ネット上では逆風が吹く電動キックボードのシェアサービスですが、その認知度は意外と低いことがわかりました。利用は若者の男性に偏っています。調査団体は、新しいサービスを世に広めるには、工夫が必要だと指摘します。

電動キックボードシェア=シェアパーキングと同じ認知率!?

 免許不要、16歳から運転できる「特定原付」がスタートし、ネット界隈ではその運用に対して百家争鳴、議論百出でしたが、意外や意外。知らない人はほとんど知らないということがアンケート調査で明らかになりました。新しい乗りものサービスが、国民的移動手段になるまでには、まだまだ道のりが遠いということでしょうか。


電動キックボードシェア大手LUUPの機体。特定原付の小型ナンバープレートに置き換え中だ(乗りものニュース編集部撮影)。

 昭和や平成になかった新しいモビリティサービスが、令和になって続々登場しています。あなたは知っていますか? というのが市場調査コンサルティング「MM総研」(東京都港区)の最初の問いかけでした。調査は2023年6月です。その候補は、

・カーシェア(58.4%)
・タクシー配車アプリ(53.9%)
・シェアサイクル(49.6%)
・電動キックボードシェア(25.2%)
・シェアパーキング(23.9%)
・ライドシェア(11.6%)
・MaaSサービス(5.5%)
・上記すべてを知らない(30.4%)

 カッコ内の割合が、単純にこのサービスを知っていると回答した人(=認知率)の割合です。調査の対象は東京都、大阪府、愛知県在住の15〜79歳の男女1万7809人。新しいモビリティサービスは大都市先行で始まっており、実際に目にする機会がある地域に限定した調査です。研究員は、こう話します。

「高い認知度を示したカーシェアやタクシー配車アプリは、タクシーの車体の宣伝など実際に目にする機会も多いことが影響していると見られますが、電動キックボードシェアがシェアパーキングと同程度というのは意外でした」

 シェアサービス事業者が開拓した電動キックボードの社会実装だけに、上記サービスのうち道路交通法でビジネスチャンスを得ているのは、電動キックボードのサービスが圧倒的です。都市部の駅前やマンション駐車場では、貸出用の電動キックボードが並んでいます。

 これとほぼ同じ割合の認知度だったのが、シェアパーキングです。時間貸しのコインパーキングとも違って、民家の駐車場として使われているカーポートや空地を、スマホなどのアプリで予約し、一時駐車を可能にするサービスのことです。

 ネット上では、特定原付に位置付けられた電動キックボードがヘルメットなしでも乗れることや、複雑な交通ルールなのに免許なしで乗れることに対する批判も多く逆風が吹いていますが、電動キックボードのシェアサービスの存在自体、そこまで知られていなかったわけです。

実際の利用では年齢層で大きな差

 電動キックボードシェアには、利用者層に特徴があります。研究者が解説します。

「電動キックボードシェアの利用者は、20代、30代の男性で全体の40%以上を占めています。また、10代の男性も3.3%と、ほかのサービスよりも利用率が高いです」

 認知度が意外と低い反面、若い男性に響く電動キックボードシェア。アンケート調査では、実際に利用した割合と、チャンスがあれば利用しますかとも聞いています(利用率+利用意向=合計。

・カーシェア(6.4%+7.3%)13.7%
・タクシー配車アプリ(11.6%+10.6%)22.2%
・シェアサイクル(5.8%+11.2%)16.9%
・電動キックボードシェア(1.5%+6.5%)8.0%
・シェアパーキング(2.0%+4.5%)6.5%
・ライドシェア(1.2%+2.9%)4.1%
・MaaSサービス(1.1%+4.5%)5.7%


LUUPの利用も確かに若者が多い(乗りものニュース編集部撮影)。

 電動キックボードシェアよりもシェアサイクルの方が利用意向は高いものの、前者は特に若者に支持されていることと重ねると、潜在的なユーザーは少なくないのかもしれません。研究者は利用率を上げるためには、さらに工夫が必要だと訴えます。

「新しい乗りものサービスを利用しない人に話を聞くと、今の交通手段で不便を感じていないと答える人が多く、新しいサービスを普段使いに取り入れる認識がない。今後増やしていくためには、利用するメリットをより打ち出していく必要があります」

 高齢社会は、乗りものに保守的になっているのかもしれません。