9割以上のメタバース事業が失敗!? 企業が陥った「事業化の落とし穴」と成功へのカギ
●暗雲垂れ込めるメタバース事業
メタバースの雲行きが怪しくなっています。
6月9日にNTTデータグループのクニエが公開した「メタバースビジネス
調査レポート」によれば、
メタバースをビジネスとして事業化した企業のうち、実に91.9%が、
「事業化に向けた検討が停滞している」
「検討自体が中止された」
このように語り、事業化に失敗していると回答しました。
日本の企業のみならず、メタバース事業を全面に押し出したメタ(元・フェイスブック)もメタバース事業の進展に苦しんでおり、
2022年11月に1万人規模の従業員削減計画を発表し、2023年4月には実際に4000人の技術系社員を解雇しています。
2022年の東京ゲームショーで巨大なメタバース専用ブースを構えるメタ
●メタバースのメリットを明確に打ち出せない企業
そもそも、みなさんはメタバースに興味があるでしょうか。
恐らく多くの人々がその言葉こそ知っているものの、メタバースがどんな世界を創るのか、メタバースがどう便利に活用されるのかを想像できないのではないでしょうか。
かくいう筆者でさえ、メタバースによって何が便利になるのかを分かりやすく答えることができません。
例えばオンライン会議やオンラインショッピングであれば、パソコンやスマートフォンでも十分可能です。
わざわざ重たいVRゴーグルを被り、バーチャル空間に作られた街を歩いてアバターで会話をしながらショッピングをするメリットがありません。
むしろデメリットばかりが頭に思い浮かんでしまいます。
クニエによる調査でも「事業化に失敗するメタバースビジネスの特徴」として、
・既存ビジネスの延長線上に位置づけてしまう
・メタバースである合理性が説明できない
・ターゲットや課題・ニーズの明確化が不十分
このような点が挙げられており(他にも複数の理由が挙げられている)、メタバースを展開したい企業側の企画や事業プロセスそのものに問題があった点を指摘しています。
企画段階で従来のビジネスとの差別化やメタバースならではのメリットを打ち出せていないのが最大の敗因だろう
●メタバース成功のカギは「差別化」にある
メタバースの数少ない成功例の1つとしては、KDDIによるバーチャルハロウィンイベントが挙げられるかと思います。
仮想空間上に渋谷の街を再現した「バーチャル渋谷」を作り、そこで音楽ライブやミニゲーム大会、さらにトークショーなどを開催し、毎年数十万人規模のユーザーを集めて年々規模が大きくなっています。
このイベントが成功した背景には、
・自宅にいながらハロウィンイベントに参加できる
(コロナ禍でもハロウィンイベントができた)
・期間限定であるために集客のための宣伝が打ちやすく効果が高い
・期間限定であるために数多くのコンテンツを盛り込むことができる
(長期運用を考えた場合は費用対効果が非常に悪い)
・通常であればなかなか楽しめない音楽ライブやトークショーの同時体験が手軽にできる
・VRゴーグルなしでも楽しめる
このように、仮想空間でなければ体験できない要素を大量に盛り込んだ上で手軽に参加できたことに加え、リアルのイベントとの差別化として、
・地方の人でも参加しやすい
・移動時間や交通費などの負担がない
・来場者が多すぎることによる入場待ちやブースでの順番待ちがほぼない
(どのイベントもスムーズに参加できる)
・時間の限られたコンテンツ以外であればリアルイベントよりも時間の制限が緩い
(場合によっては24時間参加可能)
・リアルイベントでは必ず発生するゴミの問題や騒音問題、交通手段の混雑などのデメリットが発生しない
・痴漢や窃盗といった犯罪が発生しない
(学生や女性でも安心して気軽に参加できる)
このような数多くのメリットが際立ったことが、成功の大きな要因だったと考えられます。
パソコンやスマートフォンでは体験できない価値を生み出せたことが成功に繋がった
東京ゲームショーのようなリアルイベントは、地方の人が参加しづらく入場者が多く十分に楽しめないなどのデメリットがある
●正念場に立たされる2023年後半
6月にはAppleがMR(複合現実)デバイス「Apple Vision Pro」を発表するなど、完全な仮想空間を利用するのではなく現実世界をデジタルコンテンツで拡張していくアイデアが活発化しており、
メタバースの立場やメリットが相対的に希薄化しています。
厳密に言えば、メタバースは概念としてMR技術も内包しています(実際にメタが構想としてPRしている)。
しかしながら、一般的な認識や認知のレベルでは「メタバース=仮想空間」のように捉えられていることも、立場を苦しくしている要因の1つです。
メタバースに生き残る道はあるのでしょうか。
メタバースは私たちに「メタバースだからこそできるメリット」をどこまで提示できるでしょうか。
