ソウル市内で行われた韓国軍・女性軍創設記念行事(イメージ、写真・ソウル新聞)

韓国の若者の間では、軍入隊を待機中の男性と就学中の女性との間で、男女による意識など「ジェンダー」による対立を最も意識していることがわかった。

2023年5月27日、韓国・女性家族省と中央銀行・韓国銀行が合同で研究した報告書「2030年・若年層のジェンダー対立における経済的要因の分析」によれば、青年男女のジェンダー間の対立をどう考えているかは、それぞれが普段どのような生活をしているかによって変わっているという。

女性、20代、未婚者で対立意識が高い

この研究は、2020年10〜11月に女性家族省が行った「若者のライフコースと将来設計の実態調査」に応じた20〜39歳の男女の回答8583件を基に、ジェンダー間の対立意識を調査している。

ジェンダー間の対立を最も強く感じる場合を1、反対の場合を0として数値化した。その結果、男性(0.39)より女性(0.82)、30代(0.50)より20代(0.68)、既婚者(0.46)より未婚者(0.64)、子どものいる人(0.46)より子どものいない人(0.62)のジェンダー間の対立意識が高い傾向にあった。

女性の場合、「大学など学校内」でのジェンダー対立の意識が最も高く(0.97)、続いて「社会生活の中」(0.81)、「どんなときでも」(0.75)、「家事労働中」(0.64)の順で高く現れた。

男性は、「軍入隊の待機期間」(0.55)、「どんなときでも」(0.51)、「学校内」(0.45)、「社会生活の中」(0.36)の順でジェンダー対立の意識が高まったと回答している。

このようなジェンダー間の対立意識は、「女性にも徴兵制が導入されるべきかどうか」という問題に発展した。韓国で、女性徴兵制は兵力が減少しているために検討すべきというだけの問題ではない。男性と女性、とくに20代にとっては、ジェンダー対立の延長線上に置かれる問題だ。

現在、韓国・国防省は女性徴兵制導入や軍服務期間の拡大、代替服務(軍以外の公共機関などに服務すること)廃止などを検討していない。女性徴兵制はまだ非現実的だというのが大方の見方であり世論でもある。

ジェンダー対立は「女性徴兵制」にも

すでに「男性のみに兵役義務を課する兵役法3条1項が性差別だ」という憲法訴訟がこれまで2010、2011、2014年の3回提起されている。しかし、いずれも兵役法の条項はすべて合憲との判決が出ている。女性も徴兵制に導入されるべきかどうかという点には社会的な合意もなく、また、関連した研究も十分に行われていない。

当時、憲法裁判所は「国防の義務は、兵役法によって軍務に従事するなどの直接的な兵力形成義務のみを指すのではない。意識面での兵力形成および、兵力形成後に軍の作戦命令に服従して協力する義務も含まれている」と述べた。

また「男性は(女性より)戦闘により適合した身体的能力を持っており、身体的能力が優れる女性も生理的な特性や妊娠・出産などで、訓練や戦闘関連業務に支障が出ることもある。最適な戦闘力確保のために、男性だけを兵役義務者と定めたことを恣意的と見ることは難しい」と付け加えた。

2023年4月、与党「国民の力」議員の申元植(シン・ウォンシク)氏と、兵務庁、星友会(韓国の予備役将校の団体)が共同開催した「人口絶壁時代(少子高齢化社会)の兵役制度発展フォーラム」でも似たような問題が議論された。

ここでは、女性徴兵制を検討すべきだと、その必要性が議論されたが、兵務庁は「軍隊服務期間の延長、女性徴兵制の必要性、代替服務廃止などと関連する多様な意見が提起されたが、政府の公式の立場はなく、検討されたことがない」と明らかにしている。

女性のジェンダー対立の意識は、出産にもネガティブな影響を与えていた。

ジェンダー間の対立意識は、個人の勤労所得にプラスの影響を与えておらず、婚姻率にも影響を与えていない。しかし、出産についての考え方には違いがあった。男性の場合は影響を受けないが、女性にはネガティブな影響を及ぼしていることがわかった。

最近のジェンダー間の対立は、産業構造の変化や、就職市場に本格的に参入している1990年代生まれの人たちの独特な特性が重なり、より大きくなっている。

「男女は平等」という意識は向上している

重厚長大産業が衰退し、今まで男性たちに独占されていた優良な働き口が減少し、就職をめぐって男女の対立が激化した。ただ、ジェンダー間の対立は深まっているにもかかわらず、国民が感じる男女平等の意識は以前よりも高まっている。

研究者らが2016年と2021年に男女平等の意識調査として、15歳以上の国民(2016年7399人、2021年8358人)を対象に、男女平等について9段階で尋ねた結果、「とても不平等だ」との回答は減少し(「男性にとても不平等だ」0.69%→0.57%、「女性にとても不平等だ」2.37%→1.89%)、「とても平等だ」の回答は22.07%から35.25%と高まった。

5点を「とても平等」、1点を「女性にとても不平等」、9点を「男性にとても不平等」と感じると設定した意識調査も行った。

男女が平等になったという意識の変化は、とくに30代以下の女性に目立ってきた。2016年は20代以下の女性の11.4%が韓国社会は男女平等だと回答したが、この比率は5年後に倍以上に増え26.2%になった。

研究者によれば、「過去と比べ、ジェンダーでの対立が深刻だという社会的な雰囲気がある。しかし実際には、一方の性別が不平等だという考えよりも、平等だという意識が強くなっている」とみている。

(ソウル新聞)