「風邪をひいたらどうする?」世界の民間療法を調べたら、なんかすごかった

新型コロナウイルスにもまだまだ油断はできないなか、万病の元ともいわれる風邪だって見くびってはいけないものである。特効薬がない病気だけに俗にいう民間療法も数多あるのが風邪。それをいろいろ調べてみると奥が深すぎた。

コロナか、ただの風邪か。
体調の異変に気づいたらどうする?

正月早々、軽微ではあるものの、鼻水が出たり頭痛がしたり全身がだるかったりという風邪っぽい症状に見舞われた。

いうまでもなく、当節、風邪っぽい症状が出た際にもっとも懸念すべきは、新型コロナウィルスへの感染である。

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僕は昨年7月、第七波襲来時にまんまとコロナに罹患し生還した体験があるので、そのときの症状を思い出してみる。

今回の場合、あのときのような激烈にして急速な病状の悪化、特に発熱や喉の痛みなどの特有症状は見られなかったので、これはコロナではなくただの風邪だろうという感覚はあった。

でもウィルスの変異株ごとに症状は違うだろうし、この年始には後期高齢者の両親や義父と会う予定もあったので、念のためcovid-19用抗原検査キットを使ってみることにした。

コロナにかかったときに薬局でたくさん買い込んでいたものの、途中で陰性になったために余っていたもののひとつだ。

結果は案の定「陰性」。

結果が出るまでは少しドキドキした photo:Sato Seijiro

よかったよかった、やはりただの軽い風邪だったと胸をなでおろしたものの、症状はおさまったわけではなく、さてどうしたものかと考える。

ご存知のように医学的には「普通感冒」と呼ばれる、ほとんどが種々のウィルスによって引き起こされる“ただの風邪”に特効薬はない。

子供の頃、何かの本で読んで「風邪の特効薬を発明したらノーベル賞もの」と知り、へえ~と思ったものだが、現在もその状況は変わらず、いわゆる対症療法で症状を抑えつつ、自分の免疫システムが体内に侵入したウィルスをやっつけてくれるのを待つしかないのだ。

そして、症状が比較的激しかったら、病院に行って薬を処方してもらうところだが、今回のような軽い鼻風邪の場合、病院へ行くべきかどうかも微妙なところだ。

具合の悪い人が集まる病院に行けば、コロナの感染リスクも高まるわけだし。

そこで出てくる次の選択肢が、対症療法薬である市販の総合感冒薬を服用しつつ、昔からある“おばあちゃんの知恵袋”的な民間療法を試してみることである。

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日本には昔から、風邪に対するいくつもの民間療法が伝えられてきた。

・ネギを首に巻いたり、鼻に当てたりする

・玉子酒を飲む

・ハチミツを混ぜたショウガ(またはレンコンやダイコン)のおろし汁を飲む

・塩を溶かしたお湯でうがいをする

さらには

・黒く焼いた梅干しを熱い湯に注いで飲む

・卵黄に酢と黒砂糖を混ぜて飲む

・頭痛には梅干しをこめかみに貼る

・すりおろしたりんごを食べる

・くず湯を飲む

などもある。

「熱が出たら入浴を控え、暖かくして寝る」というのも、日本で普及している民間療法のひとつと言えるだろう。

数えきれないほどある、世界の「これを飲め!」系民間療法

幸いにも僕の“ただの軽い風邪”は、『パブロンゴールドA』を朝昼晩と服用し、ネギを鼻に当て、塩うがいをし、暖かくしてとっとと寝たら翌朝にはすっかり治っていた。

「何が効いたんだろう? まあ一番は“早めのパブロン”だろうな」と思いつつ、いつも風邪をひいたときに実践しているいくつかの“おばあちゃんの知恵袋的民間療法”も、確かに症状を和らげる効果があったと再認識。

やはり民間療法は馬鹿にできないと思ったので、この際、世界各国に伝わる様々な民間療法を調べてみた。

するとなかなか面白かったので、ここに発表したいと思います。

●「酒を飲め!」系

日本に古来から伝わる玉子酒(温かい日本酒にとき卵を混ぜた酒)と同様、世界にはアルコール類を飲んで風邪を撃退する方法が広く普及している。

用いる酒にお国柄が反映されているようだ。

・ホットワインを飲む(イタリア、フランス、ドイツなど欧米各国)

