「ディーゼルエンジンはガソリンエンジンより寿命が長い」は間違い?“車の耐久性”と誤解されがちなワケ
トラックはなぜディーゼル車が多い?
市販されている車は使用する燃料で、ガソリンエンジン車とディーゼル(軽油)エンジン車に分けられます。それぞれのエンジン特性を考慮して、使用する際に有利になるように設計されているのです。
例えば、トラックや商用バンではディーゼルエンジンを使った車が多いです。ガソリンエンジン車とディーゼルエンジン車では、何が違うのでしょう?
ガソリンエンジンとディーゼルエンジンは何が違う?
エンジンの基本的な動きは、ガソリン仕様とディーゼル仕様とで大きな違いはありません。エンジンは、吸気、圧縮、燃焼(膨張)、排気という4つの行程を繰り返して動き、動力を作り出します。
ガソリンエンジンでは、吸気行程でシリンダー内にガソリンと空気の混合気を送り、燃焼行程で点火プラグが点火し圧縮された混合気が燃焼します。
一方、4行程はガソリンエンジンと同様ですが、ディーゼルエンジンでは吸気行程で送り込まれるのは混合気ではなく空気です。
この空気を圧縮行程でガソリンエンジンの2倍に圧縮し高温にし、高温になった空気へインジェクションノズルから燃料(軽油)を噴射します。すると自然発火し燃焼ガスが発生、その圧力でピストンが下がり、排気工程へとつながっていくのです。
こうした違いから、エンジン構造はガソリンエンジンよりもディーゼルエンジンの方がシンプルです。さらに熱効率が高いため、ディーゼルエンジンは高出力で燃費に優れています。
ディーゼルエンジンの方が寿命は長い?
また、高圧に耐えられるよう頑丈に作られているのもディーゼルエンジンの特徴の一つです。そのため、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりも大きく、重くなりやすくなります。
こうした特徴から「ディーゼルエンジンはガソリンエンジンより寿命が長い」と言われることがあります。
確かに、エンジン単体でみれば、ディーゼルエンジンの方がガソリンエンジンよりも耐久性に優れています。しかし、「耐久性が高い」ことと「エンジンとしての寿命が長い」ということはイコールではありません。
エンジンの寿命が長いとは、「正常かつ適正にエンジンが動き続ける時間が長い」ということです。この点でガソリンエンジンとディーゼルエンジンを見ていくと、それぞれに合った使い方をすることが大きく影響するといえます。
ガソリンエンジンは、ディーゼルエンジンと比べると、低回転での動作をあまり苦にしません。そのため、街乗りが中心で、頻繁にストップ&ゴーを繰り返す場合には、ディーゼルエンジンよりもガソリンエンジンの方が、エンジンの寿命は長くなります。
対して、ディーゼルエンジンは熱効率が高く、大きなパワーを出すことに向いています。また、高回転を維持することで、ネックとなる煤の溜まりを少なくすることができ、出力の低下を予防することもできるのです。そのため、高速道路などで高い速度域のまま長距離走行するという場合には、ディーゼルエンジンの寿命が長くなります。
ディーゼルエンジンを搭載した大型トラックや商用1BOXで、50万km以上エンジントラブルが無く走行できるのは、こうしたディーゼルエンジンの特性を生かしているためです。
ロングライフには定期的なメンテナンスが不可欠
もちろんどちらのエンジンでも、ロングライフには定期的なメンテナンスが重要なのは言うまでもありません。
ガソリンエンジンの場合、ディーゼルエンジンよりも構造が複雑で、各部の動きが多く、故障のリスクが伴いますので、定期的な点検が大切です。
ディーゼルエンジンにも問題があります。それは、軽油を燃焼する際に発生する「煤(すす)」です。街乗りなどの低回転でエンジンが動く際に、エンジン内部に煤が溜まりやすくなり、煤が溜まった状態を長期的に放置すると部品の劣化につながるほか、エンジンの出力低下を招くことにもなります。
特に、ディーゼルエンジンの場合にはエンジンオイル交換のサイクルがガソリンエンジンに比べて早いことを知っておき、寿命を延ばすために必要なメンテナンスの機会が増えることを頭に入れておきましょう。
車の使用シーンが短距離で街乗り中心なのか、長距離で高速移動が中心なのかを見極めることで、自身にとって寿命の長いエンジンを選択することができます。それぞれの特性を知り、車を使うことで、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンともに、寿命を延ばすことができるのです。