「家が欲しくてもなかなか買えない人」に共通する傾向とは?(写真:polkadot/PIXTA)

人生の3大支出の1つとされる「マイホーム」。購入するには決して小さくない決意が必要ですが、それだけに「買いたい」と思いつつも「買えない」人もいるようです。

住友不動産販売で営業マンとして働いた経験を持つ、吉本興業所属の芸人、ぺんとはうすの世良光治さんの書籍『住宅購入で成功する人、大失敗する人 元大手不動産トップ営業マンの「不動産芸人」だけが知っている』より一部抜粋、再構成してお届けします。

家が買えない代表的な4つのタイプ

家を買うのに興味がない人は若い世代を中心に確かにいます。一方で家を買いたい人も、若い世代も含めてもちろんたくさんいます。では、最初から買う気がない人は別として、欲しくてもなかなか買えない人はどんなタイプなのか?

ここで、僕が不動産営業の現場でよく目にする「家が買えないタイプ」は次の4つ。

【タイプ1】物事を目先の損得で考える
【タイプ2】頭で考え過ぎて疑り深い 
【タイプ3】物事を長期で考えられず俯瞰(ふかん)できない
【タイプ4】借りるより買うほうがすごく高いと思い込んでいる

それぞれ解説していきましょう。

【タイプ1】物事を目先の損得で考える

この目先の損得で考えるタイプは、物件の価格以外に、手数料や印紙代等さまざまな諸費用までかかってくることでウンザリしてしまうような方です。ですから建材も少しでも予想以上に高くなろうものなら、「買うの、やーめた」となってしまうことも。

でもこんな方にこそ、これからお伝えすることを一度聞いてほしいのです。

建物がそれなりの価格になるには、それなりのメリットがあります。まずは建物自体が頑丈であること。それなりのお金をかけて造られた建物であれば、内装や外壁はちょっとやそっとでは傷まず、災害にも耐える力があるといえるでしょう。

もちろん、耐震性などには一定の基準があるため、どれだけ安い住宅でもその最低基準をクリアしていることが当然にはなるのですが、値段に応じたクオリティの差が出ることは実際にあります。

さらにいうと、ケースバイケースなのは前提の上なので慎重にお伝えしないといけないのですが、分譲住宅は賃貸住宅よりも設備で質の高いものを使う傾向にもあると思います。

「分譲賃貸」というキャッチコピーが存在するように、元から賃貸の目的で造られた建物よりも、購入してもらうために造られた建物のほうが品質が良いことが多いのも確かだと思うからです。

建築するときにより多くのお金がかかった物件ほど、造りそのもののクオリティが高いことが多いです。毎日生活する家が、造りも使い勝手も吟味された家であるかどうか。これは、生活のクオリティに直結していくと僕は考えます。確かに購入の場合は、賃貸に比べると初期費用が高くなることも多いです。しかし、それらは後ほど紹介する諸費用ローンという方法で、安い金利で銀行から借り入れてしまうことも可能です。

目先だけで考えると割高に感じるかもしれませんが、高いは高いなりに長期的に見ればメリットがたくさんあるのです。

【タイプ2】頭で考え過ぎて疑り深い 

インターネットの普及で特に変わったことは、手軽に情報を検索できるようになったこと。ネット前の世界では、必要な情報は本を買うか、図書館で調べるか、役所に行って質問するなどのアナログな方法しかありませんでした。

ただそれが、情報過多という困った事態も引き起こしてしまいます。「家を買いたい!」と思うと、高額がゆえにいつも以上に熱心に調べるでしょうが、調べているうちに矛盾した情報に当たってしまうことも。どの情報を信じていいか混乱してしまいます。すると「この情報は大丈夫か??」と深掘りし……と、さらに時間を費やすことに。これが決断を妨げる大きな原因となります。

どんな物件にも長所と短所がある

そんな人に対するアドバイスは、「物事に完璧はない」ということ。どんな物件にも長所と短所があります。また、「Aさんにはよくても、うちには当てはまらない」、そんなケースもあるでしょう。

その際ポイントとなるのは、自分もしくは我が家は、何が一番大切なのかを決めておくこと。「浴室が広い」「緑が多い」「大型車が停められる」「嫌いな上司の家から遠い」などから、選んでいくのです。

この重視ポイントを考える際のコツは、“結論”は出さないこと。

というのも、1つに絞ってしまうと選択の範囲が狭まってしまうからです。どんな物件があるかわからない状態では、重要ポイントは複数挙げておき、“仮の”優先順位をつけておくくらいのゆるさがちょうどいいです。

それと物件を複数見ていくうちに、最初は「駅から徒歩5分以内」とこだわっていたのが、「この家、広くて快適! 駅から徒歩15分だけど、まあいっか」とか、実物を見るうちに優先順位も案外変わってくることも往々にしてあるからです。

そもそも、なのですが、こんなことを言っては夢を壊すことになるかもしれないのですけど、そんなに物件を見ていない段階での理想の物件が、実際に住んでみての理想となるかどうかは、わからないところもあるのです。ご近所の環境や朝夕の交通事情など、住んでみて初めてわかることもあります。

あまりにも理想の住まいにこだわって厳選して購入したつもりでも、「ちょっと違ったかな」という場合も多々あります。なので、僕は、ほどほどに理想に沿っている物件こそ、現実的に手に入れられる中ではイチオシではないかなと考えています。

