【NMB48 衣装図鑑】『HA!』山本彩着用/『恋なんかNo thank you!』吉田朱里&安部若菜着用の衣装を徹底解説!制作秘話にわかぽんも「信じられへん」
大阪・なんばを拠点に活動する「NMB48」。かわいいだけでなくお笑いもこなす親しみやすいアイドルグループとして、2023年には結成13年目を迎え、メンバーたちはバラエティタレントにモデル、グラビアアイドルなど、あらゆるジャンルの最前線で活躍している。
【写真】山本彩着用の『HA!』の衣装。裏地までオリジナルプリントというから驚き
そんなメンバーの個性を彩ってきたのが、オリジナルの衣装たち。この記事では、その多種多様な形や色、制作の裏話をご紹介!NMB48の衣装デザインからスタイリングまでを担当する松永麻里さんにたっぷりとこだわりを語ってもらう。
月替わりで登場する案内人は、TikTokで「NMB48衣装図鑑」と称して衣装の細部や着脱方法を紹介しているれいこちゃん(前田令子)、将来は“自分のブランドを持つ”という夢を持ち、メンバーの衣装作りも経験したことがあるかれんたん(原かれん)の2人。一体どんな制作エピソードが飛び出すのか?第5回は、れいこちゃんが案内人を担当する。ゲストには、2023年3月27日に初の写真集を発売したわかぽん(安部若菜)が登場!
■NMBらしさ全開!ファン人気No.1の和の要素を取り入れた『HA!』のMV衣装
まずは、松永さんによる衣装紹介!最初に話を聞くのは、道頓堀川に浮かぶ屋形船でメンバーが踊る姿がインパクト抜群な『HA!』のMV衣装。
「初めてのことだらけの衣装でした!おかげさまで2020年にライブと連動した投票企画として行った『NMB48衣装総選挙』では1位をとらせていただき、衣装スタッフとして冥利に尽きますね。本当にありがたいです!衣装は全メンバー共通ですが、襟元に付いているビジューはフロントメンバーから装飾を多めに施しています。お袖は右腕だけで、左側は大胆に腕を出して艶っぽく!和風衣装はパンチを効かせて総柄プリントで派手に!下に履くスカートはシンプルな黒革をプリーツ加工して、48グループらしい制服感を出しました。NMBだけでなく他グループさんにもお貸し出しさせていただいたり、『ほんと何回使っていただいたんだろう?』ってぐらい、たくさんのメンバーに着ていただいてる衣装です」
■元はアカリンのドレス!生地を再活用した『恋なんかNo thank you!』の衣装
続いて、アカリン(吉田朱里)がセンターを務めた24thシングル『恋なんかNo thank you!』の楽曲衣装。こちらもたくさんの思い出が詰まっているそう。
「2020年に開催されたあかりちゃん(吉田朱里)の卒業コンサート『さよならピンクさよならアイドル』の後に作った衣装で、あかりちゃんが卒コンの最後に着た巨大ドレスの生地を使っています。元になった巨大ドレスは、紅白歌合戦の小林幸子さんを意識して作らせていただきました(笑)。あかりちゃんが『色はピンク。だけど子供っぽくないグレーよりの大人かわいいピンクがいい!』と言っていろいろ探して見つけた生地ですが、実はこの生地、本来は裏地に使われることがほとんどなんです。でも光沢の加減といい絶妙に素敵な色目で、あかりちゃんも1択で『これで!』となりました。
そこから作ったあかりちゃんの衣装は、フィッシュテールの裾に透け感のあるチェックの生地を組み合わせ、動いた時にウエストから下部分がふわっと揺れるのがポイントです。ロングコートだけど、曲調に合わせた軽やかな印象になるようなシルエットにしています。パイピング部分やレースアップのリボンなど、あらゆる箇所にこの生地を使用しています。あかりちゃんはどんなに忙しくても、いつも写真などで衣装のイメージとポイントをしっかり伝えてくれて、あとは全てこちらに任せてくれます。長年信頼してくれて、いつも本当に尊敬と感謝です!(笑)」
■地方色を出した『HA!』の衣装は“NMBの代名詞的存在”
ここからは、れいこちゃんとわかぽんによる質問タイム。れいこちゃんは「『HA!』の衣装が1番好き!」と以前から話していただけあって次々と質問が飛び出し、少し押され気味のわかぽんは大興奮のれいこちゃんを見守る。
前田「『HA!』の衣装って、インパクト大ですよね。そういう要望があったんですか?」
