現地時間8月1日にMLBはトレード期限を迎え、大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)はチームに残留。プレーオフ進出に向けて、エンゼルスは"二刀流スター"を無事に引き留めることに成功した。

 後半戦でチームの成績と共に注目を集めるのが、大谷の個人のタイトル争いだ。現地時間8月6日終了時点(以下同)で大谷は、打率.307(ア・リーグ4位)、40本塁打(同1位)、打点82(同2位)と打撃成績で軒並み上位。特に本塁打に関しては、6月に16本、7月に10本を放ち、2位(30本塁打)のルイス・ホベルト・ジュニア(シカゴ・ホワイトソックス)を大きく引き離している。2年ぶりに40本の大台に乗せ、本塁打王のタイトル獲得が現実味を帯びてきた。


相手チームのバッテリーからの厳しい攻め、四球が増加する中で活躍を続ける大谷

 2年前の2021年は46本塁打を放ってア・リーグ3位だったが、オールスターまでにリーグトップの33本塁打をマークしていた大谷を悩ませたのが、相手からの執拗な"四球攻め"だった。2年前の7月終了時点での大谷の四球数は「48」。そこから8月は21、9月には22と数字は伸び、シーズントータルで「96」に到達。申告敬遠の数はリーグトップの20を数えるなど、他チームからの警戒が強まり、前半戦で見せていた量産態勢は影を潜めた。

 今季の大谷の四球は、3・4月の10個から、13、20、23(8月はここまで5)と2021年を超えるペースで積み重なっており、現時点でア・リーグトップの「71」を記録。2年前と同様に、オールスターが過ぎた7月末から8月にかけて、四球や申告敬遠が増え始めている。今季の四球数は3桁に乗ることが濃厚。そんな中で、どれだけ本塁打を積み重ねられるかがタイトル獲得のポイントになるだろう。

 また、終盤にかけて気になるのはシーズンを通してフル稼働してきたフィジカル面の問題。3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では侍ジャパンの世界一に貢献したが、そのままシーズンインした今季の休養日はわずか2試合のみ。

 投手としては、オールスター前最後の登板となった7月4日のサンディエゴ・パドレス戦で、右手中指の爪割れとマメの影響で6回途中降板。8月3日のシアトル・マリナーズ戦でも、4回無失点に抑えながら右腕と指の痙攣で降板した。

 野手としても、37、38号を放った7月28日のデトロイト・タイガース戦(ダブルヘッダー第2試合)、39号を放った29日のトロント・ブルージェイズ戦で快音を響かせながら痙攣で途中交代している。マイク・トラウトを故障で欠く中で獅子奮迅の活躍を見せてきたが、その奮闘の陰に見え隠れする満身創痍の状態は気になるところだ。

 また、大谷は2021年に46本塁打、去年も34本塁打を放っているが、いずれも後半戦に本塁打のペースを落とした。2021年は7月終了時点で37本を放っていたが、8月に5本、9月と10月で4本と急失速。2022年シーズンは9月以降に4本と、同じくペースは上がらなかった。

 四球や申告敬遠の増加からもわかるように、相手からの警戒がさらに強まったことはもちろんだが、投打でフル稼働する身体に蓄積していくダメージは、他の選手と比較できないものがあることは想像に難くない。

 実際に大谷は最近のコンディションについて、4回で降板した3日のマリナーズ戦後に、「最近よく(身体が)つっている。もう1、2イニング様子見でいこうと思えばいけたかもしれない。でも、1点を争うようなゲームだったので、投げる選択のほうが迷惑がかかるかもしれなかった」と、自ら交代を申し出たことを明かした。ただ、「もう休むような試合はないし、1試合1試合全部出たい」と、疲労の影響を示唆しながらも、残りシーズンをフル稼働していく覚悟を示した。

 それでも、終盤戦にかけてプラスの材料もある。左有鈎骨の骨折で7月5日に手術を受け、戦線を離脱していたトラウトが順調にリハビリを行なっている。早い段階で"盟友"の復帰があれば、大谷にとっては攻撃面に関する負担が減ると共に、執拗な四球攻めが減ることも十分に考えられる。

 また、トレード期間の終了間際に、コロラド・ロッキーズからランドル・グリチャックとC.J.クロンの2人を緊急補強。前者はトロント・ブルージェイズ時代の2019年に31本塁打、後者もタンパベイ・レイズに在籍した2018年に30本塁打を記録しており、パンチ力を見込まれての加入となった。グリチャックは外野の一角、コロンは一塁手としてここまでは起用されているが、プレーオフ進出の起爆剤としてはもちろん、大谷へのマークを分散させる意味でもこの2人にかかる期待は少なくない。

 エンゼルスのプレーオフ進出と、本塁打王のタイトル獲得へ。ここ数年の大谷は後半戦に数字が落ちるデータが残っているが、毎年のように投打で進化した姿を見せてきただけに、これまでの経験を活かしてタイトル争いをリードし続ける可能性は十分にある。日本人初の本塁打王に向けて、勝負は終盤戦へと突入する。