給油や洗車をはじめ、カーライフと密接に関わるガソリンスタンドには、実に幅広い層の利用者が訪れます。しかし危険物を扱うがゆえに、思わぬトラブルが生じることも。

ガソリンと軽油を間違えてしまったり、給油口のキャップをつけ忘れてしまったり……今回はガソリンスタンドに勤務するスタッフの方々に、「困った利用者」についてのエピソードを聞きました。

使い方がわからなければ教えます!でも……

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セルフ式スタンドの給油方法はそう難しいものではありませんが、普段運転をしないドライバーにとっては操作に不安がある場合もあるでしょう。セルフ式ガソリンスタンドに勤めて6年目のスタッフからは次のようなエピソードが聞かれました。

「お客さんに呼び止められ、『給油口の開け方がわからない』と。それ自体はたまにあることなので、普通に『じゃあ開けますね』と運転席に向かったら、いきなり『ドアは開けないでください!』と怒鳴られたことがあります。

一瞬意味がわからず固まっていると、『開け方だけ教えてくれればいいので、ドアは開けないでください』と言われ……車内に入られたくないのかと思い、とりあえず大体の場所だけ教えて離れたのですが、ちょっとして『見当たらないんですけど』と不機嫌そうに言われてゲンナリしました」

車のオーナーのなかには、「他人に車内を覗かれたくない」と考える人もいるでしょう。しかし、給油口の開け方がわからない状況で、その要求を押し通そうとするのは理不尽に思えてしまいます。

さらに、「セルフ式の意味」をなくしてしまうお客さんも。先のスタッフは次のように語ります。

「毎回給油方法を聞いてくるおじいさんがいます。一応、そのたび教えはするのですが、次に来たときにはまた店員を呼んで『教えてほしい』と。高圧的な感じではなくて、むしろかなりフレンドリーで、教えている間に色々と世間話をしてくるんですよね。

もしかすると、給油方法を聞いてくるのは会話のきっかけづくりなのかなぁとも思います。悪意はないですし、空いているときなら全然気にならないのですが、忙しいタイミングだと勘弁してほしいときもありますね」

利用者自身が給油をすることで人件費を抑え、それをガソリン価格に還元することがセルフ式の特徴です。毎回接客を余儀なくされては、「勘弁してほしい」と考えるのも無理のないことかもしれません。

スタンドを駐車場代わりにする「自己中客」

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さらに、ガソリンスタンドを本来とは異なる目的で使おうとする人もいるようです。勤務歴15年のベテランスタッフからは以下のエピソードが聞かれました。

「近くに大型のショッピングモールがある店舗で働いていたときの話ですが、洗車の拭き上げスペースに車を置いて買い物に行ってしまう人がいました。一応、セルフ洗車機を使った後なので、お客さんではあるのですが……気づいたらポツンと車が残されていて、もちろん鍵もありませんし、どうしたものかと。

結局どうすることもできないまま、2時間後くらいにお客さんが帰ってきて、今度はしれっと給油をしはじめたんですね。給油しているところに店長が注意に行ったのですが、どうも『給油も洗車もしているのだから問題ないだろう』と言って譲らないみたいで。どうにか『今後は来店をお断りする』と伝え、一応それからはその人を目にしていません」

ガソリンスタンドの敷地は限られており、長時間のスペース占有は店舗や他の利用者への迷惑につながります。サービスを利用していたとしても、滞在時間は必要な範囲に留めてほしいですね。

黒塗りの高級車が爆音で…店長が助けてくれたけど…

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接客業に携わる人にとって、悩みの種となるのが理不尽なクレームです。かつてセルフ式のスタンドでアルバイトをしていた男性は、強烈なクレームにショックを受けて退職してしまったと話します。

「黒塗りの高級車が爆音で軍歌のような曲をかけながら入店してきました。給油するのかと思ったら、レーンには入らず建物の近くに車を止めて、そのまま音楽を流しつづけていたんです。明らかにヤバいオーラに固まっていると、運転席の窓が開き、サングラスのイカツイ男性が私を手招きしてきたんです。

ビクビクしながら近づいていくと、突然ドアが思い切り開けられ、回避しきれなかった私の太ももあたりを掠めました。その瞬間、『なにしとんじゃワレェ!』みたいな怒声を浴びせられて……動揺しているところに、『この車、2000万だぞ? お前払えんのか?』とまくしたてられ、ほとんどパニックのようになってしまいました。

結局、慌てて飛び出してきた店長が匿ってくれて、その人に対しては無料での洗車を落とし所にしたみたいです。なんでも以前から厄介な客らしく……店長は慰めてくれましたが、難癖をつけられて、そのまま無料のサービスを提供してしまう店にも何だかな、と思い、まもなくバイトは辞めてしまいました」

自分が客側であることを利用して、店側に無理な要求を呑ませようとする行為は、近年「カスタマーハラスメント(カスハラ)」として問題視されています。理不尽な要求には毅然とした対応が求められますが、現場ではなかなか実行に移せない場面も多いのかもしれません。

店舗のスムーズな運営には、利用者側によるマナーの遵守が欠かせません。「お金を出している立場」におごらず、モラルある行動を心がけたいところです。