日本全国の絶品「駅弁」

 駅弁界の三賢人とJR東京駅弁販売店「駅弁屋 祭」が、旅をワクワクさせる弁当を紹介。2023年春注目の逸品が名乗りを上げた!

「明治時代より100年以上の歴史があるのが駅弁文化です。これだけ外食産業が発達した現代でも、人の移動のお供として駅弁が愛され続けるのは、弁当の枠に収まらないビジュアルの豊かさにもあると思います。たんにおなかを満たすだけでなく、食べていて楽しい、見ても楽しいという多角的な楽しみ方を追求してきたのが駅弁文化だと思います。撮影していると、鉄道同様に駅弁にも被写体としての魅力があるのを実感します」

 こう、駅弁の魅力を力説するのは「日本一の鉄道写真家集団」として知られるレイルマンフォトオフィスの山下大祐氏。山下氏たちは、鉄道写真を撮る傍ら、行く先々で駅弁の写真も撮り続け、これまでに4000個の駅弁写真を撮影してきたという。

 同氏が語るように駅弁の歴史は長い。駅弁は1885年に宇都宮駅で誕生、138年の歴史を持つ。

「宇都宮駅の駅弁は、ゴマをふりかけただけの梅干し入りの握り飯2個とたくあんを、竹の皮で包んだものでした。現在のような箱入りの駅弁が誕生したのは1889年。姫路駅で発売された『幕ノ内弁当』が現代まで続く駅弁の元祖といえるでしょう」

 こう駅弁のオリジンを語るのは「食」「郷土」にまつわる風俗・民俗・文化を中心に取材活動を続ける駅弁愛好家の小林しのぶ氏。同氏はホテルや旅館で年間約150泊する生活を続け、駅弁を40年で5000個以上食べたことから「駅弁の女王」の異名をとる人物だ。同氏は「旅の道中の食事ではなく、お酒のつまみとして、駅弁にハマった」と駅弁愛を語る。

「焼き物、煮物、フライ、漬け物まで詰められ、時には寿司やおこわまで入っている。家でこれだけのおつまみを揃えようとしたら大変な手間ですが、駅弁をひとつ買えばすべて満たされるんです。私にとって駅弁は、どこでも万能な酒のつまみです。旅行中でなく、家でも食べていますね」(小林氏)

 また、アダルトメディア研究家の安田理央氏は、駅弁愛好家としても知られる。同氏は「駅弁は家でしか食べません」という変わったスタイルの愛好家だ。その理由は「デパート催事場」にあった。

「僕は東京・新宿の京王デパートの催事場のみで駅弁を買うという楽しみ方を25年間続けているんです。これまで500個以上の駅弁をすべて京王デパートのみで買いました。各地の名物をギュッと小さく箱の中に濃縮した駅弁というフォーマット自体が、最高にワクワクするし、好きなんです。全国の味が旅をしなくとも楽しめるのですから、駅弁催事場って、本当に最高の場所なんですよ」(安田氏)

写真・木村哲夫、レイルマンフォトオフィス