ヤクルト&楽天が低迷、大苦戦のわけ 飯田哲也が語る浮上のキーマン「村上宗隆はバットの出方が明らかに違う」
リーグ3連覇を狙う高津臣吾監督率いるヤクルト、石井一久監督となって3年目を迎える楽天が、ここまで(6月15日現在)ともにリーグ5位と苦戦を強いられている。その理由はどこにあるのか。現役時代、ヤクルト、楽天に在籍した飯田哲也氏に両チームの現状を検証してもらった。
飯田哲也氏が浮上のキーマンに挙げる楽天・浅村栄斗(写真左)とヤクルト・村上宗隆
── 現在、ヤクルトのチーム防御率は3.73でリーグ5位と、投手陣が苦しんでいる印象があります。
飯田 奥川恭伸の不在と、高橋奎二が戦線離脱したことが痛いですね。小川泰弘とサイスニードをはじめとする外国人、ベテランの石川雅規に頼っているのが現状です。ドラフト1位ルーキーの吉村貢司郎も先発投手として試合をつくっているのですが、打線との兼ね合いもあって勝ち星がついてきていません。
── 中継ぎ、抑えのリリーフ陣は豊富ですが、昨年クローザーとして38セーブを挙げたスコット・マクガフがメジャーに復帰しました。
飯田 清水昇のクローザー案もあったのでしょうが、彼は「8回の男」としてホールドの日本記録もつくり、ポジションを確立しています。高津臣吾監督も大事な8回をしっかり抑えたいという思いがあったのでしょう。
今シーズン抑えを務めている田口麗斗は、150キロを超すストレートや絶対的な変化球があるというタイプではありません。しかし、高津監督は彼の気概と四球が少ないという点を評価したのでしょう。
── ヤクルトは本拠地の神宮球場が狭いということもあって、「打線が投手を育てる」のが伝統的なチームカラーです。あらためて、昨年は三冠王に輝いた村上宗隆選手に頼っていたことを感じます。
飯田 昨年は1番・塩見泰隆、4番・村上宗隆が打線の軸としてどっしりと構えていました。塩見はコンディション不良が続いており、村上はWBCから帰国後もいまひとつ調子が戻っていません。「WBCの影響が原因では......」と言われていますが、岡本和真(巨人)にしても牧秀悟(DeNA)にしても、しっかり結果を出しています。村上は昨シーズンと比べて、明らかにタイミングやバットの出方が違います。あと、昨年ブレイクした長岡秀樹の打ち方が雑になっているように思います。
── 5月に12連敗を喫し、27日には自力Vが消滅しました。チーム浮上の条件は何だと思いますか。
飯田 打順とかスタメンを見ていても、「高津監督は苦労しているな......」と感じます。とくに1、2番を固定できていません。幸い、ヤクルトはホセ・オスナ、ドミンゴ・サンタナといった外国人打者が他球団に比べて安定した成績を残しています。また捕手の中村悠平はWBCで世界一を経験して、リードに自信を持っているように感じます。この3人が好調なうちに塩見と村上の復調が、チーム浮上の条件だと見ています。
【主力投手の高齢化と浅村栄斗頼みの打線】── 昨シーズンの楽天は、"最大貯金18"から最終的に借金2。その悪い流れを今シーズンも断ちきれずにいます。
飯田 春季キャンプの時、石井一久監督は「若手が出てこない」と嘆いていました。その心配がシーズンに入っても解消できていません。昨年のチーム防御率はリーグ最下位。投手陣は高齢化し、今年39歳の岸孝之、35歳の田中将大、33歳の則本昂大が先発三本柱です。圧倒的な投手がいなくなってきました。そこに3年目の早川隆久と、ドラフト1位の荘司康誠がどこまで食い込めるかという構図でした。
早川は5月終盤まで防御率トップを走っていましたが、投打がかみ合わず勝ち星に恵まれませんでした。それは荘司も同様です。抑えには松井裕樹という絶対的なクローザーがいるだけに、打線が援護していかに彼につなげられるかが、今後のテーマになると思います。
── 得点力不足と言われていますが、昨年の得点はリーグ2位でした。
飯田 浅村栄斗が打点を挙げた試合は勝っています。逆に言えば、「浅村が打点を挙げられない試合は勝てない」ということです。昨年最多安打のタイトルを獲得し、打点王に輝いたこともある島内宏明や、中日から移籍してきた阿部寿樹もあまり打てていません。
さらにメジャー130発のマイケル・フランコが加わりましたが、額面どおりの活躍ができていません。フランコに限らずですが、近年は圧倒的な成績を残す外国人打者は見当たりません。それだけ日本の投手のレベルが上がったのかもしれません。
── 平石洋介監督が3位、三木肇監督は4位で、それぞれ1年で交代しました。石井監督は3位、4位ときて、今年は勝負の3年目です。ここから上位争いをするには何が必要だと思いますか。
飯田 若手を起用しても思うように伸びてこない。石井監督にとっては歯がゆいと思います。若手の育成には時間がかかりますし、我慢も必要になります。石井監督にとっては勝負の3年目ですし、その判断も難しいでしょうね。いずれにしても、浅村と島内が打線を引っ張っていけば、チームは乗っていけると思います。
チームの負けがこむと、選手はチームバッティングではなく個人成績に走る傾向になります。そうすると、また勝利から遠ざかる悪循環になってしまいます。とにかく今は1つでも順位を上げること。当然ながら、ヤクルトは村上、楽天は浅村が今後のチームの命運を握っています。