昨今、急増する広域強盗犯罪をはじめとする凶悪な犯罪の数々。ときには、資産のみならず、人命までもが奪われる危険な事態にも発展しています。

犯罪から家族を守るために意識したいこと

ここでは、元埼玉県警捜査一課刑事の佐々木成三さんに、自分や家族を広域強盗犯罪から守るために日頃から意識すべきことを聞きました。

●近年の強盗事件が昔より「危険」な理由

――最近、広域強盗事件が多発しています。これらの事件の特徴を教えてください。

佐々木成三さん(以下、佐々木):「犯罪に対して弱い場所・人」を狙っている点です。場所については、これまで「治安がいいと思われていたエリア」が狙われがちです。治安がいい地域は住民も「この町は大丈夫だろう」、「うちが狙われるわけがない」と油断するため、対策が甘い傾向にあり、狙いやすい。

また、被害者の大半は「高齢者」です。体力的に弱い人を狙うことで、反撃されるリスクを減らし、確実に金品を盗もうという思惑を感じます。

そのほかの特徴は、プロの強盗ではなく、SNS上で募った素人の「闇バイト」が強盗を行っている点でしょう。素人の犯罪者は犯行がずさんなので、被害者の生命が危険に晒されやすいのです。

――強盗経験のない人の犯罪の方が、生命の危険度が高まる理由はなぜなのでしょうか。

佐々木:闇バイトに応募する人の多くは、お金がなくて切羽詰まった状況にあるがゆえに犯罪に手を染めます。年齢も若いため、罪を犯して捕まるリスクを真剣に考えていない。だからこそ、大胆な犯行に出るし、“どこまでやったら人が死ぬか”という加減がわからないので、やり過ぎて人の命まで奪ってしまう。その点が、従来の強盗事件に比べて、より危険だと言えます。

●個人と地域で防犯意識を高めることがいちばんの対策

――強盗事件に遭わないためにどうするべきでしょうか。

佐々木:日頃から防犯意識を高くもつことに尽きます。「日本は安全な国」という先入観をいだいている方が多いのですが、その神話は崩れ、いまはもう自分で自分の身を守らなければならない時代です。

たとえば、先に挙げた広域強盗事件の実行犯たちも、事前に家の下見に行って「この家は侵入しやすいかどうか」を見極めています。つまり、個々人がしっかり防犯対策をしておいて、犯罪者たちに「この家はきちんと対策しているから、侵入するのはリスクが高い」と思わせることが肝心なのです。

また、個人レベルの工夫だけではなく、コミュニティ全体で日頃から声かけや防犯設備などを徹底することも重要です。素人犯罪者とはいえ、彼らも捕まりたいとは思っていません。だからこそ、「このエリアは人目が多いし、防犯態勢も行き届いているから、侵入しづらいな」と思わせる工夫をしましょう。

●刻々と変わる手口について情報のアップデートを!

――広域強盗事件に加えて、「オレオレ詐欺」に代表される特殊詐欺も増加しています。だまされないために、必要なことはありますか。

佐々木:対策としては、手口に関する情報を常にアップデートすることです。特殊詐欺に遭った人の大半は、「すでに特殊詐欺の存在を知っていた」という人ばかり。存在を知っていたにもかかわらずだまされてしまう理由は、特殊詐欺の手口のアップデートに追いついていないからです。

いまだに特殊詐欺といえば、オレオレ詐欺だけだと思っている人も少なくありませんが、特殊詐欺では、次から次へと新しくて巧妙な手口が生まれています。新しい手口を知らないと、どんなしっかりした人でもついだまされてしまいます。

●警察や公務員を名乗る特殊詐欺も増加

――最近の特殊詐欺にはどんな手口があるのでしょうか。

佐々木:従来のように、親族の名前をかたって送金させようとするものだけではなく、警察や税務署、市役所職員になりすましてお金をだまし取ろうとする詐欺も増えています。

「△△警察の者です」、「〇〇市役所の職員です」などと地元の警察署や役所名を出されると、普段は冷静で理知的な人でも、「この電話は特殊詐欺だ」というアンテナが立ちづらく、気がつけば相手の思うがままにお金を振り込んでしまう。最新の手口を知らない人であればだまされてしまいますが、事前にこういう手口があるという情報を知っていれば対策はできます。

著書『一家に一冊! 産と命を守る最新防犯マニュアル』(扶桑社刊)で紹介されているような詐欺被害などをはじめ、できるだけ自発的に最新情報を入手する習慣を心がけていただきたいです!

あなたの家は大丈夫?狙われやすい家の特徴

財産と命を守る防犯対策についてご紹介します。

●侵入犯罪に遭った家の半数はカギをかけ忘れた家!

外からの侵入者は、どんな家を狙うのでしょうか? 侵入者のターゲットになりやすい家ナンバー1は、「無施錠の家」です。

警察庁のデータでは、2022年の一戸建て住宅の侵入窃盗事件の侵入手口で最も多いのは総数1万2071件のうち6187件(51.2%)である「無締まり(カギのかけ忘れなど)」。

共同住宅(3階建て以下)の場合も総数2866件のうち1475件(51.5%)と「無締まり」が1位に。共同住宅(4階建て以上)も総数1587件のうち644件(40.6%)と、ほぼ半数近くがカギのかけ忘れが原因です(警察庁公式HP「住まいる防犯110番」より)。

どんなに強固なセキュリティを設置していても、戸締まりしていなければ意味がありません。ゴミ捨てや短時間の買い物など留守時はもちろん、在宅時も玄関や2階の窓、浴室、トイレの窓の施錠を忘れないようにしましょう。

●新聞などを郵便受けにため込まない!

郵便受けの状況は、侵入者にとって留守をチェックするための重要なツール。新聞や郵便物、チラシが郵便受けにたまっていると、「この家は長期で留守をしている」とみなされて、侵入者に狙われやすくなります。

●合カギは玄関周辺に置かない!

無施錠以外にも、狙われやすい家にはいくつかの特徴があります。その一つが、合カギが玄関の周辺にある家です。玄関のカギはできるだけ持ち歩き、郵便受けや植木鉢の下などには置かないこと。敷地内であっても、合カギを家の外に置くのは避けましょう。

●足場になるモノは置かない!

脚立やポリバケツ、エアコンの室外機などを家の周辺に置いておくと、侵入時の足場にされる可能性があります。物置や雨どいなどが2階への足場になっている場合は、工作物を設置して2階に侵入できないように工夫を。