デビュー以来、ドラマや映画などさまざまな話題作に出演し、近年では司会としても大活躍中の俳優・谷原章介さん。私生活では6人の子どもの父でもあり、2021年には「ベスト・ファーザー イエローリボン賞」を受賞。多忙を極めるなかでも家族との時間を大切にされ、総勢10人の谷原家の晩ごはんづくりは、谷原さんが担当。そんな谷原家のご飯事情にクローズアップしました。

谷原章介さん『谷原家のいつもの晩ごはん』インタビュー

芸能界きっての料理上手としても有名な谷原さんですが、自身初のレシピ本となる『谷原家のいつもの晩ごはん』(マガジンハウス刊)が好評発売中。今回は、著書に関することや、献立づくりで大切にされてること、そして大家族の買い物事情など貴重なお話をたっぷり伺いました。

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●レシピ本は「裸を見せているよう」で恥ずかしい!?

――家族のために繰り返しつくってたどり着いた“究極の定番ごはん”レシピと心温まる家族のエピソードが満載の『谷原家のいつもの晩ごはん』が今回発売されましたが、出版された今の気持ちはいかがですか?

谷原章介さん(以下、谷原):裸を見せているようで恥ずかしいですね(笑)。というのも、僕がいつもやっていることって、映画・ドラマにしろ、基本台本があるじゃないですか。だから、すでに1とか2をつくっていただいたものに、僕がもう1個加えて、それを3、4にしていく作業がほとんど。

0から1へ立ち上げることは本当に大変ですよね。レシピ本はそのなかに自分の人間性や、やっていることがすべて入っているから、丸裸見られているみたいに恥ずかしいのと同時にこれが否定されたらどうしよう…というドキドキ感があります。

――「ねぎ餃子」や「みぞれ豚しゃぶ」など、著書のレシピはすぐにマネできるものばかりですが、谷原さんがお料理をつくる際に大切にされていることがあれば教えていただけますでしょうか?

谷原:もちろん食べてもらう人に「おいしいと思ってもらえるもの」、「好きなものをつくる」というのは大事にしているのですが、それと同時に子どもには、苦手なものを「イヤだ、食べない」という方向じゃなく、トライして食べられるようになったという経験もしてほしいなと思ってます。

サラダは奥さんが好きなので毎食つくるんですけど、最初は少し苦手でもつくり続けてることで子どもたちもだんだんと興味をもって食べられるようになりました。だから、うちは「全部食べないで、嫌いでもいいから、ひと口だけ食べてみて」っていう、そのひと口の経験を積み重ねてもらうようにしてます。

●苦手なものから逃げないでほしい

――確かに子どもが小さいと、苦手な食材を食べてもらうのはなかなか難しいですよね…。

谷原:う〜ん…正解って僕も分からないですけど、たとえば苦手な食材をミキサーなどにかけて完全に見た目がわからない状態にして、味としてもいろんなものでカバーしたものを出して、子どもが食べたらそれでいいのかな? と思う部分も正直あるんですよね。

それって、栄養素はとれてるけど、その食材自体と向き合ってることにはならないじゃないですか。人間って体と精神が互いに影響しあってる。でも、食材を分からない状態にして食べても、気持ちや頭の考えになんの影響も及ぼしてない。だから、苦手そうだなって思ってもまずは1回、自分なりに経験してみるっていうことをできるようになってほしいです。

多分苦手なものって、食材だけじゃなく、人間関係や、勉強・仕事、これからするであろう経験のなかでいろいろとあると思うんです。苦手だから最初からやらないってなったら、その経験が半分なのかそれ以下なのか分からないですけど、減っていくじゃないですか。

でも、苦手なものでも経験してやっぱりダメでも、“経験”は増えていくと思うんです。苦手なものを最初から自分が向き合わないように避けてしまっていたら、0は0のまま。そこから1にも2にもなってかない。ただ、全部が全部経験しろとまでは思わないので、その塩梅は少し難しいですよね。

●食事はプレートを活用して洗い物を減らす

――谷原家では、おかずを大皿でつくって食卓に出し、それぞれが好きなものをプレートで取り分けるようにしていると伺ったのですが、そのスタイルにたどり着いたきっかけはあるのでしょうか?

