メタ(Meta)の新SNS Threads(スレッズ)は、リリース後1週間で登録ユーザーが急増。ライバルのTwitterからトラフィックを奪うかたちで成長している。Twitterにとっては手痛い打撃だろう。

新SNSの台頭に期待が高まるなか、米DIGIDAYはThreadsの今後の見通しについて、ユーザー、エンゲージメント、収益化の観点から取材し、以下にまとめた。

開始5日で登録者数1億人を突破



Threadsは既存のソーシャルメディアプラットフォーム中、最速の成長を遂げつつあるといっていい。その勢いは、ユーザー数拡大のペースがもっとも早いとされたTikTokをも凌ぐ。

メタのマーク・ザッカーバーグCEOは7月10日、「この週末にThreadsの登録ユーザーが1億人を突破した」と、自身のThreadsアカウントへの投稿で明らかにした。新規登録の大半が自然増で、プロモーションもまだ実施していないにもかかわらず、アプリ公開後わずか5日間で登録者数がそれだけ伸びたという。

ThreadsがGoogleの「Play Store」とAppleの「App Store」でダウンロード可能になったのは7月5日。ザッカ―バーグ氏の翌6日の投稿によると、登録者数はサービス開始後2時間の時点では200万人だった。

ユーザー獲得に要した時間で比較してみよう。データプラットフォームのスタティスタ(Statista)によると、ThreadsのライバルであるTwitterの場合、100万ユーザー達成に2年かかった。インスタグラムは2カ月半、Facebookは10カ月で100万ユーザーに達した。アプリ公開後17年が経つTwitterは2022年第2四半期決算で、収益化可能な月間アクティブユーザー数2億3780万を記録している。すでに1億ユーザーを突破したThreadsがこのペースで成長を続ければ、Twitterを超えるユーザー基盤を獲得する日もそう遠くないだろう。

どんなブランドでも、ソーシャルメディアの公式アカウント開設後、マーケティングに努力を傾注したとしても、1週間以内に大量のフォロワーを獲得するのは難しい。しかし、メタ傘下のThreadsがそれを可能にした。ユーザーは自身のインスタグラムのアカウントから情報を引き継ぎ、インスタグラムでフォローしている全アカウントをThreadsでもフォローできる仕組みで、ブランドを含むユーザーアカウントの認知度がフォロワー増にひと役かっているとはいえ、両アプリ間のスムーズな連携がユーザー登録を促しているのはたしかだ。

インフルエンサーエージェンシーのゴートエージェンシー(The Goat Agency)で戦略部門長を務めるジェイゴ・シャーマン氏が指摘するように、メタ運営のThreadsだからこそ、ユーザー登録プロセスが容易になったといえる。

Threadsに乗り換える可能性



新規公開されたばかりのソーシャルメディアプラットフォームは、一般にユーザーのエンゲージメントが高い。新SNSの台頭に期待するとともに、乗り遅れたくないという思いにかられて利用を始める人々が多いためだろう。Clubhouse(クラブハウス)も、BeReal(ビーリアル)もそうだった。同様の現象がいま、Threadsでも起きている。

過去8カ月間、Twitterの迷走に伴い大きな混乱が起きるなか、Twitterと似通った機能を有するThreadsが登場し、多くの消費者やマーケターが、新たなソーシャルメディアプラットフォームの可能性に目を向けるようになった。実際、市場調査会社のイプソス(IPSOS)がThreadsのサービス開始直後の7月6日から7日にかけて実施した世論調査によると、米国在住のTwitterユーザーの半数近く(46%)が「Threadsに乗り換える可能性がある」と回答した。

「脱Twitterを望むブランドのマーケターは、Threadsに期待感を抱いている。動画制作コストの低減とコンテンツ戦略の多様化を通じて、Z世代の消費者に訴求するチャンスとみているのだ」と、モバイルとデジタルメディアに強みを持つデザイン会社であるデザイニット(Designit)のソーシャルメディア部門を率いるマイケル・ハーディング氏は語る。

