日産が「雨に強いミシュラン」とのコンビで圧倒的速さ 台風のスーパーGTを制してランキング首位に
6月初旬の第3戦・鈴鹿から2カ月のインターバルを経て、スーパーGTはシーズン中盤・後半戦へと突入。8月5日・6日に富士スピードウェイ(静岡県)でシリーズ第4戦が行なわれた。
日曜の決勝レースは台風6号の影響で大気が不安定な状態となり、朝から大雨が降っては太陽が顔を出すという、目まぐるしくコンディションが変わる1日となった。
ミシュランタイヤの実力を大いに発揮した3号車
レースが始まると雨はピタリと止み、路面が急速に乾いていった。と思えば、レース後半に車両火災のアクシデントで赤旗中断となっている間に突然のスコール。特例で中断中にタイヤ交換が許されるなど、イレギュラーな展開が続いた。
そんな大波乱のレースにおいて、GT500クラスを制したのはナンバー3のNiterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)。ミシュランの新型ウエットタイヤが威力を発揮し、レース再開後の75周目にトップに立つと、わずか25周の間に1分以上もライバルを引き離す圧倒的な強さを見せて今季初優勝を飾った。
すでに発表されているとおり、ミシュランは今季かぎりでGT500クラスへのタイヤ供給を休止する。有終の美を飾るべく、供給する3号車とチャンピオンを獲得するのが最後の願いだ。しかし前戦の鈴鹿にて、3号車は悔しい結果に終わった。
レース終盤、ナンバー23のMOTUL AUTECH Zが大クラッシュを喫し、そのまま途中で終了となる。その時点でトップを走っていた3号車が優勝......という暫定結果が出された。ただ、450kmで争われるレースでは2回の給油を伴うピットストップが義務づけられており、それを唯一完了できていなかったのが3号車だった。
【スコールが勝負の分かれ目】第3戦はやむを得ない理由により、レース途中で終了となった。だが、選手権ポイントがフルで与えられる「レース成立条件(全体の75%)」を超えているのに義務を消化していない車両が優勝になるということに対し、10チームが疑義を申し立てる抗議文を提出。結果、3号車のタイムに1分加算する措置がとられ、正式結果は4位となった。
「前回はいろいろなことがあって、そこに関しては自分たちも思うところはありますけど、そこはすべてを飲み込み、歯を食いしばって耐えてきました。だから今回勝てたことは、チームもすごくうれしい思いがある」(高星)
土壇場で結果をひっくり返された悔しさを味わった3号車は、それを原動力に第4戦・富士では一致団結し、今度は誰にも文句を言わせない勝利をもぎ取った。
「チャンピオンを獲るには、やっぱりラッキーをモノにしないと難しいなと思っています。前回の鈴鹿は赤旗で途中終了となり、それは僕たちにとってはある意味でラッキーだったと思ったのですが、それは(再審議の結果)許されなかった。だから今度はもう1回、実力でがんばらないといけないなと思ったので、気合いが入りました」(千代)
勝負の分岐点となった後半の急なスコールも、3号車は「雨に強いミシュラン」のよさをさらに引き出すため、積極的な行動に出る。
レース中断中に千代がピットを離れると、コースサイドの客席エリアに移動し、周囲を見渡して天候変化や路面の状況を逐一報告。その状況をもとに、レース再開時に履くウエットタイヤの種類を最終決定した。
作業禁止まで、タイムリミット2分前の決断──。結果、雨が止んで路面状況が変化しても対応できるタイヤを選べたことで、のちに後続を大きく引き離す快進撃を実現できたのだ。
今回の優勝により、3号車のふたりはドライバーズポイントを49ポイントに伸ばし、ランキング首位に躍り出た。ミシュランのGT500活動休止もあり、今年のチャンピオン獲得に賭ける想いは誰よりも強い。
【恩師・長谷見昌弘のアドバイス】「予選からいいパフォーマンスを出せたのもの、チームとミシュランタイヤのおかげです。スーパーGTでチャンピオンを獲るのはものすごく難しい。なので、気を抜かずにがんばっていきたいです」(千代)
高星も全日本F3やFCJに参戦していた頃の恩師・元レーシングドライバー長谷見昌弘氏からのアドバイスを思い出し、チャンピオン獲得への決意を新たにした。
「長谷見さんから『常にシリーズチャンピオンのことを考えて、1ポイントも取りこぼさないようにする』ことを教わってきました。NDDP(日産ドライバー・デベロップメント・プログラム)で育ってきたドライバーとして、それを忠実に守っていきたいなと思います」
第3戦・鈴鹿でのリベンジを果たした千代と高星は、次戦サクセスウェイトが98kgとなり苦しい戦いが予想される。だが、彼らが狙う目標はただひとつ──昨年4.5ポイント及ばず獲り逃したGT500年間チャンピオンの座だ。