パレスチナ自治区ガザ地区ガザ市内で行方不明になったヒンド・ラジャブちゃん。家族提供(撮影日・場所不明、2024年2月5日公開)。(c)AFP PHOTO / FAMILY HANDOUT

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【AFP=時事】パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)で、乗っていた車両が攻撃され、同乗していた親族を殺害された6歳の女児ヒンド・ラジャブ(Hind Rajab)ちゃん。親族の遺体と共に車内に閉じ込められた状態のまま、その後の行方が分からなくなっている。

「あの子は怖がっていたし、パニックにもなっていた。背中と手足を負傷していた」と、電話でヒンドちゃんの声を最後に聞いた一人、祖父のバハ・ハマダさん(58)は話す。

「迎えに来てと何度も言われた」と、泣きながら当時の通話を振り返った。

 ガザでのイスラエル軍とイスラム組織ハマス(Hamas)との武力衝突が始まってから、約4か月が経過した。

 北部ガザ市(Gaza City)はここ数週間、同自治区南部からは隔離された状態だ。国連(UN)は、北部に残っている多数の市民に支援物資を届けることが非常に厳しい状況になっていると抗議を繰り返している。

 攻撃された車両は1月下旬、ヒンドちゃんと4〜15歳の子どもたち5人と大人2人を乗せ、市内テルアルハワ(Tel al-Hawa)地域に迫るイスラエル軍から逃れようと移動中だった。大人の一人は、ハマダさんのきょうだいバシャールさんだった。

 しかし、車両はイスラエル軍の戦車と鉢合わせとなり攻撃を受けた。

 その後、同乗していたバシャールさんの娘ラヤンちゃん(15)と電話がつながり、ハマダさんは、ラヤンちゃんの両親と兄弟3人が殺害されたことを知った。電話では、ヒンドちゃんとラヤンちゃんの2人だけが生き残ったと話していたという。

 ハマダさんは「ラヤンを落ち着かせようと思い、救急車を呼ぶ」と電話で伝えたのだと振り返る。

 パレスチナ赤新月社(Palestinian Red Crescent)の救急隊員がラヤンちゃんと電話で話していると、受話器の向こうから銃声が聞こえた。電話はそのまま切れてしまった。

 ハマダさんと赤新月社は、この時にラヤンちゃんが殺害されたとみている。

■「戦車が近づいてくる」

 ハマダさんは「救急車が現場に向かっている最中、ヒンドは母親と話していた。ヒンドが救急車が見えると言い、母親は車両のドアが開く音を聞いた。通話はそこで切れてしまった」とAFPに語った。

 それ以降、ヒンドちゃんからも救助に向かった救急隊からも連絡はない。

 パレスチナ赤新月社は5日、「6歳の少女ヒンド・ラジャブちゃんを助けに向かった救急隊の行方が分からなくなっている。消息を絶ってから7日が経過した」とSNSに投稿した。

 また、「ヒンドちゃんと救急隊の現状について直ちに説明するよう、占領当局(イスラエル)に圧力をかける」ことを国際社会に求めた。

 AFPはイスラエル軍にコメントを求めたが、返答はない。

 南部ラファ(Rafah)に避難しているハマダさんは「ヒンドに何が起きたのかを知りたい。それが何であろうとも。遺体に囲まれたまま、飲まず食わず、極寒の中で過ごしているとは思えない。動物が人の遺体を食べているのだ」と語る。

 パレスチナ自治政府の保健省は、昨年10月に始まった武力衝突でガザ地区では主に市民が犠牲になっており、これまでに少なくとも2万7585人が死亡したとしている。

 3歳の孫とその両親がまだガザ市にいるというハマダさん。「ヒンドは自分にとって初めての孫だ。あの子は自分の心の一部だ」と言い、カラフルな洋服でカメラに向かって笑顔でポーズをとるヒンドちゃんの写真をAFPに見せた。

 涙を抑えきれない様子で、最後に声を聴いた時のことを振り返り、「あの子は、怖い、おなかが空いている、助けに来てと言っていた。戦車が近づいてくると言っていた」と訴えた。

【翻訳編集】AFPBB News

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