5月の全日本トラックで表彰台にのぼった(左から)太田りゆ、佐藤水菜、梅川風子 アジア選手権にそろって出場する

6月14日に2023アジア選手権トラック開幕

 自転車競技トラックの大陸選手権「2023アジア自転車競技選手権大会・トラック」(以下、アジア選手権)が、6月14日(水)〜19日(月)にマレーシアで開催される。アジアナンバー1を決める大会であるとともに、この大会の各種目の優勝者が8月3日(木)から開催される「2023UCI世界選手権大会トラック」(以下、世界選手権)への出場権を獲得できることもあって、注目を集めている。

 パリ五輪の出場枠を獲得するためには、国別に付与されるオリンピックポイントをより多く積み上げる必要がある。ちなみにポイントは最高位の順位にのみ付与される。つまり同じ国が1位と2位になった場合は 1位のポイントのみ与えられるというわけだ。世界選手権ではより高いポイントを獲得できるため、6月のこの大会が重要な意味を持っている。

パリ五輪に向けた日本の現在地

 パリ五輪への出場枠獲得は、各種目によって異なっている。たとえば、3人でトラック3周のタイムを競う「チームスプリント」、200mタイムトライアルの予選を経て1対1の本戦を争う「スプリント」、最大7人が順位を競う「ケイリン」では、上位選手、上位国が重なることが多いため、それを考慮した選考基準が設けられている。

 チームスプリントでは最終的なオリンピックランキングが上位8位になれば出場権を獲得できる。またその上位8か国は自動的にスプリントとケイリンの出場枠が2つずつ与えられる。さらにチームスプリントで上位8位に入らなくても、スプリントとケイリンでは、その8か国を除いた上位7位までに入れば、その種目ともう片方の種目の出場枠を1つ獲得できる。つまりスプリント、ケイリンとも1か国で最大2枠を手にできることになる。

 日本男子は6月上旬時点でチームスプリントが8位、スプリントが6位、ケイリンが8位と好位置につけている。女子についてはチームスプリントとスプリントがともに11位、ケイリンが3位と上位にいる。男女ともこのまま好成績を残していけば、出場権を獲得できるだろう。

競輪と両立する選手たち

 そしてこのアジア選手権には、自転車競技と競輪を両立する選手たちが数多く出場する。短距離男子では山粼賢人、小原佑太、寺崎浩平、中野慎詞、太田海也。短距離女子では佐藤水菜、太田りゆ、梅川風子。中距離男子では橋本英也、窪木一茂。中距離女子では内野艶和が両立する選手たちだ。ジュニア、パラサイクリングを除く派遣選手20人のうち11選手が競輪選手だが、そのほとんどが日本の主力選手であり、上位を狙える実力を持つ。

 とくに注目されるのが、男子では橋本、太田、中野、小原、女子では佐藤、梅川。彼らは今年の国際大会シリーズ「UCIトラックネーションズカップ」で好成績を収めている。ちなみに「UCIトラックネーションズカップ」は、世界選手権に次ぐ高さのポイントを獲得することができるため、世界トップクラスの選手たちがしのぎを削っている大会だ。


UCIトラックネーションズカップ第2戦でも好成績を残した太田海也 パリ五輪出場に向けて視界良好だ

 橋本は今年2月に開催された「2023UCIトラックネーションズカップ」第1戦の男子エリミネーションで金メダルを獲得。太田は同大会の男子スプリントで2位になるとともに、3月に開催された第2戦の男子ケイリンと男子チームスプリント(長迫吉拓、太田海也、小原佑太)で3位に入っている。中野は第2戦の男子ケイリンで金メダルを獲得。小原は太田とともに第2戦の男子チームスプリントの一員として3位になった。佐藤は第1戦、第2戦の女子ケイリンでともに金メダルを手にし、梅川は第1戦の女子ケイリンで3位に入っている。

前回大会は金メダル14個

 今回のアジア選手権でライバルになる国は、中国、香港、韓国あたり。中国と香港は昨年の同大会を、コロナ禍などを理由に辞退したが、中国は東京五輪女子チームスプリントで優勝し、香港は東京五輪女子スプリント銅メダルのリー・ワイジーを擁するなど、ともに実力のあるチーム。韓国は前回大会で何種目か日本を上回る成績を残した。


昨年のアジア選手権で金メダルを獲得した佐藤水菜(中央)

 それでも競輪で切磋琢磨している選手たちは互角以上に戦ってくれるはずだ。日本が前回大会で獲得した金メダル数は競輪選手を中心に14。出場した全種目でメダルを獲得するなど、圧倒的な強さを誇った。今大会でも数多くのメダルが期待されている。

 今年8月の世界選手権を含め、来年2024年4月までがパリ五輪の出場枠獲得のための選考期間となる。パリ五輪でのメダルも期待される日本代表選手たちの活躍に、今後も目が離せない。