「え、そこ見たいんですか?」 護衛艦の「男の隠れ家」的ルームとは やっぱりあった自衛官ご用達の“缶”
横浜開港祭の開催に合わせて一般公開された護衛艦「あぶくま」に、海上自衛隊大好き漫画家が突撃取材してきました。外側をひとしきり見たのち艦内に入ると、普段見られない区画に大興奮だったようです。
メーター類がひたすら並ぶヲタ興奮エリア
2023年6月2日の横浜開港祭において開催された護衛艦「あぶくま」の一般公開レポート。第1回では上甲板にある数々の主要装備について堪能する様子をお伝えしましたが、今回は満を持しての艦内突入ルポです!
当日は台風襲来というあいにくの天気だったので、艦内へ入る前に取材班は雨具を脱ぐ必要があったのですが、案内役の副長、柗村1尉が発した「『雨衣』はこちらにお掛けください」という言葉に思わず反応してしまいました。「雨衣」とは合羽(レインコート)の自衛隊用語。ふとした瞬間の専門用語からしか得られないオタならではの“栄養”ってありますよね。
2023年6月上旬に開催された横浜開港祭で一般公開された護衛艦「あぶくま」(乗りものニュース編集部撮影)。
身支度を整えたところで案内されたのは操縦室兼応急指揮所。艦艇の操縦というと艦橋ですべて行っているイメージですが、実際は艦橋の指示に従って操縦室でもエンジン出力などを調整し、速力などを入力したうえで艦を動かしています。
説明によると、艦艇に限らず大型船はすべてこのようなシステムなんだとか。艦橋は艦を動かす脳であり、操縦室は脳からの指令を各所に届ける神経といったところでしょうか。
操縦室は一歩入るとその計器類の多さに目を見張ります。応急指揮所も兼ねているこの場所のなかで、個人的には艦のシルエットを模した応急監視制御盤が好きなポイントです。これだと、緊急時にどこで問題が発生しているのかが一目瞭然。シンプルかつ合理的なデザインってかなり大事なんですよ。
「あぶくま」のエンジンはガスタービンとディーゼルを使用したCODOG(COmbined Diesel Or Gas turbine)方式で、速力によって効率の良い使い分けをしているそう。いわゆるハイブリッドですね。ちなみに護衛艦の推進方式は、最新のもがみ型ならCODAD(COmbined Diesel And Diesel)、海自最大のいずも型ならCOGAG(COmbined Gas turbine And Gas turbine)などいくつかあるのですが、略称がとにかくややこしいので、正式名称を見ると覚えやすいです。とりあえず、この日は「あぶくま」のCODOG方式について勉強して帰ってきました。
「男の隠れ家」感が満載な小部屋
こうして、操縦室兼応急指揮所のメカメカしさに興奮しつつ、次に案内されたのは工作室。ここは私が取材したいとリクエストした場所で、通常の見学で見たいと言われることはあまりないそう。
私は工具が並んでいると、ついワクワクしてしまいます。護衛艦の工作室では、艦内のちょっとした修理はもちろん、手の空いた時におしゃれなプレートを作ったり、ちょっとした木工工作で艦内をデコってみたりと、その艦独自のあしらいが見られるので、もし見学コースに加えたならDIY好きな方にも刺さる場所だと思います。
「あぶくま」は、船体サイズが護衛艦のなかでも小さい部類のため、工作室についてもほかの艦艇と比べ小さめの作りでしたが、上甲板の装備と同じく必要なものが効率よく収まっているので、手が届くところにあるべきものがある「男の隠れ家」感が満載でした。
取材した護衛艦「あぶくま」の工作室(乗りものニュース編集部撮影)。
筆者(たいらさおり:漫画家/デザイナー)は別の艦でも工作室を見せてもらったりするのですが、「あぶくま」は年数の割に綺麗だったので聞いたところ、取材のために必死で片付けたのだとか。お手数をおかけしました。
しかし私は見逃しません。工具は綺麗に収まっていても、その横に燦然と輝くのは……、自衛官御用達の「ピカール」!
海上自衛隊といえば研磨剤、すなわち「ピカール」なくしては語れません。海上自衛隊は見た目の美しさにもこだわりがあるので、金物はとにかく磨き上げます。「ピカール」は艦内の美観を保つために重要なアイテムなのです。
隊員によっては自宅の金物も磨かないと気が済まない人もいるほど。余談ですが、私も夫である海上自衛官のやこさんに、かつて金物磨きを教わったことがあります。しかし、あまりの職人技に習得を諦めました。
もし海上自衛官と話をする機会があったら、ぜひ金物磨きのコツを聞いてみてください。熱く語ってくれること間違いないでしょう。