谷原:家族全員にそれぞれの取り皿や小鉢…なんて用意すると、洗い物がとんでもないことになるんですよ。その点プレートだと、1枚で3〜4品とれます。まずは自分でおかずをとってもらって、あとは、「それ取ってないからこれ食べなよ」なんて言って強制的に野菜を少しずつ置いて行ったりしてますね。

――普段、食事のことでお子さんを怒られたりするのでしょうか?

谷原:「そんなに取ったらほかの人なくなっちゃうじゃん」みたいな感じで言いますね。フライドポテトを出せば、そればっかり減りますし、奪い合いでケンカにもなりますし(笑)。怒ることで、子どもは言われてしまってイヤだなって思うかもしれないけど、やっぱり6人全員に公平でありたいという想いがあるんです。その代わり、全員がとっても満足できる量は出してるつもりです!

――10人家族ともなると、つくる料理もすごい量になりそうですが、1回の食事でどれくらいの量をつくられますか?

谷原:1回で肉は1〜1.5kg、魚のフライとかも1kgはつくりますかね。でも難しいのが、子どもが好きなフライドポテト! これも1.5kgくらいつくるんですけど、そしたらフライドポテトばっかり減って、肉や魚のおかずが減らない…あれは本当に難しいです(笑)。

●買い物のコツは冷蔵庫の中身を知ること

――量をつくられるとなると買い物も大変かと思いますが、なにか気をつけていることがあれば教えてください。

谷原:料理をつくるときは朝の放送が終わったら基本的に食材を買って帰ります。買い物では、旬の安いものを買うようにしてますね。だから、「その食材がなければ料理ができない」みたいなことはしないです。

たとえば、書籍に書いてあるサラダの野菜も必ずしもそれでなくてもできますし、そのときの安い食材を臨機応変に使うのでいいと思うんですよね。あと著書にも書きましたが、大容量のサイズのものが手頃な価格で買えるので、肉のハナマサによく行きます。

――買い物のコツなどありますか?

谷原:いちばんは冷蔵庫の中身を把握することが大切。冷蔵庫の中身はだいたい把握して、たりないものだけを買って帰ります。あと、僕は野菜も全体食が好きなので、基本は皮つきのままで食べたい。剥いた大根とかの皮は塩ふって和え物にしたり、それでも残ってしまうものはスープのだしにしたり、犬が食べられるものだったら犬にあげたりして、食品のロスはなるべく出さないようにしてます。

●がんばりすぎないことが大切

――大家族だと洗い物もすごい数になりそうですが、そこはどのようにされているのでしょうか?

谷原:僕は料理をつくりながら片づけますね。たとえばボウルだったら、料理ごとで新しいボウルなど出していくと大変なので、そのあとの調理工程にボウルが必要か考えて、あるんだったら次の料理に使えるような段取りにしようとか、やりくりしてますね。

ただ、それを自分がやるのは勝手だけど、人に押しつけけたらだめだなとは思ってます。思わず「まだ使ってるのがあるのに、コップいっぱい出すの?」とか言っちゃうときもあるんですけどね(笑)。

――谷原さんも、仕事や子育てに忙しい日を過ごされているかと思いますが、最後に同じく家事や育児、仕事に毎日奮闘している読者に向けてメッセージをお願いします。

谷原:がんばりすぎない! やるってことが、強迫観念的に“自分ががんばんなきゃ”みたいに思ったりするじゃないですか。でも、やらなくたって死にはしない。まじめな方ってそうじゃなくてもちゃんとやってるし、そういう風に“やらなきゃ”と思う時点でまじめだと思う。そうやって思う人はちゃんとやってるから、やらなくてもいい大丈夫! だからがんばりすぎないことが大切です。