松永「そうですね。AKB48の29thシングル『永遠プレッシャー』のカップリングで姉妹グループが1曲ずつ歌わせていただけることになり、“それぞれの地方感を出す”っていうのが絶対的なテーマだったので、『NMBは道頓堀で屋形船に乗ってダンスシーンMVを撮ります』って言われて。そのあとに楽曲をいただき、イントロを聴いた時には鳥肌が立って、完全に『これだ!』って衣装イメージが湧きましたね!これまでになかったパンチがあって、NMBらしい力強さが全開で、ドヤ顔のメンバーが一瞬で目に浮かびました(笑)。これはもう“和”でしょ!って、『絶滅黒髪少女』のMVで和から始まり、“NMBと言えば和”だと思ってます」
前田「たしかに!衣装を着たメンバーの反応はどうでしたか?」
松永「ドヤ顔勝負合戦?してました!キメ顔からのドヤ顔とか(笑)。『難波っぽい、NMBっぽい』って、みんな喜んでくれてましたね!」
前田「加入前に1番着てみたかった衣装です!」
安部「れいこはずっと『1番着たい』って言ってたよね。ほかのメンバーもよく言ってました!」
松永「この衣装といえば、どんなイメージがある?」
前田「『これがNMBです』って、誰かに紹介する時に見せる衣装第1位!って思っています」
松永「うれしいー!この衣装は、下に着用しているトップスとスカート以外、帯も含めて生地はすべてオリジナルでプリントしています。和柄は日本の夜桜吹雪をイメージし、そして前面にプリントされた今にも襲いかかってきそうなリアルな虎は、“大阪魂=NMBメンバー”をイメージしました(笑)。裏地の赤い生地にも豹柄のプリントをして、細部までNMBっぽさを出しています。24時間生地屋さんに居座って(笑)、何回も何回もサンプルをプリントしていただき、徹底的にこだわりました。そして撮影日も迫ってきて『やっと生地が無事に揃った』と思ったら、発注してた豹柄のファーに手違いがあって、このファーより若干淡い色が届いちゃったんです。淡い色だとプリント生地のインパクトが弱くなってしまいバランスが悪いので、どうしてもこの色目(採用したファー)にしたくて、必死でかき集めました。そこで諦めていたら、全然見え方が違っていたと思います。そういう細かいところまで本当にこだわって作らせていただいた衣装です。この場をお借りして、協力してくださった生地屋さんをはじめ、当時制作に携わってくれたスタッフみんなにお礼を伝えたいです」
前田「そのおかげでインパクトも強いですよね。ほかの48グループの方が着たこともありますよね?『AKB48グループ臨時総会 〜白黒つけようじゃないか!〜』の時とか」
松永「SKEさんとNMBを兼任していたことがある高柳(明音)さんも、SKEさんのライブで着てくださったりしました。AKBさんが着た時は、この衣装で自撮りされてたメンバーもいらっしゃったと現場スタッフの方が教えてくださって、すごくうれしかったです。MV撮影時は横山(由依)さんがAKBと兼任してNMBでも活動していた時期で、横山さんもこの強めの衣装をとても喜んでくださって…!」
前田「和の雰囲気がめっちゃありました。横山さんは、NMB48衣装総選挙の時もTwitterで『HA!』の衣装についてつぶやいてくださって。紅白歌合戦への単独初出場が決まった時も、あの衣装を着ていましたよね」
松永「(紅白歌合戦の)出場者会見の時にNHKさん側から衣装の指定があり、『あの衣装でお願いします』と言われたんです。それぐらい、NMB48を代表するような衣装になっていたことにすごく驚いたけど、とてもうれしかったですね」
前田「髪飾りもすごいですよね!」
松永「この衣装なら、髪飾りはとことん煌びやかに、派手で艶やかにしたいなって。センターのさやかちゃん(山本彩)の髪飾りにだけ青い羽根が入っています。ボリュームはあるけど、見た目より意外とそんなに重くないんです」
前田「意外と軽いです!ほかにこの衣装でこだわっているのはどんなところですか?」
松永「バックスタイルのお袖にも実は虎がプリントされているので、後ろからも虎がしっかり見張っています(笑)。腕を体の前に持ってくると、上下虎の顔になるのもポイントです!」
前田「ということは、衣装と振付がめちゃくちゃ合ってますよね!」
松永「衣装を見て、振付師さんが振付を考えてくれました。また、このMVでは本当に忘れられない思い出があって…(笑)。MV撮影の時は衣装が着崩れしないようギリギリまで直しに入るため、本番撮影のダンスシーンの時は屋形船の下にいたんだけど、踊り始めたらほんと半端じゃないくらい船が揺れて、船酔いとの戦いで必死でしたね!なかなかそんな経験もできないので、今ではほんといい思い出です(笑)」
