羽田空港ではエンジンカバーに「イルカ」が描かれたANA機がしばし出現します。ANAグループが保有している旅客機のなかで、この型式はこの1機のみ。どういった役割で在籍しているのでしょうか。

2018年2月に退役

 羽田空港では、ANA(全日空)グループの珍しい機体を、不定期で見ることができます。エンジンカバーに「イルカ」が描かれたボーイング737-500「JA301K」。2023年現在、ANAグループが保有している旅客機のなかで、この型式はこの1機のみです。そしてこの機は、とある珍しい役割を担っています。


ANAのボーイング737-500「JA301K」(乗りものニュース編集部撮影)。

 ANAグループのボーイング737-500は、ANK(エアーニッポン、現ANA)で1995年から導入され、2020年までの25年間、地方路線で活躍しました。これらの機体は「スーパードルフィン」と名付けれ、エンジンカウルに「イルカ」のイラストが描かれています。これは特徴的な短い胴体がイルカに似ていることなどに由来します。

 羽田空港にいる「JA301K」は1997年4月に登録され、2018年2月に退役。同機の総飛行時間は約4万7000時間、総サイクル数(飛行回数に相当)は4万8254サイクル。旅客便としてのラストは2018年2月1日のNH1231便(小松→福岡)でした。

 一般的に、国内航空会社での役目を終えた旅客機は海外に売却されるなどの運命をたどりますが、この機はとある目的のため、ANAに残ることになります。

 整備士をはじめとするANAの技術系新入社員などが、実機を用いて航空整備の実技経験を積むことで、ノウハウを効率的に習得するための「トレーニングの場」として活用されるようになったのです。

「JA301K」の外観は、現役時代とほぼそのまま、ただ「ANA」ロゴのところが、「ANA TECHNICAL TRAINING」と塗り替えられています。この機はもう飛ぶことはありませんが、羽田空港ではしばしば、トーイングカーに引かれたり、駐機場にいる同機の姿を見ることができます。