遠山景織子、女優としてコントに挑戦した『笑う犬』。共演した内村光良、ネプチューンの表現力に脱帽「私より役者っぽく見えていた」

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女子校の教師と生徒の禁断の愛を描いた映画『高校教師』(吉田健監督)のヒロイン・繭役に抜てきされ、日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ、数多くの新人賞を受賞して注目を集めた遠山景織子さん。

映画『ポストマン・ブルース』(SABU監督)、日中合作ドラマ『風雨一世情(邦題:『漆器』)』など多くの作品に出演。『笑う犬の生活』(フジテレビ系)ではバラエティ番組に挑戦するなど幅広い分野で活躍することに。

 

◆幸薄い役のイメージが定着

1997年、遠山さんは、映画『ポストマン・ブルース』に出演。この作品は、自分の意思とは関係なく犯罪事件に巻き込まれてしまう郵便配達員・沢木(堤真一)の運命を描いたもの。遠山さんは、ガンで病院に入院している小夜子を演じた。酔った勢いで沢木が配達カバンの中の手紙を読んだことがきっかけで二人は出会うことに…という展開。

「『高校教師』で本格的に役者としてやっていきたいと思うようになったので、もっとドラマや映画に出演したい気持ちが強くなっていました。

だけど、やっぱり呼ばれる作品はどちらかというと陰がある役が多かったですね。1年間病気の役しか来ないということもありました(笑)。幸薄い役が多かったりとか」

――『ポストマン・ブルース』も病気の役でしたね。

「そうです。やっぱり幸薄い役が多いんだなあって(笑)。でも、『幸薄い役ができるのはある意味限られる人だけなんだよ!』って言われたときに、『なるほど!』って前向きな気持ちになりました」

――映画監督デビュー作『弾丸ランナー』で注目を集めたSABU監督の2作目で、ものすごく勢いのあるときでしたね。ファンタジックなシーンもあって。

「はい。郵便屋さん役の堤(真一)さんと、魂と魂が…みたいな感じで。私は、あのラストシーンが一番好きなんですけど、堤さんがずるいんです。

すごく自然な笑顔じゃないですか。手をつなぐところで、テストのときにはやらなかったのに、本番で私の手をコチョコチョッとしてきたんですよ。本当にそれがおもしろくて(笑)。くすぐったかったし、それですごい自然な笑顔ができて、楽しいワンカットになったんでしょうね」

――それで生まれた表情だったのですか。すごいですね、堤さん。

「そうなんです。堤さん、すごいんですよ(笑)。私が手を広げてクルクル回るシーンも、SABUさんがすごくこだわって撮影していたのをよく覚えています。『ポストマン・ブルース』もすごく好きな作品です」

――病弱な役が続いていた中の一作なのですね。

「あのぐらいのときはそうでした。『美味しんぼ』(森崎東監督)もそうですし、本当に多かったです」

 

◆単身中国での撮影に参加

『ポストマン・ブルース』の翌年、遠山さんは、日中合作の時代劇ドラマ『風雨一世情』でアジアデビューする。このドラマは、漆工芸人の主人公・中国人の青年の一生を軸に、漆工芸の歴史、男女の愛情などを描いたもの。

「この作品はほぼオール中国ロケでした。あの時代はまだ合作作品というのは珍しいときでしたね」

――中国での撮影はいかがでした?

「日本人は1人でしたし、中国でのドラマの撮り方というか、やり方がまったく違っていたので最初は戸惑いました。台本はあってないようなもので、撮影当日すぐ内容が変わったりするので、臨機応変に対応ができるようになったかもしれないです」

――セリフは中国語だったのですか。

「いいえ、私のセリフは日本語で、相手のセリフは中国語でした」

――スタッフもみなさん中国の方ですか。

「そうです。カメラマンさんが日本語をしゃべれる方でしたし、通訳さんも毎回いてくれたので、何とかなったという感じです」

――でも、大変だったでしょうね。

「撮影はそうですね。ずっとホテルだったし、まあまあ大変でした。約2カ月間ほぼ行きっぱなしだったので。

でも、どこでも楽しめるほうなので、撮影がないときは町をあちこち見に行ったりしていました。その頃は写真を撮るのが好きだったので、一眼レフで写真を撮りに行って、子どもたちを追いかけ回して遊んだりとか(笑)」

――繊細なイメージがありますが、順応性があるのですね。

「そうですね。今でもそうですけど、地方ロケに行っても現地のスーパーマーケットや、商店街、市場があったら必ず行って満喫して帰ってくるみたいなところはあります(笑)。いろんな町の空気感を感じることが大好きなので、撮影以外のいろんな隙間時間も楽しんでいますね(笑)」

――中国に行っていた2カ月間で印象に残っていることは?