各企業は今、大きな正念場に立たされています。
執筆 秋吉 健
メタバースの雲行きが怪しくなっています。
6月9日にNTTデータグループのクニエが公開した「メタバースビジネス
調査レポート」によれば、
メタバースをビジネスとして事業化した企業のうち、実に91.9%が、
「事業化に向けた検討が停滞している」
「検討自体が中止された」
このように語り、事業化に失敗していると回答しました。
日本の企業のみならず、メタバース事業を全面に押し出したメタ(元・フェイスブック)もメタバース事業の進展に苦しんでおり、
2022年11月に1万人規模の従業員削減計画を発表し、2023年4月には実際に4000人の技術系社員を解雇しています。
2022年の東京ゲームショーで巨大なメタバース専用ブースを構えるメタ
●メタバースのメリットを明確に打ち出せない企業
そもそも、みなさんはメタバースに興味があるでしょうか。
恐らく多くの人々がその言葉こそ知っているものの、メタバースがどんな世界を創るのか、メタバースがどう便利に活用されるのかを想像できないのではないでしょうか。
かくいう筆者でさえ、メタバースによって何が便利になるのかを分かりやすく答えることができません。
例えばオンライン会議やオンラインショッピングであれば、パソコンやスマートフォンでも十分可能です。
わざわざ重たいVRゴーグルを被り、バーチャル空間に作られた街を歩いてアバターで会話をしながらショッピングをするメリットがありません。
むしろデメリットばかりが頭に思い浮かんでしまいます。
クニエによる調査でも「事業化に失敗するメタバースビジネスの特徴」として、
・既存ビジネスの延長線上に位置づけてしまう
・メタバースである合理性が説明できない
・ターゲットや課題・ニーズの明確化が不十分
このような点が挙げられており(他にも複数の理由が挙げられている)、メタバースを展開したい企業側の企画や事業プロセスそのものに問題があった点を指摘しています。
企画段階で従来のビジネスとの差別化やメタバースならではのメリットを打ち出せていないのが最大の敗因だろう
●メタバース成功のカギは「差別化」にある
メタバースの数少ない成功例の1つとしては、KDDIによるバーチャルハロウィンイベントが挙げられるかと思います。
仮想空間上に渋谷の街を再現した「バーチャル渋谷」を作り、そこで音楽ライブやミニゲーム大会、さらにトークショーなどを開催し、毎年数十万人規模のユーザーを集めて年々規模が大きくなっています。
このイベントが成功した背景には、
・自宅にいながらハロウィンイベントに参加できる
(コロナ禍でもハロウィンイベントができた)
・期間限定であるために集客のための宣伝が打ちやすく効果が高い
・期間限定であるために数多くのコンテンツを盛り込むことができる
(長期運用を考えた場合は費用対効果が非常に悪い)
・通常であればなかなか楽しめない音楽ライブやトークショーの同時体験が手軽にできる
・VRゴーグルなしでも楽しめる
このように、仮想空間でなければ体験できない要素を大量に盛り込んだ上で手軽に参加できたことに加え、リアルのイベントとの差別化として、
・地方の人でも参加しやすい
・移動時間や交通費などの負担がない
・来場者が多すぎることによる入場待ちやブースでの順番待ちがほぼない
(どのイベントもスムーズに参加できる)
・時間の限られたコンテンツ以外であればリアルイベントよりも時間の制限が緩い
(場合によっては24時間参加可能)
・リアルイベントでは必ず発生するゴミの問題や騒音問題、交通手段の混雑などのデメリットが発生しない
・痴漢や窃盗といった犯罪が発生しない
(学生や女性でも安心して気軽に参加できる)
このような数多くのメリットが際立ったことが、成功の大きな要因だったと考えられます。
パソコンやスマートフォンでは体験できない価値を生み出せたことが成功に繋がった
東京ゲームショーのようなリアルイベントは、地方の人が参加しづらく入場者が多く十分に楽しめないなどのデメリットがある
●正念場に立たされる2023年後半
6月にはAppleがMR(複合現実)デバイス「Apple Vision Pro」を発表するなど、完全な仮想空間を利用するのではなく現実世界をデジタルコンテンツで拡張していくアイデアが活発化しており、
メタバースの立場やメリットが相対的に希薄化しています。
厳密に言えば、メタバースは概念としてMR技術も内包しています(実際にメタが構想としてPRしている)。
しかしながら、一般的な認識や認知のレベルでは「メタバース=仮想空間」のように捉えられていることも、立場を苦しくしている要因の1つです。
メタバースに生き残る道はあるのでしょうか。
メタバースは私たちに「メタバースだからこそできるメリット」をどこまで提示できるでしょうか。
各企業は今、大きな正念場に立たされています。
執筆 秋吉 健