※ホットワインにコショウやハチミツを入れたり、砂糖を入れて玉子をといたりする方法も。

・ビールにハチミツを混ぜて飲む(北欧諸国)

・ビールを温めて飲む(ドイツ)

・コニャックをミルクで割って飲む(イタリア)

・焼酎に唐辛子を混ぜて飲む(韓国)

・ウォッカにコショウを入れて飲む(ロシア)

・ラム酒のお湯割りを飲む(フランス)

・ラキ(バルカン半島に伝わる強い酒)を温めて飲む(アルバニア)

・ラム酒やトラピストビールを飲む(ベルギー)

・ピスコという強い酒にレモンを絞り飲む(ペルー)

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●「コーラを飲め!」系

もともとは19世紀にアメリカの薬剤師が発明した薬用飲料であるというイメージが根強いためか、風邪をひいたらコーラを飲む習慣がある国は多い。

またコーラに限らず、炭酸飲料やジュース類が効くと信じられている場合もあるようだ。

・コーラを飲む(フランスはじめとするヨーロッパ、アジア、南米諸国まで広く普及)

※温めたコーラの方がより効果的とされることが多いが、冷たいものでもいいようだ

・ホットコーラにコリアンダーを入れて飲む(スリランカ)

・ホットコーラにレモンを入れて飲む(シンガポール)

・ホットコーラにレモンとショウガを加えて飲む(香港)

・レモンジュースを飲む(マレーシア、パラグアイなど多数)

・レモネードを飲む(スペイン、チリなど)

・レモンやハチミツを溶かしたオレンジジュースを飲む(イラン、ヨルダンなど)

・温めたジンジャーエールを飲む(カナダ)

・ココナッツジュースを飲む(ソロモン諸島、バングラディシュなど)

●「お茶を飲め!」系

緑茶、紅茶、ハーブティーに限らず、各種のお茶を飲む民間療法も、世界各国で用いられている。

煎じ汁やその他のドリンク類もここでご紹介しよう。

・カモミールティーを飲む(ドイツ)

・紅茶にショウガを混ぜて飲む(インド、スリランカ)

・ローズヒップティーを飲む(インド)

・菩提樹ティーを飲む(ロシア、トルコ)

・チキンスープを飲む(アメリカ、カナダ、チリ、ベネズエラなど多数)

・牛乳にハチミツをたっぷり入れ、ウィスキーを少し垂らす(イギリス)

・ローリエの葉とショウガを入れた熱い紅茶を飲む(バングラディシュ)

・コリアンダーとショウガの煎じ汁にレモン葉を入れて飲む(スリランカ)

・ニンジン茶やハチミツ湯を飲む(韓国)

・熱いアーモンドスープを飲む(台湾)

・グアバ葉の煎じ汁やカラマンシーのお湯割りを飲む(フィリピン)

・温めた牛乳に生卵を入れたものを飲む(インドネシア)

・レモンと砂糖を入れたお湯を飲む(ベネズエラ)

・ハチミツ入り牛乳を飲む(フランス、スペインなど)

・ハチミツを加えたレモンのお湯割りを飲む(イギリス)

・熱い牛乳にバターと重曹を入れて飲む(ロシア)

・タマネギの薄切りをゆで、ハチミツを加えた汁を飲む(スイス)

・ドクダミ、赤しそ、桑の葉の煎じ汁を飲む(台湾)

・ただのお湯を大量に飲む(中国)

photo:barb howa/flickr

このほかにも、世界には様々な“飲み物系”民間療法があるが、調べれば調べるだけ出てきてキリがないので、おおよその傾向が見えたこのあたりで切り上げよう。

世界には、いろんなおばあちゃんがいるものだ。

薬効成分のある食材の使い方や入浴方法にも、
各国のお国柄が反映されていた

●最強はショウガかニンニクかレモンかハチミツか

前項にも少し出てきたが、風邪を撃退するための食材として、世界中で用いられているのがショウガとニンニクとレモンとハチミツだ。

だがその使い方は、お国柄によってまちまちのようで……。

・生ニンニクを糸で数珠つなぎにして首にかける(ブラジル)

