あなたは「かける」派? 「かけない」派?

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 唐揚げを巡る「レモンをかける・かけない」論争。「レモンをかけた方がさっぱり食べられる」「カラッと揚がった感じがレモンで損なわれるのが嫌」など、さまざまな意見がありますが、レモンをかけることで“栄養面”に何らかの違いはみられるのでしょうか。管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。

レモン自体の栄養価が高い

Q.そもそも、レモンにはどのような栄養素が含まれているのですか。

岸さん「レモンの栄養といえば、酸っぱさのもとであるビタミンCやクエン酸が有名です。レモンには可食部100グラムあたりで100ミリグラム、果汁100ミリリットルあたりで50ミリグラムのビタミンCが含まれます。レモン1個分の果汁では個体差がありますが、ビタミンCは約20ミリグラム摂取できます。強い抗酸化作用を持ち、コラーゲンやホルモンの合成に関与する他、鉄の吸収を助けたり、皮膚や粘膜を健康に保ったりする働きがあります。

クエン酸は、体内に吸収しにくいカルシウムやマグネシウム、鉄といったミネラルの吸収をサポートしたり、殺菌効果で細菌の繁殖を抑えたりします。また、『キレート作用』によって吸収されにくいミネラルを包み込むことで、吸収しやすい形に変えることができます。

また、レモンには、ナトリウムと一緒に細胞の浸透圧の維持、臓器・筋肉の調整、神経刺激の伝達といったさまざまな調節機能を担っているカリウムも多く含まれます。カリウムには余分なナトリウムの排せつを促す効果もあり、むくみや高血圧予防にぴったりな栄養素です。レモンの可食部100グラムあたり約100ミリグラム、レモン1個分の果汁には約40ミリグラム含まれています。

また、栄養素とは違いますが、強い抗酸化作用のあるポリフェノールや、レモンの皮に含まれ、アロマや香料にも使われるリラックス効果のある『リモネン』も特徴的です」

Q.「唐揚げにレモンをかける」ことで、栄養面に何らかの変化はみられるのでしょうか。

岸さん「レモンには『エリオシトリン』というポリフェノールの一種が含まれています。果皮と果汁中に含まれますが、特に果皮に多いです。抗酸化作用が強く、最近の研究では腸での脂肪吸収を抑える働きがあり、肥満や糖尿病の予防につながることが分かってきました。

脂肪の吸収を抑える効果は、唐揚げを食べる際には罪悪感が減り、うれしいことかもしれません。しかし、そもそも唐揚げはカロリーや脂質が非常に高い料理なので、エリオシトリンの効果に期待し過ぎず、全体の食事バランスに注意して食べるようにしましょう。

なお、レモンを絞るときは皮を下向きに絞ると、果皮部分に多く含まれるエリオシトリンの効果を高めるため、よいとされています」

Q.栄養の観点からみたとき、「唐揚げにレモン」はお勧めできますか。

岸さん「お勧めできます。先述した通り、レモン自体の栄養価が高く、かけることで単純にレモンの栄養素が摂取できること、唐揚げ(鶏肉)に含まれるマグネシウム、カルシウム、鉄などのミネラルがクエン酸によって吸収されやすくなること、そしてその効果は、同時に摂取した他のおかずに対しても同じように作用すると考えられるため、レモンがあった方が栄養価は高くなるでしょう」

Q.その他、調理におけるレモンの「プラスの効果」はありますか。

岸さん「レモン果汁は肉の保水性を高める働きがあるので、肉を調理する際にレモンに漬け込むことによって、しっとりとした食感に仕上げることができます。

唐揚げも、食べるタイミングでレモンをかけることとプラスして、揚げる前にもレモンに漬け込むことでよりジューシーな仕上がりになり、おいしさの部分でも一役買います。胸肉など、脂肪の少ない部分でもやわらかく調理することができるでしょう。また、レモンのクエン酸は脂質の酸化臭を抑制するため、肉や魚の生臭さをマスキングすることができ、臭み消しとしても使えます。

レモン特有の酸っぱさや爽やかな香りは大いにアクセントとなり、塩味を引き立ててくれるので、塩分を気にする人の減塩メニューに取り入れることで、おいしく減塩することができます」