていたスズキだったが、その4気筒化のあとに中型以上はツインが台頭してくると睨んでいて、そこでの優位性を踏まえるとこうした可変フライホイール開発へと発想が展開されたという。
しかしこの可変フライホイールは、このGS650だけ1機種でしか展開されなかった。
他にも様々なファクターで、こうした特性は得られるのと優位な特性のどの組み合わせが良いかなど、実用化されてからの検証で先々が決まる。
そのためか、可変フライホイールはGR650以外に採用されずに終わっている。
しかし、やってみなければわからないと、当時のスズキはエンジニアの頭脳フル回転でチャレンジを繰り返していた。
そうしたメーカーの姿勢に、ライダーは惹かれるのであって、あまりにコンサバでは趣味としての楽しみも少なくなる。
ライダーは基本マイノリティ好きだ。それがスズキではマイノリティ追求を推奨しているようなもので、それだけに濃いファンが多いのも頷ける。