(C) 2022 - UNE HIRONDELLE PRODUCTIONS, PATHE FILMS, ARTÉMIS PRODUCTIONS, TF1 FILMS PRODUCTION

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この週末、何を観よう……。今週公開の作品の中から、映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、4月7日(金)より公開されているヒューマンドラマ、『パリタクシー』。気になった方はぜひ劇場へ。

【写真】『パリタクシー』場面写真

〇ストーリー
パリのタクシー運転手のシャルルは、人生最大の危機を迎えていた。金なし、休みなし、免停寸前。このままでは最愛の家族にも会わせる顔がない。そんな彼のもとに偶然、あるマダムをパリの反対側まで送るという依頼が舞い込む。92歳のマダムの名はマドレーヌ。終活に向かう彼女はシャルルにお願いをする、“ねぇ、寄り道してくれない?”。人生を過ごしたパリの街には秘密がいっぱい。寄り道をする度、並外れたマドレーヌの過去が明かされていく。そして単純だったはずのドライブは、いつしか2人の人生を大きく動かす驚愕の旅へと変貌していく!

〇おすすめポイント
ケン・ローチの『家族を想うとき』(2019)やトマ・ピケティの著書を基にしたドキュメンタリー映画『21世紀の資本』(2019)でも描いていたように、それぞれがフリーランスとして働くことの問題点がありながらも、そこから脱することができない経済不況、雇用形態の悪循環というのは、ヨーロッパだけに限らず、日本においても深刻な問題となっている。

主人公のシャルルもフリーランスのタクシー運転手であり、1日12時間、週休1日という過酷労働の中でも生活がままならない、家族と過ごす時間もない、常にギリギリの状況で生活している。つまりシャルルが特殊な設定というわけではなく、ヨーロッパ全体に広がる格差社会の波を受ける象徴的なキャラクターとなっているのだ。

そんなシャルルのもとに、ある日、上品そうに見えるマダムにパリの街をドライブして欲しいと頼まれる。回転率を上げたいと思っているシャルルにとってマドレーヌは迷惑な客であり、一見典型的な富裕層に見えるだけに、言葉に現れないが、偏見も混じっているように感じられる。

しかし、ともに時間を過ごし、何の不自由もなさそうなマドレーヌが体験してきた、壮絶な過去を知ることでシャルルも少しずつ見方に変化が生じてくる。

違ったかたちではあるが、シャルルもマドレーヌもフランスが抱えている社会問題が根底にあるキャラクター構造になっている。

育ちや環境も違うように見えるふたりが車内というフィールドで対話をすることで、偏見というものが、いかに人と人が理解する場や時間を遠ざけてしまっているのかということを思い知らされるものとなっているのだ。

〇作品情報
監督:クリスチャン・カリオン
出演:リーヌ・ルノー、ダニー・ブーンほか
2022年/フランス語/91分/スコープ/カラー/5.1ch/原題:Une belle course
日本語字幕:星加久実
配給:松竹
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
公式サイト:movies.shochiku.co.jp/paristaxi/
4.7(Fri) 新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町ほか全国公開

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