高速道路を走行中の車間距離は「速度と同じ数字分だけの距離」と教わる人が多いでしょう。その目安が近年、少し違った形になっているといいます。

教習所で習う目安

 高速道路を走行中の車間距離は「速度と同じ数字分だけの距離」と教わる人が多いでしょう。もし80km/hで走行中なら80m以上というわけです。高速道路上には車間距離の目安として「50m」「100m」といった標識が路側に立てられている場合があります。
 
 その目安が近年、少し違った形になっているといいます。


混雑する道路のイメージ(画像:写真AC)。

 車間距離を確保する必要がある理由は、まず追突防止です。道路交通法では「追突するのを避けることができるため必要な距離を保たなければならない」と明記されています。

 事故を起こした際に、停止措置を講じたにも関わらず衝突した、つまり「必要な距離」が確保されていなかったからだ、などの争点にもなってきます。そこで生まれたのが目安距離で、「速度と同じ距離」というのは、乾燥した路面で急ブレーキをかけ停止できるまでに必要な距離として、実験等のデータで算出されたものなのです。

 2017年の公益財団法人 高速道路調査会の研究発表では、「80km/hなら80m、100km/hなら100m」という目安は、1968(昭和43)年に日本道路公団(現:NEXCO各社)がパンフレットで呼びかけたのが最初とされています。

 さていっぽう、高速道路上の渋滞でノロノロ運転している場合も、車間距離は十分取る必要があります。

 都内の自動車教習所の指導員は「たとえば一般道で信号が青になっても、信号待ちの後方のクルマが発進するには時間を要します」と話します。渋滞においても、車間距離を開けず前にぴったりくっつき、前方のクルマが発進・停止を繰り返すのにいちいち付き合っていると、そのたびに「タイムラグ」が後方車へ波及していき、渋滞が拡大する原因になるとされています。

 渋滞時もあらかじめ十分な車間距離を開けていれば、前やさらに前のクルマの状況を早目に把握することができ、マイルドな速度変化で対応できるというわけです。

近年は「車間時間」が主流に?

 とはいえ、渋滞時に車間距離を広くとっていると、どんどん前に割り込まれてしまい、正直者がただ損する羽目になります。そこで、車間距離の代わりに「車間時間」という考えも提唱されています。

 たとえば埼玉県警は2014年から「安全車間距離保持『0102運動』」を展開しています。これは、前車が電柱や標識など目標物を通り過ぎてから「ゼロ、イチ、ゼロ、ニ」と数え、「ニ」の時が前のクルマからちょうど2秒の間隔という目安になっています。

「車間時間2秒」というのは速度に関係ない指標のため、シンプルに実践できるというメリットがあります。

 先述の高速道路調査会の発表では、80km/hで走行中、クルマの割り込みに必要な時間が「車間時間約2.2秒」と算出したうえで、「渋滞時は2秒、それ以外は2秒以上、トラックなど急減速が難しいクルマの後ろだと3秒以上」が望ましいとしています。

 なお同発表では、アメリカではこの「車間時間」の考えが一般的で、前のクルマの足元まで自車が到達するのが1秒なので、3秒あければ十分安全だ、としているそうです。欧州の道路管理者会議では調査で判明した国と地域のすべてがこの「車間時間」方式を採用していると明らかになっています 。

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 十分な車間距離をあけずに前車へ「ビタ詰め」していると、同時に視野も狭まってしまい、周囲の状況にとっさに対応するのが難しくなってしまいます。詰めたところで差は数秒もありません。心に余裕をもった運転を心がけましょう。