中国の成都にある飛行試験場でエンジンテストをする中国軍J-20戦闘機の姿を捉えた動画が突如、SNSで拡散されました。この映像が真実ならば、同機が国産エンジンを搭載し初めて飛行したことになります。

意図的に流出させた動画なのか?

 2023年6月28日、中国の成都にある飛行試験場でエンジンテストをする同国軍の最新鋭戦闘機J-20の姿がおさめられた動画が突如、SNSで拡散されました。この機体に搭載されているエンジンが、中国国内で開発された新型エンジンであるWS-15ではないかと噂されています。


現在、中国で最新鋭機のJ-20(画像:中国航空工業集団)。

 成都は中国国有企業で航空機開発を担当している中国航空工業集団があることと、横断幕などにWS-15を示唆する数字「15」が掲げられていたことが根拠としていわれますが、もちろん中国からのオフィシャルな発表はありません。動画の真偽ははっきりとしないものの、中国政府が拡散を放置しているのは、なんらかの目的のために黙認している可能性も高いと見られています。

 ちなみに、この動画拡散直前の6月19日から25日まで行われた「パリ航空ショー」では、J-20を開発している中国航空工業集団も参加していましたが、その会場でも国産エンジンに関する情報はなかったそうです。

 これまでJ-20には、ロシア製のリューリカ=サトゥールンAL-31エンジンが搭載されていましたが、以前から、中国が開発中のWS-15エンジンにアップグレードすることを示唆していました。実は、2022年3月にも同エンジンを搭載したJ-20が飛行する姿が公開されましたが、そのときは既に量産されている国産エンジンのWS-10を片方付けた状態での飛行だったと分析されており、完全に2発とも新型エンジンにしての映像は今回が初です。

 WS-15の推定推力は現在アメリカ空軍や日本の航空自衛隊が使用しているF-35「ライトニング II」が搭載しているプラット・アンド・ホイットニーF135に匹敵するといわれており、航続距離や積載量の増加など、J-20の性能アップにつながると予想されています。

 現在、J-20は東シナ海や南シナ海方面でパイロットの飛行訓練を行っているとされていますが、安定供給が可能な国産エンジン搭載のJ-20が量産体制に入れば、通常の任務にも使用される可能性が高くなり、F-35やF-22など第5世代ジェット戦闘機としては、西側以外で唯一、飛行隊レベルで運用される機体が日本の近くに現れることになります。WS-15の性能や量産時期に関しては専門家の間で意見が割れていますが、場合によっては近い将来、東アジアの軍事バランスが大きく変える可能性もあるかもしれません。