料理家として活躍する飛田和緒さん。その暮らしぶりも注目されています。今回は、すっきり暮らしのきっかけと、片づけや掃除についてご紹介します。

50代、料理家・飛田和緒さんの暮らしのこと

飛田和緒さんの著書『おとなになってはみたけれど』(扶桑社刊)でつづられていた、暮らしへの思いを抜粋で紹介します。

●ものを減らすということ

とにかく捨てられない性格だった。
袋、箱、紙類、ヒモ、リボン、瓶、服やバッグ、靴など、もらってくれる人がいれば譲り、若い頃はフリーマーケットに参加していたこともある。それでもあふれるのは無駄な買い物だったと反省もしている半面、そのときは楽しんだからいいではないかと開き直る気持ちもある。
本や雑誌も山積み。本棚には収まらず、ベッドサイドやリビングの隅に積読(つんどく)状態(読むものを積み上げていること)。この言葉は取材を受けたときに言われて以来、気に入っている。
それでもなんとか部屋に収めるべく、工夫はしてきた。季節ごとの衣替えのときには服を、年2回は本を、器は使用頻度が下がったものを譲るようにしている。
引っ越しのたびに整理して、「あーすっきりした」と言ってもまた、ものはあふれるのである。だから引っ越しの前後はものはもう買わないと誓うけれど、それでもね。

●収まりつつある物欲のおかげで…

50歳を過ぎてから、今やっと物欲が収まりつつある。娘が生まれ、彼女の成長につれてものが増えてきたから、自分のものを自然と抑えるようになったのかどうかわからないけれど。この年になってようやく必要なもの、欲しいものを見極められるようになったのだと思う。
食材以外の買い物に出かけることがなくなったというのもある。東京の美容院へ月に一回出かける際に、通い慣れたデパートへ行くのが楽しみだったけれど、それも最近は用事がなければ寄らずに直帰する。出不精になったのだろうか。
そんなわけでものを減らすというよりは、増えなくなりつつある今がある。正直、無駄なものはないかもしれないが、使わない、着ないものに囲まれているのはどうにも落ち着かない。やはり、少しでも片づくと、心の波が静まるような気がする。

●片づけはできるときに

片づけは基本的には好き。でも散らかすのも好きだから、つねにすっきりと片づいた家ではない。とりあえずはリビングとキッチン、ダイニングは家族の憩いの場であり、私の仕事場でもあるので、ここだけは散らからないように心がけている。
各自の部屋はというと、お見せできないくらいと思ってほしい。ものがあるとその分ホコリがたまり、散らかりの原因になるからクローゼットへ、を肝に銘じている。
片づけは一気にしない。引き出しひとつずつ、冷蔵庫の棚一段ずつ…。できるときにひとつずつ進める。
そうするといつの間にか順繰りに片づけられ、掃除されるという具合。見えるところが片づいているのはもちろん気持ちのよいことだけど、引き出しの中がすっきりとしているのもいいものだ。散らからない法則は私にはないけれど、隠す方法はある。扉のついた戸棚をひとつ空けている。急な来客のときに散らかっているものがあれば、一気にそこへ放り込む。その戸棚のおかげで助かること多々あり。

●掃除も気になったらすぐにやる

掃除も同様。毎日ホコリ取りと掃除機をかけるのはリビングダイニング周辺と玄関。そしてトイレ掃除とお風呂掃除。最近では娘がお風呂を担当してくれるので助かっている。
拭き掃除も気になったらすぐにやる。仕事中でもキッチンの床が気になれば拭く。階段にホコリを見つければ拭く。1分もあれば拭けるので、それを面倒と思ったらなにもできない。
出かける際には椅子をテーブルの上にのせ、お掃除ロボットのスイッチを入れて出る。一日に何度か掃除ロボットがくるくると部屋を回ってくれるだけでもホコリのたまり具合が違う。ある方のご主人は、2階にある自室から1階のリビングへ下りてくる際は後ろ向きで、階段の拭き掃除をして下りてくるという。まぁこれはうらやましいと思ったが、うちの家族には強制できない。やる気を起こさせるほうが大変なので、自分でやる。階段の上り下りをするときは、モップを片手に往復すればよいだけである。