前田「たしかに!撮影は夜でしたよね」
松永「ライブのライティングとはまた違って、ネオン街のライトで衣装の発色のバランスがとてもきれいでした。あと、あんなに立派な屋形船が用意されてるとは思ってなかったので(笑)、感動しました!リバーサイドには多くの人が集まっていましたが、あれはエキストラの方じゃなくて通行人の方たちでしたね!」
■アカリンの希望とテレビの企画がマッチしてできた“SDGs衣装”
続いて、わかぽんの初選抜曲でもある『恋なんかNo thank you!』の衣装の話に。
前田「形の種類が多いですが、アカリン(吉田朱里)さんから希望があったんですか?」
松永「あかりちゃんから『自分はこういうのがいいけど、ほかのメンバーはその子のスタイルやキャラクターに合わせて、ショート丈やパンツにしてほしい』という希望がありました。あかりちゃんの衣装以外だと、トップスは4型、ボトムスは4型ありますね」
前田「衣装を見ると、みんなの体型に合っていてすごいなって思います。この衣装、さらにスタイルがよく見えます!」
松永「ありがとう、靴のストームやヒールのおかげもあるよね。あかりちゃんらしくヒールは高めだけど、みんなもバッチリ踊ってくれてさすがでした!」
前田「この衣装は、めずらしく曲と振付がすでにある状態からできていますよね」
松永「この衣装はもともと作る予定はなかったんだけど、『卒コンのドレスの生地を使って衣装を作りたいね』ってあかりちゃんと言っていたら、なんとTBSさんから『CDTV ライブ! ライブ!』のためにSDGs関連で『リメイクした衣装を作ってほしい』というお話をいただいて、もうほんとにびっくり!口に出したからこその引き寄せというか、そんなこともあるんだなって思いました。さすがあかりちゃんだなと!(笑)。せっかく作らせていただけるのなら、この生地を全面に使うためにコートにして、レースアップなどをポイントで入れました」
前田「本当にアカリンさんと作り上げた衣装なんですね」
松永「そうですね。レースアップのハト目部分のグログランテープもグレーとベージュ、どっちの色もかわいいから、両方使おう!ということになりました」
安部「アカリンさんが『こうしてほしい』って、いろんな部分で言ってたんですね」
前田「アカリンさんのこだわりポイントはどんなところですか?」
松永「スタッズとか、飾りの金具は『ゴールドがいい』って言っていましたね」
前田「すでにあるドレスから衣装を作るのは大変でしたか?」
松永「聞いたらびっくりすると思うけど、ドレスの裾部分には660メートルもの生地を使用していました。それを解くところからのスタートだったので、裁断もすっごく大変だったそうで。縫製工場さんにはほんと感謝ですね」
安部「想像つかへん…」
松永「『畳む作業も何時間かかるの?』ってなるよね(笑)」
前田「制作時間もかなりかかりましたか?」
松永「初公開のギリギリまで作業していましたね」
前田「わかぽんは初選抜衣装やったけど、どうやった?」
安部「めっちゃくちゃかわいくて形もドストライクでうれしかったし、『あのドレスがああなった』って言われても信じられへん。ほんまかな?って(笑)」
松永「本来、この生地は裏地に使うことが多くて、合わせる生地との相性によっては芯を入れるとボコボコしたりして、扱うのが難しく…。でも、時間のないなかいろいろと試してくださってできた衣装なんです。工場さん、本当にがんばってくださいました!」
前田「想像しただけで大変そう。スカート丈が長めなのも若菜っぽいなって思いますね」
松永「わかぽんが着ているのは、膝下でミモレ丈までいかない絶妙な丈感。このかわいい丈感が難しいんだよね。あかりちゃんと相談しながら、メンバーに似合う形を振り分けました」
前田「プリーツスカートの衣装が好きだから、いいなって思っていました」
安部「なかなか着る機会がないからもっと着たいです!」
前田「リクアワ(NMB48 リクエストアワー セットリストベスト50 2023)で着られるといいよね!でも、トレンドのくすみ系のピンクだから、どの曲でも合いそう。おしゃれで、ほんまにアカリンさんだなって感じがします」
■「パンツスタイルの衣装に挑戦したい」!1st写真集を見た2人の反応は…?
