詐欺行為の手口は洗練され続けており、仮想通貨や電子マネーなどあらゆる資産が詐欺師の標的となっています。そんな中、アンチ詐欺系YouTuberのKitboga氏が仮想通貨をだまし取る詐欺師を逆にだますシステムを構築し、詐欺師たちに無駄な時間を浪費させたレポートを公開しています。

I Trapped 200 Scammers in an Impossible Maze - YouTube

Kitboga氏がアンチ詐欺の標的としたのはビットコインATMを用いた詐欺です。詐欺犯は「電話やメッセージアプリを通じて被害者に指示を出してATMを操作させ、ビットコインウォレットに入金させた後にATMが発行する『ウォレット管理サイトにアクセス可能なQRコード』の写真を要求する」という手法で金銭をだまし取ります。



Kitboga氏は「ウォレット管理サイトにアクセス可能なQRコード」の代わりに「ウォレット管理サイトに見せかけたアンチ詐欺システムにアクセスするQRコード」の写真を詐欺犯に送信しました。



詐欺犯がアンチ詐欺システムにアクセスすると、最初に一般的なウェブサイトでもボット対策に使われていそうな「画像に関連するクイズ」が表示されます。しかし、これらの画像は画像生成AIによって生成された画像で、クイズもただ時間を浪費させるためだけに作られたもの。例えば、以下の画面では大量のナッツの写真とともに「写真の中に何個ピーナッツがある?」というクイズが出題されています。



アンチ詐欺システムに用意された同様のクイズに対する詐欺犯の解答例は以下の通り。「この波の高さは?(メートル単位で答えて)」というクイズには「32フィート」という単位の指定を無視した解答が返ってきたそうです。



「どの車が最も速いですか?」という質問。画像からは正答が分かるはずもありませんが、詐欺犯は律義に考えて「ピンクの車」と解答したようです。



ダイヤル式電話と思わしき物体が写った画像を指して「これは何ですか?」と問う質問には「てんびん」という明らかに誤った解答が寄せられました。



さらに、チェスの盤面を見せて「どっちが勝ってる?」という質問には「私はチェスをプレイしません」という解答が書き込まれたとのこと。



クイズにはどんな解答を記入してもランダムで正答と判定されて次の画面に進めます。しかし、次の画面に進む際に進行速度の非常に遅いプログレスバーが表示されるため、詐欺犯は長時間待機することとなります。



ウォレットアドレスの入力画面にたどり着いたら、詐欺犯はKitboga氏から伝えられた「偽のウォレットアドレス」を入力します。



偽のウォレットアドレスからビットコインを引き出せるはずもなく、電話番号とともに「以下のコールセンターに連絡してください」という通知が表示されます。



このコールセンターももちろんワナ。「めちゃくちゃ混雑したホットライン」を装い、延々と待機音声が流れます。さらに、「ボットによる連絡を検出するために、今から再生されるワードを復唱してください」というメッセージが定期的に流れるため詐欺犯は電話を放置しておくこともできません。



Kitboga氏はアンチ詐欺システムに数百人の詐欺師を誘導することに成功したとのこと。中にはアンチ詐欺システムを本物のビットコインウォレット管理サイトと誤認したまま画像認証やコールセンターとの連絡に59日以上の時間を費やした詐欺犯もいたとのことです。