今、家づくりで全館空調システムに注目が集まっています。真夏の暑い日も真冬の寒い日も、居室はもちろん玄関から廊下まで、家じゅうを快適な温度に保ってくれるのは魅力。しかし24時間365日、家全体を空調するので、光熱費が気になるところです。そこで、2年前にハウスメーカーで全館空調の家を建てた日刊住まいライターが、光熱費の推移を詳しくレポートします。太陽光発電との併用で、暑い夏や寒い冬の時期だと、1万2000円程度の費用に。

暑い日も寒い日も家の中はとても快適!

筆者は妻と幼い息子の3人家族。2年半ほど前に、ハウスメーカーで全館空調を採用した家を建てました。

全館空調とは、家全体の空調を一括で管理するシステムのこと。いちばんのメリットはリビングなどの居室はもちろん、玄関から廊下まで、家じゅうの室温が一定に保たれる点です。

家族がいるリビングはクーラーがついていて涼しいけれど、一歩廊下に出ると真夏のうだるような暑さが待っている。そんな経験はだれにでもあると思います。でも、全館空調のわが家では、こういったことがありません。

筆者の家は、上の写真のようにドアの下にすき間があります。しかし家全体で常に均一な温度の空気が循環しているので、すき間風に悩まされることはありません。家のどこにいても快適な室温に保ってくれる全館空調は、筆者の満足ポイントのひとつです。

改めて筆者の家を簡単に説明しますと、以下のようになります。

・立っている場所は東海地方
・延床面積は約38坪
・総2階(吹き抜けなし、ロフトなし)
・全館空調システム
・太陽光発電(パネル容量12.37kWh)

 

筆者宅の全館空調は、ルームエアコン1台と熱交換型換気システムを備えたものです。全熱交換型換気システムで、屋内の空気の温度と湿度に近い状態で外気が取り込まれます。

そのうえで機械室(写真上)と呼ばれる部屋にあるルームエアコンで温度調節された空気が、ダクトを介して家の各所に届けられます。

また、筆者は太陽光発電システムを採用しています。24時間ずっとつけっぱなしの全館空調も太陽光発電のおかげで電気代を抑えることができています。

全館空調にかかる電気代はどのくらいか? 太陽光発電のおかげでどのくらいオトクになっているのか? 筆者宅の電気代をもとに、詳しくご紹介しましょう(以下でご紹介するデータはHEMSにより取得したデータに基づきます)。

なお、ご紹介するデータは2021年1月から12月までのものです。

全館空調にかかる光熱費はいちばん高い月で1万2000円

全館空調にかかる電気代は、ルームエアコンと全熱交換型換気システムの2つに大きく分けられます。筆者宅の全館空調の電気代の推移をグラフにしてみました(上図・電気代は27円/kWhとして実際の使用電力から計算しています)。

換気システムの電気代はあまり季節に左右されませんが、ルームエアコンの電気代は季節によって大きく変わるので、全館空調トータルの電気代も大きく変わっているようです。

筆者宅の場合、春や秋などの気候の穏やかな季節は4000〜6000円/月ですが、夏や冬になると1万2000円前後/月になることも。

ちなみに、筆者は比較的気候の穏やかな東海地方に住んでいます。仮に同じような規模の家でも、季節によって気温が大きく変わる地域だと、夏・冬はもっと電気代がかかるかもしれません。

全館空調は、24時間稼働させることが推奨されています。しかし、人のいない部屋も空調し続けることは、電気代がもったいないのでは? と思う人は多いと思います。

筆者も、最初は同じような疑問を持っていました。しかし、設計士に聞くと、エアコンの電気代がかかるのは室温と設定温度が大きく異なるときだそう。そして、家全体が設定温度に近い状態を保てていれば、家全体を24時間空調していても、電気代はそこまで大きくかからないとのことでした。

さらに筆者は、太陽光発電システムを採用することで、光熱費の負担を減らしています。

 

太陽光発電との併用でランニングコストは大幅ダウン

筆者は太陽光発電システムを採用しており、そのパネル容量は12.37kWです。

この規模の太陽光発電システムを採用しようとすると、かなりの初期費用がかかりそうですが、筆者は「未来発電」というサービスを利用して、初期費用0円で太陽光発電システムを採用しました(これは三井ホームのサービスですが、調べてみると似たサービスはいろいろあるようです)。

設置後10年間売電収入を得られなかったり、特定メーカーの設備を採用しないといけなかったりするなど、未来発電を利用するうえで制限はありましたが、経済的に大きなサポートになりました。

この太陽光発電システムのおかげで、雨でない限りは、日中の使用電力のほとんどを発電した電気でまかなうことができています。全館空調は24時間稼働のため、日中の光熱費の大部分を節約できるのは助かります。

 

実際のところ、太陽光発電のおかげでどれくらい電気代を抑えられているか、グラフにしてみました(単価を27円/kWhとして、使用電力から計算した電気代と、実際に筆者が買電した電力から計算した電気代の比較)。

なお、全館空調の電気代だけを切り取るのが難しいので、筆者宅のトータルの電気代で考えてみます。

太陽が出ている時間が長い夏が発電量も多く、筆者宅の場合だと、太陽光発電のおかげで電気代が約半分になっています。

一方で冬は太陽の出ている時間が短く、発電量も少なくなってしまいますが、それでも70%ほどに電気代を抑えられています。

全館空調にかかるランニングコストについて、筆者の家で実際にかかっている電気代をもとにご紹介してきました。

なお、今回ご紹介した光熱費は、わかりやすいよう27円/kWhでご紹介しましたが、今後もっと電気代が上がる可能性があります。そうなると、ますます太陽光発電で得られる恩恵は大きくなるかもしれません。