任天堂「ゼルダ新作」爆売れ、ギネス更新の納得理由
大ヒットでギネス世界記録を更新した『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』(画像は任天堂公式サイトより)
Nintendo Switch用ソフト『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』がギネス世界記録を達成し、大きな話題となっている。
今回達成した記録は「最も早く売れた任天堂ゲーム(fastest-selling Nintendo videogame)」というもの。その前の記録は『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』の24日で1208万本となっていたが、2023年5月12日の発売から3日間で1000万本を突破し、その記録を塗り替えた。
ユーザーはもちろん評論家からの評価も高く、売れに売れている本作。まぎれもない偉業を達成しており、思わず「さすが任天堂」と言いたくなるところだが、実はこのシリーズは苦労も経験している。
「昔は大人気、今はそこそこ」になっていたゼルダ
『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』の売り上げでとくに注目したいのが、日本国内でも発売3日間で224万本を売り上げているところにある。
「37年も続く人気シリーズなら当然のことでは?」と思うかもしれないが、実際のところ「ゼルダの伝説」シリーズは、日本において「昔はかなり人気だったが、今はそこそこのシリーズ」であった。
ファミリーコンピュータディスクシステムで発売された初代『ゼルダの伝説』や、スーパーファミコンで登場した『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』などはかなり人気があったようだし、NINTENDO64の『ゼルダの伝説 時のオカリナ』は国内売り上げが100万本を超えているという。しかしその後、人気は徐々に落ち着いてしまったのである。
大人気だったWiiで2011年に発売された『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』は、国内では36万本ほどの売り上げに留まっている。もちろん人気はある部類なのだが、「一定のファンがいる」くらいの状況で、ニッチというほどではないが、大人気とはいえないシリーズになっていた。
人気が落ちた要因はいろいろと考えられるが、3Dグラフィックで描写される「3Dゼルダ」になってから、とくに謎解きが難しくなったと指摘されている。「ゼルダの伝説」シリーズは謎解きのゲームなのだが、それが嫌だという人も少なくない(筆者もその1人)。
謎を解いたときの納得感がない
「ゼルダの伝説」シリーズのジャンルはアクションアドベンチャーであり、主人公のリンクを操作してゼルダ姫を助けるというのがたいていの目的となる。道中にはダンジョンや道を阻むものがあり、それを攻略するために謎を解く必要がある。
この謎がネックだ。謎を解いたときの納得感がないのである。
『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』も敵と戦うのはもちろん、謎解きの場面もある(画像は任天堂公式サイトより)
「ゼルダの伝説」シリーズでプレーヤーが悩むときはどういうときかというと、「どこへ行くべきかわからない」だとか「必要なアイテムはあるがどう使うかわからない」ケースが多かった。謎解きといってもパズルを解くというより、ひらめきを得なければならないことが多い。
筆者が最も頭に血が上ったのは『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』における序盤の謎解きだ。
ここでは扉を開けるための宝玉を探す必要があったのだが、そのヒントとして「ひとつは上に ひとつは下に」という文言があった。
下の宝玉はすぐ見つかったものの、上のものはまったく見つからない。天井をしらみつぶしに探しても見つからず、最終的には攻略情報を見て脱力した。もうひとつの宝玉は上というよりも、足場の裏にあったのだから。
開発陣が直接的ではない、ほどよいヒントを出そうとしたのはわかるが、この場合はミスリードになってしまっており、筆者はただただ疲れただけだった。また、謎が解けないと先に進めない(謎を無視できない)ので、この状況を楽しめというほうが無茶である。
同様のことを感じた人が多かったのか、状況の把握が難しくなった3Dゼルダは徐々に人気を落としていく。
『ブレス オブ ザ ワイルド』での転換と大成功
それを大きく変えたのが『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』である。本作は広大なフィールドを自由に移動できるようにしたし、最初から主人公にさまざまな道具を与える仕組みにした。謎解きも、ものによっては無視できるし、答えさえ合っていれば途中の方法はプレーヤーに委ねるようになった。
これが評判を呼び、「ゼルダの伝説」シリーズは大きく変わったことが知れわたった。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が発売された2017年こそ国内売り上げは51万本程度にとどまったが、その後に数字を伸ばし続け、最終的には350万本以上も売り上げた。
そして、2023年5月に発売された『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』はそれをさらに進化させている。ものを自由にくっつけて車やロボットを作り出したり、謎を解く選択肢もより増えたりしている。おまけにNintendo Switch自体も普及が進んでおり、ゆえに発売3日間で国内売り上げ224万本という記録を達成できたわけだ。
『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』の広大なフィールド(画像は任天堂公式サイトより)
前作『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の国内初週売り上げは約22万本(ダウンロード版を含まず)となっている。続編の『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』はダウンロード版もカウントしているとはいえ10倍以上の記録を叩き出した。
今回のギネス記録達成において、発売3日後の国内売り上げ224万本という数字は無視できないほど大きいだろう。もはや「ゼルダの伝説」シリーズは「昔人気だったゲーム」や「海外では人気のゲーム」ではなく、日本でも世界でも大人気のモンスター級タイトルになったのである。
(渡邉 卓也 : ゲームライター)