家庭内で保護者が子どもに対して行う教育は、家庭教育といいます。家庭教育の目的は、人が生きていくうえで欠かせない基本的な生活習慣やマナーなどを子どもに身につけさせることです。

この記事では、家庭教育とは具体的にどのようなものであるか説明します。家庭教育と学校教育の違いについても解説するので、ぜひ参考にしてください。

家庭教育とは

文部科学省では、「家庭教育は、すべての教育の出発点」としています。子どもは、家庭で家族とふれあうなかでさまざまなことを学んでいきます。家庭教育によって子どもが身につける基本的な生活習慣やマナーなどは、社会で生きていくために必要不可欠なものです。

また、家庭教育には、子どもの幅広い感情を育む役割もあります。家族のなかで信頼関係を築き、思いやりをもって相手を尊重しながら過ごしていく経験には重要な意味があります。家族との関わりによって豊かな情操を身につけたり、自立心を確立したりすることも大切です。

家庭は子どもが最も安心できる場所であり、家庭教育は子どもの将来に対して大きな影響を与えると考えられています。

出典:子供たちの未来をはぐくむ家庭教育|文部科学省

家庭教育の例

家庭教育の進め方は、明確に定められているわけではありません。そのため、家庭によって家庭教育の方針や内容もさまざまです。ここでは、家庭教育の一例を紹介します。

子どもの居場所をつくる
家庭教育では、子どもの居場所を作って安心できる環境を整えることが重要です。家庭は子どもが育つ場所であり、日々の生活を通して基本的な生活習慣や物事に対する価値観を学ぶ場所でもあります。

生活習慣や価値観は、子どもの人生を支える基礎になります。よって、家庭教育を進めるうえでは、安心できる子どもの居場所を作るところから始めましょう。家庭教育では子どもにさまざまなことを教えなければなりませんが、単に勉強させるのではなく、家庭だからこそできる内容に取り組むべきです。

子どもを見守る
子どもは、親に見守られていると実感すると愛着を感じます。親から尊重されているという感覚は、子どもの自己肯定感を育む大きな要素です。自己肯定感が高ければ、子どもは自ら挑戦して苦難を乗り越えられる人間へ成長できます。家庭教育においては親が子どもを見守り、自主的な行動をサポートする姿勢が望まれます。

乳幼児期は親に対する子どもの愛着が形成される時期であるため、特に意識的に子どもを見守る必要があります。

生活リズムをつくる
健康に生きていくためには、子どものうちから正しい生活リズムを身につけることが大切です。具体的には、毎朝同じ時間に起き、1日3回バランスのとれた食事をとるのが理想です。また、体をしっかり動かし、夜は決まった時間に寝るのも重要です。

正しい生活リズムは体の調子を整えるだけでなく、抵抗力を高める効果もあります。集中力も高まるといわれているため、子どもがさまざまな知識を身につけやすくなります。

家族でふれあう
家族同士のふれあいも、家庭教育の一つです。子どもは家族とのふれあいを通じ、コミュニケーションの方法を理解して身につけていきます。

家族でふれあうといっても、特別なことに取り組む必要はありません。たとえば、一緒に食事をしたりその日の出来事を話したりするだけでも、家族同士のふれあいになります。ふれあいは家族のきずなを深めるためには欠かせないものです。

一緒に遊ぶ・体験する
子どもにとって、遊びや特別な体験は想像力や思考力を養う手段です。そのため、積極的に子どもと一緒に遊んだり、さまざまな体験をしたりするのも家庭教育の一環といえます。たとえば、子どもと絵本を読んだり、一緒にスポーツを楽しんだりするとよいでしょう。さらに、地域のイベントやボランティア活動に参加するのもおすすめです。

子ども自身が何に興味をもっているかを考慮しつつ、一緒に楽しい時間を過ごしてください。

家庭教育と学校教育の違いとは?

家庭教育は、学校教育とどのような違いがあるのでしょうか。家庭教育を行ううえでは、それぞれの違いを理解しておくことも大切です。ここでは、家庭教育と学校教育の違いについて解説します。

家庭教育は保護者が行う教育
家庭教育は、親が自分の子どもに対して行います。それぞれの親の考え方は異なるため、家庭教育の方針や内容は家庭によって多種多様です。学校教育のように、一定の内容が記されているカリキュラムや教科書などはありません。基本的に、生きていくために必要なことを日常生活のなかで教えます。

また、家庭教育が行われる期間は、子どもが生まれてから自立するまで長期にわたります。

学校教育は国が行う教育
学校教育は、国がすべての国民を対象として定めた教育制度で、具体的な計画を立て、組織的に取り組むものです。内容は学習指導要領によって基準が定められており、子どもの年齢に合わせてまとめられています。全国で一律の教育内容が実施されている点も大きな特徴です。子どもは学校に行き、ほかの子どもと一緒に教師から教育を受けます。

学校教育で教わるのは、国語、算数、理科、社会などの教科だけではありません。集団生活を通し、社会性や表現力なども身につけます。

家庭教育を行うためのポイント

家庭教育を行ううえでは、意識したい点がいくつかあります。家庭教育には明確な決まりがないからこそ、無理をせず自分たちのペースで取り組むことが大切です。ここでは、家庭教育を行うためのポイントを解説します。

時間的・精神的なゆとりを持つ
家庭教育には、時間的・精神的なゆとりも必要です。毎日の生活が忙しいと、親と子どもが一緒に過ごす時間が少なくなりがちです。だからこそ、まとまった時間をとれるときは、子どもとじっくり向き合って一緒に過ごしましょう。

まとまった時間があまりとれない家庭でも、工夫次第で家庭教育の時間を確保できます。たとえば、子どもとゆっくり会話する時間がないなら、メモや交換日記などによりコミュニケーションをとるのも一つの方法です。

一人で抱え込まない
家庭教育の役割分担は明確にしすぎず、状況に応じて両親が対応するとよいでしょう。性別などにとらわれないようにし、それぞれが得意なことを教えましょう。

ただし、家庭によって状況は異なります。共働きの家庭もあれば、片方の親が単身赴任をしている家庭やひとり親の家庭もあるでしょう。どのような場合でも、家庭での子育てについて悩んだときは一人で抱え込むことはありません。周囲の頼れる人や公的機関などに相談してください。

まとめ

家庭教育は家庭によって異なります。重要なのは子どもが安心できる居場所を用意し、毎日の生活や特別な体験を通して生きていくための知識やスキルを教えることです。そのためには、子どもとのコミュニケーションを密にし、きずなを深めるところから始める必要があります。家庭教育について悩んだときは、周りに相談しながら進めることも大切です。今回紹介した例を参考にしつつ、家庭教育に取り組んでみてください。