この記事をまとめると

バイクの魅力のひとつに渋滞もすり抜けで回避できることがある

バイクのすり抜けは追い越しと違って違反とはいえない

■すり抜けをする場合は事故リスクが増すかどうかを意識するようにしたい

二輪車のすり抜け行為は道交法違反とはいえない

 バイクの魅力は目的地に早く着けること、というイメージが強い。とはいえ、制限速度で走っている限り、タイヤの数が4つだろうがふたつだろうが到着時刻が早まることはないはずだ。二輪が速いのは、主に「すり抜け」行為によって渋滞を回避したり、信号待ちで前に出ることができるからにほかならない。

 それが二輪の魅力という意見もあろうが、「すり抜け」の是非については四輪しか運転しないドライバーと、二輪に乗っているライダーで意見が別れがちでもある。すり抜けに寛容なドライバーもいれば、「すり抜けは違法行為だ」と糾弾するドライバーもいる。たしかにすり抜けというのは違反行為に感じる部分もあるが、法律はすり抜け行為自体を禁じているわけではない。

 とくに信号待ちなどで車両が停止している状況において、クルマの脇をバイクが「すり抜け」ていくことについては、違反行為となる要素はじつは少ない。白線などの区画線をウインカーを出さずに跨いだり、黄色の車線変更禁止エリアで車線をまたぐことは違反となり得るが、道路交通法に抵触しそうなのはそれくらいだったりする。

 左側からの追い越しは禁止では? という指摘もあるが、たとえば歩道がある道路の場合、路肩を原付バイクが走っていて、そのままクルマの前に出るのは車線を変えていないので、追い越しではなく、追い抜き行為である。

 基本的にはクルマが信号待ちで停止していれば、違反に問える要素がほとんどないといえる。

 もっとも、リアルワールドでの「すり抜け」行為を見ていると、原付バイクや自転車といった車両は左側からすり抜けていることが多いのに対して、250ccクラスの軽二輪から上のバイクはセンターライン寄りの右側からすり抜けていることが多いように感じられる。

 これはライダーのなかに、左側から追い越すのはNGという意識があるのかもしれないが、ドライバーからすると、右からも左からもすり抜け行為によって前に出られるというのはストレスを感じる部分といえるだろう。

すり抜けは二輪車の専売特許だがリスクを伴うことを肝に銘じて

 筆者は、日常的に自転車にも乗っているし、原付二種バイクや大型バイクにも乗っている。もちろん、四輪を駆るドライバーでもある。そうした複数の視点で考えると、信号待ち以外でのすり抜けというのは、おすすめできないというのが結論だ。それは事故のリスクを軽減するためだ。

 まず、クルマも走行しているときのすり抜けが危険なのは、クルマが車線変更をしたり、右左折する可能性があるからだ。前方のクルマの動きを予見するのが難しいシーンにおいては、すり抜けは接触事故のリスクが大きい。とくに右左折は、交差点以外でも駐車場に入ろうとして突然に行うことがあるので市街地でのすり抜けはリスクが大きいといえる。

 個人的には信号待ちであっても、大型バイクに乗っているときは、よほど路肩が広い道でもない限りはすり抜けをしないようにしている。バイクの種類にもよるが、やはり低速走行では不安定になりやすく、ドアミラーとの接触を気をつけながらすり抜けるのは難易度が高いからだ。

 原付バイクや自転車に乗っていて路肩からすり抜けをするときに気をつけたいのは、ドアが開くこと。とくに渋滞していると、信号待ちで助手席や後席の乗員が急いで降りてくることがある。それに気づかず、路肩をピューンと走っていると接触事故になりかねない。

 また、流れをリードできるだけの動力性能を持っているバイクであれば信号待ちですり抜けて、先頭に出てもリスクは大きくなりづらいが、自転車などで前に出ることはおすすめしない。なぜなら、前に出てもすぐクルマに抜かれることになるからだ。渋滞しているのならまだしも、普通に流れている道路状況において信号待ちのクルマの前に出ることは、自車が追い抜かされる回数を増やすだけだ。とくに車幅の広いトラックの前に出るのは、追い越し時の接触リスクを増やすだけといえる。

 いずれにしても、自転車やバイクは体をむき出しで走っているため、事故が起きたときに被害を受ける可能性が高い。その意味では、そもそもリスキーな乗り物なのだから、事故を避けるように乗るのがベターといえる。

 少しくらい早く到着するよりも、怪我なく確実に目的地を目指すほうが重要だ。バイクや自転車に乗る際は、自分のスキルや車両のパフォーマンスから考えて、すり抜けすることで事故リスクが増すかどうか意識するようにしたい。