季節の変わり目や寒暖差に頭痛が起きる「気象病」は、子どもの患者も少なくないといいます(写真:TATSU/PIXTA)

季節の変わり目や天気の変化により、頭痛、めまい、首・肩こり、腰痛、関節痛、むくみ、耳鳴り、だるさ、気分の落ち込みなど、心身にさまざまな不調が生じる気象病。

春から梅雨にかけての時期は、寒暖差や気圧変動が大きいため、気象病の症状に悩まされる方が多くなる季節です。

気象病は大人だけでなく子どもの患者も多く、場合によっては不登校などの原因にもなってしまうといいます。天気痛ドクター・佐藤純氏の著書『1万人を治療した天気痛ドクターが教える「天気が悪いと調子が悪い」を自分で治す本』より、子どもの気象病との向き合い方や、よく見られる症状などについて解説します。

「自分も他人も原因に気づきにくい」

気象病がやっかいなのは、自分では判断がつきにくいことです。たとえば、雨の日に体調を崩しやすかったり、気分が落ち込んでしまったりする傾向にある人でも、それが雨のせいであると自覚できないケースが多々あります。

体がダルくて動かない。どことなくイライラする。でも、はっきりとした病気というわけではないから頑張るしかない。そうやって無理をして、ストレスをため込んでしまう。これは本当に危険で、うつや不眠といった症状を誘発しますし、最悪の場合は自殺願望を抱いてしまうことさえもあります。

さらに問題なのは、気象病のつらさは自分以上に他人にはわかりにくいということです。ゆえに仮病と思われたり、サボっているように見られてしまうことがあり、そんな他人の“懐疑のまなざし”を気にして、なおいっそう心を病んでしまったり、不登校になってしまうお子さんもいらっしゃいます。

過去に私が診察した患者さんのなかに、曇りや雨の日に頭痛がひどくなり、学校に行けなくなることもあるという高校1年生の女性Aさんがいました。Aさんの頭痛がはじまったのは小学5年生のころで、最初はひどい痛みはなかったものの、中学に入ると症状が悪化し、授業中に保健室に行ったり、頻繁に学校を休んだりするようになりました。それが周囲に「サボり」と認識され、いじめを受けるようになってしまったのです。

Aさんは、適切な治療を受けてからは元気に学校に行けるようになりましたが、中学時代に心身両面に負ったダメージは相当大きかったはず。病気のことを他人に理解されないのは、本当につらいことだったと思います。

症状と天気との関係をしっかり把握する

子どもの場合も大人と同じく、気象病の症状としていちばん多いのは頭痛ですが、同じ片頭痛でも、大人と子どもとでは症状の出方が異なります。
大人の場合、痛みが数時間から数日続くのが特徴ですが、子どもの場合は長時間続くことはほとんどなく、2時間ほどで治まることも珍しくありません。

しかも、治まったあとは何ごともなかったかのように、元の健康な状態に戻ります。さっきまで苦しんでいたかと思ったら、いつの間にかケロッとしている。だから、仮病やサボりを疑われてしまうのです。

それゆえに、最初はAさんのお母さんも、その症状の深刻さを理解することができませんでした。どうにかして学校には行かせたい、休ませたくないというのが親心ですので、嫌がるAさんを強引に車に乗せて、学校に送り届けることもあったといいます。

それだけ、子どもの気象病はわかりにくいのです。

原因不明の体調不良時に、子どもがよく診断される病名として、起立性調節障害があります。小学校高学年から中学校の思春期の子どもに多い症状で、起立時にめまいや動悸、立ちくらみなどが起こります。症状が重くなると、朝なかなか起きられないことから、不登校につながることも多いようです。

起立性調節障害も気象病と同じく自律神経と深くかかわっているため、当然、天気による影響を受けます。

地球温暖化が進み、気候変動が激しさを増している今、気象病によって学校に行けなくなっている子どもが多くみられるようになりました。学校に行きたくても行けずに、不登校状態を強いられている子どもはたくさんいるのです。また、病院に行ったものの原因がわからず、精神科に回されてしまい一向に改善しないという悪循環に陥ってしまうケースも多いです。

雨の日や台風が近づいているときに、子どもが頭痛や腹痛など体の不調をうったえて「学校に行きたくない」と言ってきたら、その言動を疑ったり、「精神的な問題」で片づけるのではなく、まず天気による影響を疑ってみてください。

我が子の不登校の原因が天気によるものであれば、対処法や治療法があります。

片頭痛に関していえば、ストレスなど複合的な要因が絡んで痛みが複雑なものになっている大人と違い、子どもの場合は天気との関係がシンプルですので、治療の効果が出やすいのです。

薬でみるみるうちに症状が改善されるケースは少なくないですし、それに連動して精神状態もたちどころに良くなります。しっかり治療ができれば先程のAさんのように症状が改善し、元気に学校に通えるようになるかもしれませんので、ぜひともお子さんを心身ともにラクになる状態に導いてあげてください。

子どもの気象病治療は「時間」との勝負

子どもにとって気象病は深刻な症状です。

気象病による弊害にはさまざまなものがありますが、子どもを治療するうえでもっとも気遣ってあげなければいけないこと。それは「時間」です。

大人であれば季節の変化なども考慮しながら気象病の症状の出方を観察することはできますが、子どもにとっての1年は、大人の1年とは比べ物にならないほどに大切です。悠長なことをしていれば、どんどん周りから置いていかれてしまいますし、その不安を感じるのは、ほかの誰でもない子ども自身です。治療が早すぎるということは決してありません。

もし治療をしながら学校に通うことが大変でしたら、昨今はオンライン授業なども充実していますので、親御さんは通信教育なども選択肢のひとつとして考えてあげてください。

我が子が不調をうったえているとき、いったい親はどう接してあげればよいのでしょうか。

まず、親が気象病持ちの場合、その子どももかなりの確率で気象病の症状が出ることがわかっています。親に限らず、近親に1人でも天気の影響を受けやすい体質の人がいましたら、その可能性があるといえます。子どもといっても年齢は幅広いですが、10代で気象病に苛まれている子どもたちは、実は5歳ぐらいのときから頭痛が出ていたりします。

ただし、幼児や小学校低学年では痛みの症状をハッキリと表現できません。それくらいの子どもたちは、お腹が痛い、調子が悪い、眠たいなど頭痛とは一見関係のないことを言い、その多くが体全体の不調をうったえています。

幼稚園や小学校に行きたくないと理由もなく駄々をこねるようなことがありましたら、子どもの不調が天気に影響されていないか注意深く観察してみてください。とくに自分も似たようなタイミングで体調を崩すのであれば、気象病の可能性を疑ってみるべきでしょう。

睡眠がしっかりとれているか

不調をうったえる子どもを観察するうえで注意しておきたいのが、睡眠がしっかりとれているかどうか。


いまでは、小学生のスマートフォン所持率が50%を超えているといわれています。夜、布団の中に入ってスマホをいじったり、眠くなるまでゲームをしていたりしませんか? ギリギリまでチカチカしたものを見ながら眠ると睡眠障害が起きやすくなります。調べてみて驚きましたが、気象病の症状をうったえる子どもたちの多くが睡眠障害を併発していました。

私の患者さんでも、「よく眠れない」という発言をする子どもが少なくありません。まずは何時に寝て、何時に起きたのか。私は気象病を疑って来院した子どもには、睡眠日誌をつけてもらうことからはじめています。

(佐藤 純 : 天気痛ドクター・医学博士)