テキストから画像を自動生成するAIの「Midjourney」は、同名のAIスタートアップ企業によって運営されています。Midjourney社は設立して約1年半が経過しますが、これまでベンチャーキャピタリストから1円も投資を受けていないにもかかわらず、2億ドル(約290億円)の年間収益を計上しています。このMidjourney社のCEOを務めるのがデイビッド・ホルツ氏で、過去にはLeap Motionを共同設立した経歴もあります。

David Holz | Biography, Midjourney Founder & CEO - AiTuts

https://aituts.com/david-holz/

Can Midjourney CEO David Holz Stop a Storm of Fake Election Images in 2024? - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/opinion/articles/2024-01-02/can-midjourney-ceo-david-holz-stop-a-storm-of-fake-election-images-in-2024

ホルツ氏はアメリカのフロリダ州南部で生まれ育ちました。父親は歯科を担当する船医で、コンピューターを使って仕事をしていました。その影響で、ホルツ氏は幼い頃からコンピューターに興味を持つようになります。さらに、地元は高齢者が多く、一緒に遊ぶような友だちが少なかったため、1人で過ごす時間が多かったとのこと。その結果、ホルツ氏はSchemeを独学で習得し、ゲーム「Star Wars Jedi Knight Dark Forces II」をハッキングしたこともあったそうです。

また、ホルツ氏は科学も好きで、子どもの頃から高度な科学実験を自分で行っていたとのこと。あるときは自分で風洞を手作りし、時速160マイル(約257.5km)で紙飛行機を飛ばしたこともあったそうです。また、13歳の頃には科学研究の発表で賞を受けています。



ホルツ氏は中学生の頃に受けたタイピングの授業で、「紙に手をかざすだけで1分間に60単語を書けるなら何でもできる」と先生が語った時に、Leap Motionのアイデアを思いついたとのこと。そして、高校生の時に3Dモデリングで手を追跡するアルゴリズムの設計を始めたそうです。

ホルツ氏はノースカロライナ大学チャペルヒル校で、数学と物理学の学位を取得しました。大学院では応用数学に取り組み、さらにNASAのラングレー研究所やマックスプランク研究所でも働き、さまざまな研究プロジェクトに携わりました。ホルツ氏は、この研究者生活の中でLeap Motionの実現に向けて動き出し、2008年にLeap Motionを共同設立しました。



Leap Motionは、空中の手の動きを読み取る入力デバイスです。以下の記事を読めば、Leap Motionが実際にどんなデバイスなのかがよくわかります。

空中で手を動かすジェスチャーだけでパソコンを操作できる「Leap Motion」を実際に使うとこんな感じ - GIGAZINE



ホルツ氏は「Leap Motinは正しい製品ですが、間違ったタイミングでリリースされました」と語っており、具体的にはスマートフォンの主流がタッチスクリーン搭載型になった後にリリースすべきだったと主張しています。Leap Motionは手の動きをトラッキングできるので、VR(仮想現実)コンテンツとの親和性は高いのですが、ホルツ氏自身はハンドモーションコンピューティングとVRの可能性はかなり限られていると考えています。

ホルツ氏が共同設立したLeap Motionは2013年にAppleから数億ドル(数百億円)で買収を打診されましたが、ホルツ氏はこの提案を拒否。しかし、その後にLeap Motionの企業価値は下落し、最終的にLeap Motionは2019年にイギリスの企業へ3000万ドル(約43億4000万円)で売却されました。

ホルツ氏はサンフランシスコに住んでいたことから、AIの研究者が参加するパーティーに定期的に参加することで、AIについての造詣を深めていったとのこと。そして、ホルツ氏は2021年にAI企業・Midjourneyを設立し、OpenAIのアルゴリズムに基づいて9カ月間かけてMidjourneyを開発。ホルツ氏はMidjourneyについて、「人々が美しいものを作るためのツール」と述べ、ユーザーにとって「心の器」になるものだとしています。

Midjourneyは2022年に試験的に公開され。Twitter(現X)とオンラインチャットツールであるDiscord上でベータテストが行われました。



ホルツ氏はMidjourneyのテスト公開で、ユーザーがまるでチャットボットを利用しているかのようにMidjourneyでのAIとのやり取りを楽しんでいたことを受けて、Midjourneyの正式版は完全にDiscordで展開するべきだと判断しました。周囲から「Discordだけで製品を展開するのは頭がおかしい」と批判されたそうですが、ホルツ氏は「(Discordでの展開を)ユーザーは気に入っています。それ以外は何も問題ではありません」と答えています。