「時代劇だったので着物だったんですけど、衣装さんも着付けができなくて、写真を見て、見よう見まねでホチキスで止めたりしていたんです(笑)。帯もちゃんとできないから、一応調べてはいるんですけど、『なんとなく見た目が大丈夫ならOK』みたいな感じで(笑)」

――日本とは全然違いますね。

「そうなんです。私もまだそんなに着物の知識がなかったから、『いいのかな?これで。よく着崩れるし…』って思ったんですけど、何とか大丈夫だったみたいです(笑)。写真はいまだに持っていますけど、何とかなっていました」

――共演者の皆さんとコミュニケーションは取れていたのですか。

「最初は向こうの役者さんたちにご飯に連れて行ってもらっても言葉がほとんど通じなくて。でも、言葉は通じないけど、やっぱり気持ちが通じるとジェスチャーでもわかるようになってくるんですよね(笑)。2カ月間で日常会話も少し聞き慣れるようになりました。

今でもなんとなくは覚えていますけど、中国語って難しいんですよね。だから教えてもらった通りに言ったつもりでも『違うよ』って言われたりしていました(笑)」

――作品をご覧になっていかがでした?

「本当に大作に関わらせてもらったんだなあって思いました。あの頃は外国の人と一緒に仕事をするということがあまりなかったので、中国の人と一緒にというのは珍しかったと思います。

陳凱歌(チェン・カイコー)監督の『始皇帝暗殺』にも出ていた張豊毅(チャン・フォンイー)さんが一番有名だったんですけど、陽気なタイプの人だったので、現場の雰囲気を明るくしてくれていました(笑)。

あと、ライバルの女性役の方がいて、役同士ではちょっときつい感じの関係なんですけど、撮影以外では妹みたいに可愛がってくれていたので楽しかったです。

中国で『このお酒おいしいんだよ』って、おすすめしてもらったのが(アルコール度)56度だったんですよ。最初は喉が焼けるような感じで『うわーっ、無理!』って思ったんですけど、だんだん『これはおいしいじゃないか』ってなって(笑)。日本に帰ってくるときに買ってくるぐらいお酒も強くなっていました」

 

◆バラエティ挑戦でイメージを払拭?

中国での撮影があった1998年、遠山さんは『笑う犬の生活』に出演することに。

「プロデューサーの小松(純也)さんとは、深夜の単発の作品でご一緒させていただいたことがあったんですね。私はその作品で、地上を爆破して、笑って走って去る女という、とてもシュールな役で(笑)。

そのときに小松さんに、『遠山さんって何か陰があるね。ちょうど内村光良さん(ウッチャンナンチャン)ともう1回お笑いブーム、コントブームを作りたいと企画していたところなので、女優さんとして参加してくれないですか』と言われたのが始まりだったんです」

――聞いたときはいかがでした?

「陰というのは、自分じゃピンと来なかったんですけど、その作品自体もちょっとぶっ飛んでいたというか。何かそういう作品で、自分というものを引き出してもらえるというのは、すごいラッキーだなあって。

何か色々やってみたいと思ったし、それこそお笑いも好きだったので、ウッチャンナンチャンさんの番組もよく観ていたし、ご一緒できるなんて幸せだなあと思いました」

――実際に番組が始まっていかがでした?

「芝居、コントって奥が深くて、私よりみんなのほうが役者っぽく見えていました、私には。やっぱり表現力もすごいし、1個1個のそのコントを作るのに、1本2、3時間かけるんですね。本当にそれこそ舞台の稽古をしているのかなみたいな感じで。毎回そんな印象があって。

あと、やっぱり内村さんやネプチューンさんの1個1個のコントのキャラクターの個性が強いじゃないですか。その中でみんなが役作りというか、やってらっしゃるのを見て、『私も何かしたほうがいいですか?』って聞いたことがあるんですね。

そうしたら、『いや、遠山さんは、そのままでいてください』って言われて、『うーん、まあたしかにそうだけど』って(笑)。

やっぱり1個1個の役が違うので、本当に幅広くお芝居をギュッとコンパクトに短くした中でも、やればやるほど本当に楽しかったですね。幸薄いイメージも払拭できた感じがしました(笑)」

――『笑う犬』のシリーズは、結構長く続きましたね。

「やっぱり深夜の頃から話題になっていて、それでゴールデンになったんですけど、そうやって続いていったのは、本当にうれしかったです。みんなと一緒に、一から作って成長していったという感じで。

あの頃は、『メトロポリタンジャーニー』(フジテレビ系)とか、旅番組もいろいろやらせてもらっていたので、海外に行けることもうれしくて。行けば行くほど、そこで出会う方も変わって、自分の引き出しみたいなのは増えていった感じがします」

2001年には長男が誕生。ナチュラルフード・コーディネーターの資格も取得。中学1年生から高校3年生まで6年間お弁当を作り続け、レシピを紹介する著書『遠山さんちの明日のお弁当』(竹書房)を出版するなど幅広いジャンルで活躍。

次回は、お弁当作り、主演短編映画『15歳の総理大臣』(胡麻尻亜紀監督)の撮影エピソード、2023年9月27日(水)に初日を迎える舞台『陽だまりの中で』も紹介。(津島令子)

ヘアメイク:糟谷美紀