いつかやらなければと思いながらも、先延ばしにしてしまいがちな「実家の片づけ」。親がなかなか片づけに納得してくれず、思うように進まないという人も多いのではないでしょうか。現在50代、築50年越えの団地でのひとり暮らしを楽しんでいるブロガーのきんのさんも、これまで片づけを拒んでいた80代母の部屋の片づけを進めているそう。実際に親と一緒に片づけをしてみて感じた、メリットとデメリットを教えてもらいました。

80代親と一緒に実家を片づけるメリット・デメリット

50代、自分の老化もさることながら「あれ、こんなだったかな?」と、実家に帰るたびに親に対してちょっとした違和感を感じ始めました。親の老化は80代を過ぎた頃から急激に進み、体力や認知能力がガクッと落ちていきました。

【写真】80代母の引き出しから出てきた大量の薬

今までは「自分でやるからほっといて」と言われていた実家の片づけ、手を出すともめるので放置していましたが、このまま「先送りしていていいの?」と不安に思うようにもなりました。同時期に介護の問題も浮上したことで、親子で実家の片づけを始めることにしました。

そもそも片づけを拒んでいた親との共同作業は想像よりも大変。「親がいなくなってから片づけた方がラク」と何度も思いました。親亡き後は業者に依頼するという選択肢もありだと思います。

それでも尚、一緒に片づけ始めてよかったと思うことは多いです。まだ片づけ途中ですが、親子で片づけるメリット・デメリットなどまとめてみました。

想像以上に大変…。親と一緒に片づける「デメリット」3つ

まずは、実際に親と一緒に片づけをして大変だと感じたことをご紹介します。

●1:労力がかかる、意見が分かれる(険悪になる)

だれしも自分のものを片づけられるのは嫌なので、なにをするにもひとつひとつ確認する手間がかかります。それを省いて勝手に動かしたり、処分しようものなら烈火の如く非難されることも。

そうでなくても、処分の仕方で意見が分かれる親と子世代。ものがなくて困った親世代と、不自由なく豊かに暮らしてきた子世代ではものに対する基準が違います。意見の違いを擦り合わせるよりも、親がいなくなってから子世代だけで判断する方がストレス少なく作業も早く進むでしょう。私の場合、口ゲンカしながらの片づけが通常パターンになっています。

●2:思い出の品が出てくると途中で手が止まる(作業時間がかかる)

子世代は仕事だけでなく、家庭や地域での役割、趣味など一日24時間ではたりないと思う人も少なくないでしょう。私もその一人です。できるだけ効率的に短時間で実家の片づけけをすませたいと思っています。1時間でどれだけの作業ができるかをつい考えてしまいますが、親子で片づけるなら効率を考えると余計ストレスに。

親の思い出の品やお気に入りのものが出てくると、すぐ片づけの手が止まり、思い出話が延々と続きます。しかも話したことを忘れて、また次の時には最初から聞かされる羽目になったり。時間がかかる割に作業は進まずということが何度もありました。

●3:せっかく片づけても元に戻っている

片づけたのに「また増えていない?」「元の場所に戻っている」なんてことは「あるある」で、私も何度も経験ずみです。一応こうなった理由を聞き、ひとつひとつ要因を消していきますが、なかなか改善できないことが多いです。片づけに要した時間が無駄に思えることもしばしば。

介護予防や親の生活の把握。一緒に片づける「メリット」5つ

毎度口ゲンカが絶えず、肉体よりも精神的疲労でまいってしまう実家の片づけですが、それでも少しずつ継続して行なっているのはメリットと思えることがあるからです。私がこれはよかったと思ったことは主に5つあります。

●1:介護予防になる

一緒に片づけることで危険なものや場所の把握ができ、未然に事故を防ぐ、手を打つことができます。転倒しそうな場所を片づけておけば、将来の骨折の危険を減らせます。

私の場合は、引き出しから古い薬や飲み忘れた薬が大量に出てきたことで大切な薬が飲めていないことに気づきました。毎日服薬を確認し、親の高血圧や糖尿病の数値が改善しました。

親の住まいが安全で暮らしやすくなったことで生活の質もアップし、なにかが起こる前に手を打つことでケガや事故を未然に防ぎ、介護の手間を減らすことにも繋がっていると思います。

●2:家財や大切なものの所在を把握できる

通帳や印鑑の場所、価値のあるアクセサリーなど本人から話を聞いておけば、いざとなったときに困りません。「これは〇〇にあげて欲しい」など、親の思いを知ることができたりもします。なにより、どこになにがあるかを知っていることで、探す手間が省けます。

●3:親の歴史、価値観を知ることができる

デメリットでもある思い出話はメリットでもあります。親の幼少時代の思い出や結婚話、出産の思い出などは自分にとっても貴重な情報。親が通った道は自分の人生の参考にもなります。過去と未来は繋がっているから、そこを踏まえてこれからの生活をどう考えているのか、親の価値観や希望が聞けたことで、なにかあったときは本人の意向に沿いながら今後の選択をすることができます。

●4:親の生活がわかる

作業しながら何気ない話をよくします。生活の雑多な話が聞け、そこから親の生活が垣間見えることもありました。雑談は無駄ではなく、これからの生活を考えるヒントにもなり、親にとっては会話のキャッチボールが脳トレ、刺激にもなって生活が少しアクティブに変わりました。

●5:節約につながる

実家を片づけているとサランラップやアルミホイル、キッチン用品、掃除グッズなどたくさんの在庫にうんざり。けれど「これもらっていい?」と少しずつもらって使えば自分の生活の節約にもなり、親も「役立った」と喜びます。

また、自分では買わない品物をもらい受け、お試しで使ってよかったと思うこともありました。有効に活用してものが減っていくのはうれしいです。ものが減れば将来かかる処分費用も減らせます。

●片づけが無理でも親子が繋がることにメリットは多い

一緒に片づけを始めて「親のことを知っているつもりで、じつは知らないことが多かった」ことに気づきました。

元気なうちは自立して生活できるので問題は少ないけれど、入院や介護施設にお世話になる場合は様々な準備が必要になります。それは多分、親自身ではなく子どもが代行する場合が多いでしょう。親子のコミュニケーションがとれていたら、大変な出来事の負担が少し軽減するかもしれません。

「いざとなったらどうして欲しいか」など、普段なら聞きにくい話も作業中にきっかけをつかんで確認しておくことで、後々迷いや後悔を減らせるのではと思います。

とはいえ実家は親の住まい、片づけを無理強いすれば信頼関係にヒビが入ります。片づけは無理でも親のためになにかしたいなら、親の生活や考えを知ること、思いを確認できる時間を共有することです。それは片づけよりももっと大切なことのように思います。