ここからは、3人にさらにインタビュー。発売されたばかりのわかぽんの1st写真集についても迫る!
――『恋なんかNo thank you!』の衣装でわかぽんが気に入っているのはどんなところですか?
安部「袖とスカートの形がめっちゃくちゃかわいくて大好きです!」
前田「間違いない!」
――わかぽんは今後、どんな衣装を着てみたいですか?
安部「普段は長いスカートとか女の子らしいものが多いので、パンツとかも着てみたいです」
松永「『Done』の時の髪型、めっちゃ似合ってたよね!『こういう感じも似合うんだ!』って新しい魅力を発見しました。なので、パンツ姿もイメージが湧きますね!」
――NMBは背が高いメンバーが多いから、みんなパンツも似合いそうですね。
前田「昔と比べて、背が高いメンバーが増えましたよね?」
松永「こじりん(小嶋花梨)を筆頭に、スタイルもシュッとしている子が多くなったよね。パンツ衣装、作らせてもらいたいな〜」
安部「ぜひお願いします!なかなかこういう希望を伝える機会がないので、よかったです」
――わかぽん、1st写真集『愛される予感』の発売、おめでとうございます!見どころを教えてください。
安部「この写真集には、自分のやりたいこととか和の感じとか、今まで『こういうの似合うよね』って言われていたことを詰め込みました。大人っぽいカットが多めなので、ほかのメンバーの写真集とはまた違う、自分の色が出せたのかなと思います」
前田「昨日見せてくれた、ベッドで撮ってる写真もいいよね!」
安部「たしかに、そのあたりが1番大人っぽいかも。(写真集を見ながら)あとはこのへんのヌーディーなところとか…」
松永「(写真集を覗き込んで)結構際どいなぁ。わっ、えっ、あ〜、着てる!?」
安部「着てます(笑)」
松永「この写真、かわいい〜!」
安部「湯揉みの格好は好評でした。似合いすぎて、撮影に協力してくださった草津の方に『ここで働いてください』って言われるくらい(笑)」
――写真集の撮影はどうでしたか?
安部「普段着ている衣装とは全然違うものを着られて、楽しかったです!」
――れいこちゃんは同期ですが、わかぽんの写真集を見てどうでした?
前田「若菜とはNMBの加入前、ドラフト生の時からチームが同じだったので、『大人になったんやな』って思いました(笑)。知り合った頃は部屋の隅で1人で三角座りしてたような子が、大きくなったんやなって…」
松永「今、加入して6年目?最初は全然雰囲気違ったよね、髪も長かったし」
安部「入った時は高校生だったので、自分でも変わったなと思います」
松永「大人しいイメージでしたね。でも落語もやってるし、当初から不思議な魅力がありました!」
れいこちゃんの大好きな『HA!』の衣装、わかぽんの記念すべき初選抜衣装となった『恋なんかNo thank you!』の衣装。2人の熱量に負けないくらい、松永さんも熱を持ってたっぷりと話してくれた。次回も、引き続きれいこちゃんが案内人を担当。これまたインパクト抜群な、あの懐かしの衣装を紹介する。お楽しみに!
取材・文=上田芽依
撮影=福羅広幸
【松永麻里 プロフィール】
東京生まれ。1995年に大妻女子大学短期大学部家政学科卒業。
奇抜な衣装とメイクでパフォーマンスユニットとして活動後、2010年12月よりNMB48の衣装を担当。現在は吉田朱里など、卒業したメンバーのスタイリングも行っている。