並んでゴールに飛び込む市船橋・宮地利璃香(左)と京都橘・瀧野未来【写真:荒川祐史】

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陸上インターハイ最終日・女子1600メートルリレー決勝

 陸上の全国高校総体(インターハイ)最終日は6日、札幌市厚別公園競技場で女子1600メートルリレー決勝が行われ、京都橘(京都)が3分39秒36で400メートルに続くリレー2冠を飾った。アンカーを務めた瀧野未来(3年)は400メートル障害、400メートルリレーと合わせ、個人3冠。2位でバトンを受けた最終走者で400メートル覇者の市船橋(千葉)・宮地利璃香(3年)を逆転し、0秒08差の大激戦を制した。レース後は両者立ち上がれないほどの死闘だった。(文=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

 勝ちたい――。その想いだけがラスト50メートル、意識が飛びかけたアンカー・瀧野の脚を回していた。

 2番手で受けたバトン。すぐ前に見える背中を追った。今大会の400メートル女王・宮地だ。「自分も400メートル障害を優勝している。ガチンコ勝負で行こうと」。絶対に200メートルで抜かす。そう決めて飛ばし、バックストレートで前に出た。3コーナーから4コーナーへ。声出しが解禁となった今年の夏一番の歓声が会場に響く。

 直線、外から宮地がやってくる。並んだ。抜かされるか。「マイルリレーは気持ちが強いチームが勝つ」。瀧野は、ずっとそう信じてきた。1走からバトンを繋いでくれた小野田菜七(3年)、福井彩乃(3年)、河野桃々(2年)が待っている。抜かせない。完全に横に並ぶようにして緑と紺×赤のユニホームがゴールに飛び込んだ。

「正直、しんどすぎてヘロヘロで。勝ったかどうかも正直、自信がなかった」

 瀧野がトラックに倒れ込んだ。宮地も同様に倒れ込む。両者、すべてを出し切った死闘。会場はどよめきと拍手が沸き起こる。瀧野は朦朧とする意識の中で視線を上げ、電光掲示板を確認した。

1 京都橘 3.39.36
2 市立船橋 3.39.44

 勝った。それが分かると、全身から力が抜けた。1、2位の2人にすぐさまメディカルスタッフが駆け付け、しばらく体を起こすことができない大激戦だった。

「ここまで出し切れたのは初めて。府や近畿大会は競ることがなく、逃げ切るレースばかり。最後の最後まで競って出し切った。今までで一番しんどいレースでした」

 長い時間をかけて生気を取り戻した瀧野は4人で歓喜を分かち合った。

瀧野「日本一になりたい気持ちが一番強いチームでした」

 そうも全力を出し切れたのは1年前の悔しさがあったから。

 400メートル、1600メートルリレーともに優勝を狙いながら4位。特に1600メートルは今大会と同じメンバー4人で走った。「その悔しさだけを持って冬季練習に励んできた」と瀧野。あの時のレースは今も見返す。そして、今大会で北海道に入ってからも。4人が募らせた1年分の想いが報われる219秒だった。

 400メートル障害、400メートルリレーと個人3冠を達成した瀧野は胸を張った。

「みんな明るくて、出ていない選手も日本一を真剣に狙っている。自分たちを先生も含め、サポートしてくれて、日本一になりたい気持ちが一番強いチームでした」

【京都橘1600メートルリレー1、2、3走コメント】

1走 小野田菜七「もっと2、3、4走に差を空けてあげたかったけど、自分の力は出し切ったという気持ちもあります」
2走 福井彩乃「こういう舞台に立って、自分のどこまで追い込めるか、それを証明する走りができたと思います」
3走 河野桃々「3年生に楽をして走ってもらえなかったことが悔しい。でも去年より成長した姿を見せられたのは良かったです」

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)