ペットの柴犬の写真をツイッターに投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている@inu_10kg。ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。第58回は「犬の9回目のバースデー」についてつづってくれました。

9回目となる犬のバースデー

「今年はなにケーキがええかな〜」犬の誕生日を迎えるにあたって毎年バースデーケーキをネット通販で購入している。

●1年に1度の特別な日だからこそ最高の思い出を

楽天やYahooショッピングに出店している所もあれば、InstagramやSNSでオーダーを受けつけてる方もいる。目移りするほど色んなお店がある。それだけ需要があるのは犬たちにとっていいことだ。

「ここもおいしそう。ミートケーキも喜びそう。いやでも結局肉類は普段も食べるしやっぱりスポンジケーキ濃厚か…」

パソコンと睨めっこをし、あちこち巡回して吟味する。インターネット空間でケーキショップのはしごである。最適解を見つけるべく、何日もかけて購入するのだ。

瞳孔を開きながらようやく注文したケーキは誕生日より余裕をもって無事到着。察しのいい犬に気づかれぬよう隠れて中身の確認をする。妙にドキドキする! ケーキの入った純白の箱を、まだ5月というのに随分日焼けした指先でそっと開く。

「きれい」思わずため息が漏れ、安心感がじわりと込み上げてきた。自分がいっさい食べられないケーキを見て、こんなにも心が深く重く満たされるのか。へえ、また犬に人の心を教わった。

2023年5月7日、9歳の誕生日は朝からどしゃ降りの雨。畑で農業をしている母の休みは雨の日である。誕生日が雨では落胆する人がいるかもしれないが、犬にとっては母と一日一緒におうちで過ごせるのだ。

朝一番、母が犬の頭を撫でながら「よくがんばったなぁ9年間」と言葉を掛けていた。最初のひと言がおめでとうじゃないのが母らしい。

バースデー用の飾りつけバルーンを膨らましていたら、バルーンを一瞥(いちべつ)していったものの、さほど興味のない様子。

これまでのお祝いごとからバルーンはオモチャでもおやつでもないと学習している。…それに今から君にとびきりいいものをあげますからね。

●心から犬に感謝を…

ケーキは冷凍で届くため、昨晩から冷蔵庫で溶かしておいた。手づくりのお粗末なケーキトッパー『9』を指し、ハッピーバースデーの曲を流す。

「犬ちゃん9歳のお誕生日おめでとう!」心からの祝福とありったけの感謝を犬に捧ぐ。

ほんでパーティのあとは昼寝と相場が決まっとる。ちなみに雨の午後によく見る日常的な光景でもある。

起きた母がまだはっきりしない意識のなかで犬の名を呼ぶのも日常。近くで犬が寝てたらほっとするみたいだ。

夕方になっても雨は激しいままで、散歩も軽めに済ませるしかなかった。

「消化不良かな? 身体動かすか」とオモチャを手にした直後飛びつかれた。ピカチュウの電光石火と張れるくらい光速。

しっかりと遊び、パーティの余韻が残るなかで眠りについた。

後日、雨のおかげか庭の芝生にたくさんの白詰草が咲いた。それを母が器用に編んで白詰草の冠を犬に被せていた。白詰草の花言葉は“幸運”そして“約束”である。

9歳、9歳ですよ。本当によく大きな病気や事故なくがんばってくれた。これからまた一年、からだも心もすこやかなまま10歳になれますように。困ったり悲しい出来事がありませんように。これは神様への祈り、そして自分との約束である。

●思い出の一枚を撮影したい

ここから少しだけ犬のことではない自分ごとをお伝えします。先日Instagramにて、私に記念撮影を依頼したい方に向けたプランのご案内をしました。アカウントのトップにピン留めをしている投稿になります!

というのも昨年からはじめた不定期連載を「まほろば写真館」というタイトルにするくらい、もともと写真館業の取り組みに憧れがありました。

3月にInstagramでその想いを溢したところ、本当に有難いことに撮ってほしいというメッセージをいただきました。ですが個人の依頼は受けていないとも思っていたようでした。
私としては媒体や個人で垣根を分けておらず、そういう気持ちをちゃんと伝えなければと考えさせられました。

ハレの日でも何気ない日でも、今日を生きているあなたの記念撮影をしたいです。そして時間をかけて大切にしてもらえるような写真が撮りたいです。ご興味のある方はぜひ投稿をご覧くださいね。