【タイプ3】物事を長期で考えられず俯瞰できない

賃貸住宅なら、「気に入らなかったり困ったりしたら、引っ越せばよい」という気楽さがある。これもよく耳にします。一方で購入すると、なかなか身動きができなくなる恐怖がある、それもわかります。ただし、次のように考えることだってできます。

家を買うのは時間もお金もかかりますし、手間のかかる作業です。でもそれを乗り越えてきたこともあり、ご近所さんとは揉めたくない気持ちは、賃貸住まいの時よりも強いはずです。同じことを考えているご近所さんだって多いでしょう。すると、お互いに迷惑を掛けないようにしようという気持ちが生まれやすいのではないかと思います。結果として、長く住めることにもつながるでしょう。

また、災害時の備蓄を町内会が持っていたり、コミュニティができていたりと、持ち家の場合は地域の支えも期待できます。災害大国ニッポンに住む以上、防災面のリスクも考えたいものです。

【タイプ4】借りるより買うほうがすごく高いと思い込んでいる

僕が「『衣食住』の『住』の部分が自分のものになっているのは、すごく安心しますよ」とお伝えしても、「そんなの精神論じゃないか」と反論してこられる方も多いです。

思い込みを外してみると、選択肢が広がる

精神論というか思い込みという点では、 頭から「自分は家なんて買えない」と思っていらっしゃる方がたくさんいます。実際には、そんなに収入が多くなくても住宅ローンの審査は通ることが多いのに……。今の低金利を考えたら、賃貸で住むより買ったほうが月々のランニングコスト自体は安いことがほとんどです。

賃貸に住んでいる方が、「うちの家賃が仮に月々のローンの額だったら、幾らぐらいの物件が買えるだろう」とシミュレーションしたら、想像以上にいい物件に住めることがわかりました。このような話は時々聞きます。賃貸と並行して売買も探してみると「あれ? 買っちゃったほうがいい物件がある」と気付く方も、たくさんいらっしゃいます。「自分は賃貸じゃないと厳しい」という思い込みを外してみると、思いのほか選択肢が広がることは往々にしてあるのです。

先日マンションを購入されたお客さまは、月々のローンが約9万円だそうですが、同じエリアの同グレードのマンションが、月の賃料17万円で出ていたそうで、「賃貸だと2倍近く毎月払うんじゃん……。しかも最後は自分のものにならないし。買って得した!」と、にんまりされていました。資産になるとか、心の充足とかを考えなくても、住むことに費やすランニングコストは、圧倒的にマイホーム購入が勝つことはよくあります。

なぜこのような逆転とも思える現象が起こるのでしょうか。僕は現在の超低金利政策が関係していると考えています。

住宅ローンは変動金利になるとかなり低く、auじぶん銀行「住宅ローン 全期間引下げプラン」ですと0.289%(2023年4月11日現在)。ちなみに、投資用物件の金利は3〜4%もザラ。賃貸住宅は実際に住むのと投資用とででも、こんなに違います。

超低金利政策の現在、住まいは、借りるより買ったほうがお得なわけです。

家庭内の合意も大切だ

また精神論の部分を出して恐縮ですが、マイホーム購入はほとんどの人にとって人生で一番大きい買い物になるはずです。何千万円という見たこともない金額を借金して、35年とかでローン組んで買う形になります。最初の決意が強ければ買うことができるし、しっかりと前に進んでいけます。


しかし多くの人にとってマイホーム購入は、初めての体験であるがゆえに尻込みして、ついつい「あと5件見てから」「もっと良い物件があるかもしれない」と思って、決意を先送りしてしまいがちです。

ここで一つアドバイスを。自分で「ちょっといいかも?」と思った物件は、他の人も「いいな!」と思っています。ここで決められるかどうか。チャンスの前髪をつかめるのは、覚悟を決めている人だけだと僕は思います。

もう一つ大切なのは、家庭内の決意というか、家族の合意というかが、同じ方向を見ているか。このような気持ちの統一も大事かな、と思っています。

僕は、お子さんがいらっしゃる家庭に関しては、子どもに衣食住で迷惑を掛けないでおこうと思うのであれば、なおさら家を買うべきだと思っています。いざという時には、子どもに資産として残せますし。

逆に、奥さんがあまり積極的ではない場合は「自分に万が一のことがあっても、家があればみんなが安心だから」とお伝えしましょう。住宅ローンを組めば“団信(団体信用生命保険)”というとても強力な保険にも入ることができます。

ご夫婦のどちらもある程度気に入られた物件でも、最後のところで意見が割れる場合があります。僕は両方の気持ちがわかりますので、「そうですよね、ご主人」「そうですよね、奥さん」とお二人のお話をそれぞれじっくり伺いました。

最後は、「ご主人にとって100点でもないし、奥さんがおっしゃってたこういう部分は含まれてると思うので、これ以上のものは、なかなかなくって」とお伝えすることで、成約していただくことが多いです。100%理想通りの物件は、多分ないと思います。7割欲しい要素が備わっていたら、だいぶ優秀なほう。即買ったほうがよいでしょう。

(ぺんとはうす世良光治 : 吉本興業所属の「不動産芸人」兼フリーランスの不動産営業マン)