・生ニンニクを細切りにしてそのまま食べる(ミャンマー)

・ハチミツを身体に塗って叩く(モンゴル)

・レモン葉の煎じ汁を飲む(フィジー)

・クローブの花とショウガの煎じ汁を紅茶に入れて飲む(インド)

・粉末ショウガを湯に溶いて飲む(インドネシア)

・ショウガと砂糖を煮込んだ熱い湯を飲む(ホンジュラス)

・ショウガ、コショウ、タマネギ、トマト、肉などの入ったスープを飲む(ガーナ)

・乾燥ショウガを煎じた湯で紅茶を入れ、シナモンを加えて飲む(エチオピア)

・すりおろしたショウガを湯にといて飲む(タンザニア)

・ショウガジュースを飲む(台湾、ギニアなど多数)

・頭痛のときはレモンをかじる(ヨルダン)

photo:danny O./flickr

●風邪に効く食べ物にも諸説あり

風邪をひくと食欲が減退するものだが、民間療法的にはやはり、そんなときにこそ食べて栄養をつけるのが一番ということになる。

無理矢理にでも食べるとしたら、どんなものがいいのだろう……。

・野菜やヒョウタン、青く固いバナナなどを煮込んで食べる(バングラディシュ)

・トウガラシを入れたモヤシ料理を食べる(韓国)

・発熱したときは、薄切りにしたスターフルーツに塩をふって食べる(台湾)

・ココナッツミルクを入れたお粥を食べる(フィリピン)

・のどが痛いときはホウズキを食べる(ペルー)

・生のアロエを食べる(ロシア)

●水浴? マッサージ? おまじない? その他の行動系

日本では湯冷めをすると悪化するので、風邪のときには入浴を避けた方がいいとされてきたが、最近ではむしろお風呂で体を温めた方がいいとも言われることも多い。

世界に目を向けると、もっと混乱しそうだ。

・発熱時はぬるいシャワーを浴びる(欧米各国)

・発熱したら薄着をして水風呂に入る(アメリカ)

・熱が出たら熱い風呂に入る(台湾)

・お風呂にはいつもより長く浸かる(フランス)

・背中にオイルを塗ってヘラでこする(ベトナム)

・体にタイガーバームを塗りコインでこする(インドネシア)

・発熱時、アップルサイダービネガーを染み込ませた靴下を履いて寝る(フランス)

・ユーカリの葉を熱いタオルで巻いて、胸の上に乗せる(オーストラリア)

・ユーカリの葉を煎じて蒸気吸入(エチオピア)

・パームオイルに樟脳を混ぜたもので全身マッサージ(フィジー)

・上半身を酢でマッサージ(リビア)

・発熱時は水で頭を洗う(バングラディシュ)

・玉ネギと岩塩をつぶして扁桃腺に直接塗りつける(バングラディシュ)

・発熱時は沸騰した湯にバームを入れその蒸気を吸入(パキスタン)

・生バターを熱してリキッド状にしたものを胸に塗りマッサージ(インド)

・背中を乾布摩擦(台湾)

・グアバの葉を額に貼る(フィリピン)

・厚着をして汗をかく(ベネズエラ)

・熱が出たときはサウナや水風呂に入り、アルコールで体をふく(スペイン)

・高熱時は冷水シャワーを浴び、アルコールで体を拭く(ペルー)

・薄切りにした生のジャガイモを額に乗せる(ペルー)

・軽い発熱時は水浴をしてから寝る(タンザニア)

・アルコールと塩を入れた冷水に足をつけて熱を下げる(イラン)

・鼻風邪はアロエ汁を鼻腔に入れる(ロシア)

・水をたくさん飲み、入浴せずに休む(イギリス)

愛用のタイガーバームで試してみようかな photo:Sato Seijiro

行動系は特に、その国特有の気候などとも関連がありそうで、そのまま日本で実践しても逆効果のものもあるかもしれないので気をつけたい。

今回ご紹介した世界の民間療法はごく一部で、まだまだたくさんの風邪撃退法があるようだ。

どの方法で治すかは自分次第。

世界はまだまだ広いんだな、ということだけ理解できたような気がする。

文/佐藤誠二朗