懸賞を多く見かける大相撲九月場所(写真・JMPA/梅基展央)

 9月10日から東京・両国国技館でおこなわれている大相撲九月場所(秋場所)は横綱・照ノ富士が休場するなど、今ひとつ盛り上がりに欠けるかと思われた。しかし、“嬉しい異変”が起きている。

 初日におこなわれた豊昇龍(ほうしょうりゅう)と阿炎(あび)の一番。

 新大関として、初めて勝ち名乗りを受けた豊昇龍のもとには、片手では受け取れないほどの懸賞金が。そして結びの一番となった霧島と翔猿(とびざる)の一番でも、勝った霧島には豊昇龍の倍はあろうかという54本の懸賞がかけられ、霧島も大事そうに両手で懸賞金を受け取った。

 懸賞1本につき、協賛する企業・団体からは7万円の懸賞金が支払われる。そのうち、勝利力士はその場で3万円を受け取ることになっている。つまり、霧島はこの一番で162万円をゲットしたのだ。

 その光景は、まるで千秋楽の結びの一番で、勝ち名乗りを受ける力士のようだったーー。

 相撲協会によれば、初日、幕内の19番に懸けられた懸賞総数が、結びの一番の54本を含め198本。

 これは2023年5月の夏場所千秋楽を更新し、1日の懸賞総数としては史上最多だ。入場券の売り上げも好調で、秋場所15日間は、すべて完売している。

 なぜここまでの人気ぶりなのか。相撲担当記者が解説する。

「照ノ富士の2場所連続休場しましたが、新昇進を含む3大関が名を連ねるなど、見どころの多い点がまず挙げられます。

 とはいっても、今年に入って大相撲の本場所は毎場所、優勝力士が異なっているように“本命力士”が不在で、誰が優勝してもおかしくない。贔屓の力士がいるファンは、それだけに場所に足を運びたいのでしょう。

 懸賞の申し込みも殺到していて、総数は2154本、新規は289本に達しましたが、この多さはコロナ禍前の水準まで戻ってきています」

 なかでも、新たな懸賞で目立ったのが、人気音楽グループのEXILEなどが所属する「LDH」。新関脇の琴ノ若などに複数の力士に懸賞金をつけている。

「もともとLDHは大相撲に関心があって、応援して行きたいという気持ちが強かったようです。大相撲の人気はここ最近、アジアや欧米を中心に世界的になってきていますし、同社も活動の場を世界に広げていますから、うまくマッチしたのでしょう」(芸能関係者)

 もうひとつ、大相撲の人気が拡大していった要因があるという。2023年5月から動画配信サービス「Netflix」で配信され、人気となったドラマ『サンクチュアリ-聖域-』の影響だ。

 元格闘家で俳優の一ノ瀬ワタルが、未経験から角界入りして横綱を目指す力士役を演じた同作は、「リアルすぎる」と話題に。日本国内でも、芸能人らが興奮気味に感想を語る様子がテレビやラジオで広がり、人気を博し続けている。

「もともとコロナ禍前は、各場所に欧米を中心とした相撲ファンがけっこう見に来ていたんです。それがコロナ禍でなかなか来日できる状況じゃなくなった。

 いまはコロナ禍も落ち着いたことで、来日する外国人が増えていますが、世界的に大ヒットしている『サンクチュアリ』に影響を受けた新たな外国人ファンも多く場所に駆けつけていますね。

 懸賞を出す企業もそういった動向を注視していることでしょう」(前出・相撲担当記者)

 元横綱・北勝海で、日本相撲協会の八角理事長も鑑賞したことを明かしていた『サンクチュアリ』のインパクトは抜群だったようだ。

 本命不在でも、思わぬ余波で人気回復傾向の大相撲。あとは、番付最上位にもう一人、名が刻まれるのを待つのみだ――。