画廊と美術館での学芸員経験を持ち、現在は美術エッセイストとして活躍中の小笠原洋子さんは、高齢者向けの3DK団地でひとり暮らしをしています。「ケチカロジー」という言葉を生み出し、発信してきた小笠原さんですが、ケチではありつつも、おしゃれで豊かな暮らしを楽しんでいます。今回は、お金をかけない「食事の工夫」について教えてくれました。

おひとりさまの、お金をかけない食事の工夫

このコラムでは、おひとりさまの年金生活者として、「私の衣・食・住」を紹介しています。自著『ケチじょうず』(ビジネス社)シリーズのとおり、私は大いなる倹約家として、前回は装いについて話しましたので、今回は食生活についてそのケチ度をご披露します。

【写真】豆腐のパックが意外な保存容器に

●外食はささやかなグルメ、おうち食は栄養優先に

私は、そもそも料理下手であり、おいしいものは人につくってもらうものだと思っています。しかしケチの身に外食は危険。それでも「駅そば」やスーパーなどの「イートインコーナー」では、案外ケチをねぎらう安らぎのスペースがあるものです。そこを見つけて入るのが、ケチ外食のテクニックですね。

月に一、二度私はささやかなグルメを楽しみに生きていますので、「おうち食」は美味の追求ではなく栄養優先です。翌日の献立を考えメモしておくのが日課です。献立といっても、料理とはいえない食事なので厳密には不適切用語なので、食品に敬意を表して御の字をつけたとしても「御餌」でしょうか(笑)。

たとえばある日は、新タマネギの挽肉あえ。翌日は豚小間としらたき煮に、酢とゴマ油がけのお豆腐。つづくはサバ缶とレタスあえ…など。三大栄養素に配慮しつつ最低限の食材と調理法に徹します。

最低限とは、買いに行かずに当日冷蔵庫に入っているものをアレンジすること。ほとんど調味料は入れないで、素地の味を探求することです。

●調味料は最小限。豆腐のパックが保存容器に

納豆もタレを微量しか使わないので、しょうゆ入り小袋がたくさん残っています。ときにはあの小袋でさえ半ば残るので、漏れないように立てて、空になったティーバッグの袋などに入れ、縦位置で保存しておくのです。立てかけておく保存容器は、空になった豆腐の小パックが便利で、たまってしまった未使用の納豆タレとともに冷蔵庫の片隅にでも。

ちなみに、納豆のタレ、とても「だし」が効いているのはご存知ですか? 使いまわしやすいので、それを他の料理にも活用しています。そばつゆにも用います。私の「そば喰い法」は汁をたっぷりかけたり、蕎麦猪口内で絡めたりしません。ほんの香りづけ程度でOKだからです。

●レシピよりも材料を主軸に食べたいものを考える

なお私はハンバーグやカレーなど、高名な料理はつくりません。食材をそろえるのに、お金だけでなく、ストレスもかかるからです。それに、これらの料理はぜいたくながらおもしろみがたりなく、年に一度でも外食でオーダーすれば満足なのです。なので、献立を考えるときも、たとえば「オムレツが食べたい」という発想はなく、卵を食べなければとか、豚コマが余っているから…いうのが発起点になるのです。

ジャガイモが食べたいときも、肉ジャガやポテサラ、ジャガバターなんて思いつきもしません。丸ごとおイモをチン! それで充分です。マヨネーズも塩もかけず、純朴なおイモの、真の生き様とか有りようを探査したいのです。おイモとの、密やかにして深い会話が、格別な味わいで楽しめますよ。