いろんなアイデアが出てきそうです。

全国の国交省内で議論された「自動物流道路」

 国土交通省は2023年12月11日、道路政策を話し合う有識者審議会「第61回国土幹線道路部会」を開催。将来的な「高規格道路ネットワーク」の在り方について議論されました。そのなかで、議論が活発化している「自動物流道路」構想についても話し合われました。


トラックが走る幹線道路のイメージ(画像:写真AC)。

 自動物流道路は「道路空間を活用した人手によらない新たな物流システム」と説明されています。これまでの議論の中間取りまとめとして、国土交通省が10月末に公表した『WISENET2050・政策集』に明記されました。この政策集は、「道路はこういう使い方もできますよ」という様々な事例を紹介しており、自動物流道路はその主要なものとして挙げられています。

 その参考となる海外事例として挙げられているのが、スイスで建設が始まろうとしている物流専用の地下トンネル網。主要都市間に総延長500kmに及ぶトンネルを構築し、自動運転専用カートを24時間体制で運行することで、トラック輸送からの転換を図り、道路を走るトラックの数を減らす目的があります。

 地下トンネルはあくまで例ですが、国土交通省はこうした「自動物流道路」を、物流危機の克服、温室効果ガス削減の切り札として位置づけ、「スピード感を持ち、10年での実現を目指す」と意気込んでいます。

 さて、今回の審議会では、中間とりまとめを受け11月に各地方の小委員会で話し合われた内容がまとめられています。自動物流道路については、各地方で「物流危機への対応として非常に重要」「構築にスピード感を持つことは大事」といった意見が寄せられています。

物流専用にして4車線化したら?

 特に四国の小委員会では、高規格道路の「暫定2車線区間を自動運転車の物流路線として1車線増やすことも考えられる」という意見がありました。四国の高規格道路は暫定2車線区間が多く、サービスレベルや道路の安定性の面で課題になっているため、この自動物流道路としての役割が、4車線化への道筋をつけることになるかもしれません。

 他方、「物流は自動物流道路だけでなく、鉄道との連携が重要」との意見も。廃止問題に揺れる鉄道ネットワークも自動物流システムに活用できるというものです。現に『WISENET2050・政策集』では、イギリスの鉄道空間を活用して低コストのリニアモーターを使用した完全自動物流システムの計画を紹介しています。

 また、自動物流道路を具体化するうえで、「荷主による使い方の議論も必要であり、国交省内だけでなく省庁間連携が必要」という指摘もありました。


イギリスのMAGWAY。供用中の鉄道へリニアモーターを使用した完全自動運転の物流システムを構築する計画だ(画像:国土交通省)。

 ちなみに、『WISENET2050・政策集』で実現が明記されているのは自動物流道路だけではありません。

 道路ネットワークを活用して再生可能エネルギーなどを送電する「電力ハイウェイ」構想や、高速道路トンネルの下面を放水路に活用し、集中豪雨に対する治水機能を持たせたマレーシアの事例、「高速自転車道」と称し、高速道路と並行して規格の高い自転車道を整備したノルウェーの事例を紹介し、これらの整備を推進するとしています。

 国土交通省は「自動車の道路から、多様な価値を支える多機能空間へと進化」する目標を掲げており、こうした側面が重視された道路整備が、今後進むかもしれません。