北海道小樽市にある、英訳が「小樽おなら」となってしまう案内標識の誤記が話題になっています。ただ実際に行ってみたところ、これが“手つかず”状態だった理由が見えてきました。

「小樽港=Otaru Poot」?

 2023年12月、北海道小樽市のとある道路案内標識がマスコミなどで広く取り上げられ話題になりました。小樽港の英訳「Otaru Port」が、「Otaru Poot(Pootは“おなら”などを意味する)」と誤まって記載されているというもので、ある意味“ミラクル”な間違いとして話題になったわけです。

 この「小樽おなら」の標識は約30年にもわたり“手つかず”の状態だったと報じられています。そこで実際に現地へ見に行ってみると、なぜ手つかずだったのかを少し体感することができました。


過去に英訳が「Otaru Poot」と描かれていた小樽市の案内標識(2023年12月18日、乗りものニュース編集部撮影)。

 まず、この「小樽おなら」の英語表記は、2023年12月7日に変更され、本来の意味である「Otaru Port」に書き換えられたと報じられています。18日に現地で確認すると、たしかに「小樽港」と描かれた下部の英語表記が「Otaru Port」に変更されていました。そして、「Otaru Port」の文字をよく見ると、それは「Otaru Poot(小樽おなら)」を隠すようにシールを貼って上書きされたものであることがわかります。

 とはいうものの、この案内標識が設置されているのは、北海道有数の観光都市である小樽。そのような地であまり気づかれることもなく、「小樽おなら」英訳のまま長い年月を過ごしていたという点も不可解なところです。現地へ行ってみると、「小樽おなら」表記が、小樽の地で長年続いた理由をいくつか発見することができました。

「おなら」表記30年…継続の秘訣は立地か?

 この元「小樽おなら」案内標識は、JR小樽駅からほぼ真北に3kmほど離れ、少し高台に位置する「赤岩」という地域の市道に設置されています。この市道は少なくとも取材時は、ほかの道路と比べて交通量はかなり少なめ。かつ小樽駅〜赤岩地区の公共交通機関に乗る人を見ても、学生やお年寄りなどが多数でした。


過去に英訳が「Otaru Poot」と描かれていた小樽市の案内標識(2023年12月18日、乗りものニュース編集部撮影)。

 つまり「小樽おなら」案内標識があるところは、観光都市・小樽ながらも、インバウンド(訪日外国人旅行者)はおろか、国内観光客でさえあまり訪れるところではなく、むしろ、市内の住民の方たちが、それぞれの生活のために使っている道路といったイメージです。

 また、こういった観光地や交通の要地の案内標識といえば、かなり大きな看板に情報が描かれることが一般的ですが、「小樽おなら」案内標識のサイズ感はそれより少なくとも一回りは小さい印象で、決して目立つ感じではありません。

 約30年にもわたり、「小樽おなら」案内標識が“手つかず”の状態だったのは、こうした立地が関係している可能性も考えられそうです。

 地元の人であれば、ほとんどの道の行き先を、看板を見ずとも肌感覚で理解できるはずです。一方で、旅行者も観光スポットなどを行き来する際にこの標識を通り過ぎたとしても、未知の市道で、そこに掲げられている小さい案内標識を運転しながら隅々まで見る人はごくわずかでしょう。

 新たにこの道を通過する人にとっては、よほど意識していない限り、「小さい案内標識の行き先の英訳」まで目を通すのは、かなり至難のワザだったのかもしれません。

【写真】マジで書いてある! これが「小樽おなら」看板の実物です