Threadsのフィードには5分までの長さの動画を投稿できるが、Twitterのタイムラインに投稿可能な動画は最長2分20秒にすぎない。ハーディング氏の発言は的を射ているかもしれない。

エンゲージメントを求めるならThreads



ウェブ開発サービスのウェブサイトプラネット(Website Planet)がTwitterとThreads両方のアカウントを持つ30ブランドを比較した調査によると、エンゲージメント率に関してはいまのところ、Threadsに軍配が上がっているようだ。

パブリッシャー各社のSNSアカウント状況をみてみると、CNNの場合、調査実施時点のフォロワー数はTwitterが6150万、Threadsが32万9000だった。しかし同社のTwitterアカウントに投稿された「いいね数」がわずか168だったのに対し、Threadsのいいね数は717に上っていた。ロイター(Reuters)の場合も同様で、2570万フォロワーのTwitterアカウントへのいいね数が32だったのに対し、16万5000フォロワーのThreadsアカウントへのいいね数が209という結果だった。さらに、Twitterで1490万、Threadsで78万7000フォロワーを有するヴォーグ誌(Vogue Magazine)も、Twitterのいいね数4075に対し、Threadsでは6477のいいね数を獲得している。

ウェブサイトプラネットによれば、調査対象となった30ブランドのうち87%で、ThreadsアカウントのほうがTwitterアカウントより高いエンゲージメントを記録しており、獲得したいいね数は平均で、ThreadsがTwitterの8倍に達している。

「エンゲージメント率では現在、明らかにThreadsが上回っている」とシャーマン氏は言う。「いまのThreadsはTikTokの黎明期を思わせる。当時、TikTok向けコンテンツ作成者より登録ユーザーのほうが多かったため、各種投稿へのエンゲージメント率が高まった」。

デジタルマーケティングエージェンシーであるスパロマーケティング(Sparo Marketing)の創業者兼CEOのモーリー・ロペス氏は、Threads利用の初期段階では、大半のブランドがTwitterと同様のコンテンツ戦略をとる可能性が高いと予想する。Threadsにはまだ広告が導入されていないため、ブランド各社はオーディエンスとの真の意味でのエンゲージメントを確立すべく、しかるべき施策を打つ必要に迫られる。

収益の見通しは



マーケター目線でもブランド目線でも、ソーシャルメディアにおけるオーディエンス基盤の構築とエンゲージメントの拡大は望ましい。しかし、もっとも重要なのは、広告を通じた収益化が可能かどうかだ。一方、2023年第1四半期に前年比7%増の売上高を計上したメタにとっては、Threadsの貢献でさらなる上積みが見込めるか否かが、最大の関心事にちがいない。専門家の予想が正しければ、Threadsはメタに大きな収益増をもたらすだろう。

一部のメディアでは、エバーコアISI(Evercore ISI)のアナリストの予想を引用して、Threadsが今後2年間で年間80億ドル(約1兆1000億円)の収益を生み出す可能性があると報じている。

すでにThreadsのプラットフォーム上で実験的施策を展開中のブランド各社とマーケターは、いつ広告フォーマットが実装されるか、早く知りたいところだろう。しかしメタは、広告導入時期について口を閉ざしている。アクシオス(Axios)の記事によると、「Threadsが広告を導入するのは、ユーザー基盤が一定の必要量に達してからではないか」という。一定の必要量とは具体的に何人を指すのか、米DIGIDAYはメタにコメントを求めたが、回答は得られなかった。

広告サービス開始のタイミングは、メタの戦略的な判断によるのかもしれない。同社はこれまで、アプリを導入するたび、ファンとなったユーザーが完全に定着して初めて、ホーム画面のフィードに広告を表示するという段階を踏んできた。

「広告は人々の注目を集めてこそ、意味がある」とシャーマン氏は言う。「注目度の低い場所に出稿しても無駄で、メタとしてはユーザーがアプリに慣れ、コンテンツ閲覧時間がある程度まで増えるのを待ってから、広告を導入したいのだろう」。

[原文:Monumental early user growth shows what might be next for Meta’s Threads]

Krystal Scanlon(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)