Appleがスマートフォン市場独占で司法省と16人の司法長官から提訴される、Appleは「危険な前例」と対抗姿勢
Appleがユーザーを囲い込むことでスマートフォン市場を独占し、消費者や開発者らが支払う対価をつり上げているのは違法だとして、アメリカ司法省と16の州および特別区の司法長官らがAppleを提訴しました。
Office of Public Affairs | Justice Department Sues Apple for Monopolizing Smartphone Markets | United States Department of Justice
Office of Public Affairs | Attorney General Merrick B. Garland Delivers Remarks on Lawsuit Against Apple for Monopolizing Smartphone Markets | United States Department of Justice
https://www.justice.gov/opa/speech/attorney-general-merrick-b-garland-delivers-remarks-lawsuit-against-apple-monopolizing
Apple accused of monopolizing smartphone markets in US antitrust lawsuit | Reuters
https://www.reuters.com/legal/us-takes-apple-antitrust-lawsuit-2024-03-21/
Apple Sued by U.S. Department of Justice, Says Lawsuit is 'Wrong' - MacRumors
https://www.macrumors.com/2024/03/21/apple-sued-by-us-department-of-justice/
アメリカ司法省と15の州、およびコロンビア特別区の司法長官は2024年3月21日に、市場独占を規制する法律であるシャーマン法を含むさまざまな反トラスト法に抵触した疑いで、Appleに対する民事独占禁止法訴訟を提起しました。
メリック・B・ガーランド司法長官は声明で、「アメリカの高性能スマートフォン市場におけるAppleのシェアは70%を超え、スマートフォン市場全体でも65%を上回っており、AppleはiPhoneに1600ドル(約24万円)近くも請求します。しかも、Appleはメリットで競争を制するのではなく、独占禁止法に違反することで独占力を維持してきました。企業が法律を犯したからといって、消費者が高いお金を払う必要はありません」と述べました。
ニュージャージー州連邦地方裁判所に提出された(PDFファイル)訴状によると、Appleは以下のような反競争的な商慣行で市場を独占してきたとのこと。
・革新的なスーパーアプリのブロック
スーパーアプリとは、幅広い機能をユーザーに提供する単一のアプリのこと。プラットフォームをまたいで使用できる便利なスーパーアプリがあれば、スマートフォンユーザーはiPhoneとAndroidスマートフォンを自由に乗り換えることができますが、Appleはそうしたアプリの登場を抑制してきたと当局は主張しています。
訴状ではスーパーアプリの具体例が示されていませんが、中国のスマートフォンユーザーが簡単にプラットフォームを切り替えられるのは、メッセージングから支払いまでさまざまな機能がひとまとめになったWeChatのおかげだという議論があります。
by John Pasden
・モバイル向けのクラウドストリーミングサービスの抑制
クラウドゲームを利用すれば、高性能なスマートフォンを買わなくても高い処理能力を要求するゲームアプリをプレイできますが、Appleはクラウドゲーミングアプリやサービスの開発を阻害することで開発者とユーザーの双方に損害を与えたとされています。
・クロスプラットフォームのメッセージアプリの除外
これは、iPhoneとAndroidスマートフォンの間でメッセージをやりとりすると不具合が生じることを問題視したもの。訴状には、象徴的な事例として、ユーザーから「Androidスマートフォンを使っている母親が私に動画を送れないのですが、メッセージ機能を改善する予定はありますか?」と聞かれたAppleのティム・クックCEOが「お母さんにiPhoneを買ってあげてください」と答えたというエピソードが記されています。
また、AppleはAndroidユーザーからのメッセージを不快に感じさせるデザインを意図的に採用しているとの指摘がなされたこともあります。
AppleはAndroidユーザーからのメッセージを「あえて」緑色にすることで不快感を与えるデザインを実践しているという指摘 - GIGAZINE
・Appleが作ったもの以外のスマートウォッチの機能低下
Appleが他社製スマートフォンと自社製品の連携を妨げているため、Apple Watchを購入したユーザーはiPhoneを買い続けなければならなくなっていると司法省は批判しています。
・サードパーティー製のデジタルウォレットの制限
これは、スマートフォンをかざすことで決済ができる、いわゆるタップ・トゥ・ペイ機能を念頭に置いたものです。Appleは銀行などのサードパーティーが提供する決済機能を制限することで、ユーザーがスマートフォンを乗り換えるハードルを高くしているとのこと。
ホワイトハウスのマイケル・キクカワ報道官補は「バイデン大統領は独占禁止法の公平かつ強力な執行を強く支持しています」と述べて、政権の強い賛意を表明しました。
一方、Appleはメディアへの声明で、「この訴訟が成功すればハードウェア、ソフトウェア、サービスの間を横断するような、人々がAppleに期待しているテクノロジーを創造する私たちの能力が妨げられ、政府が人々のテクノロジーの設計に大きな権限を振るう危険な前例となるでしょう。私たちは、この訴訟が事実の上でも法律の上でも間違っていると信じており、これに対して断固として抗弁します」と述べて反論しました。