60代のうちに「終の棲家」を決めた方がいい理由。子どもと同居するなら注意すべきこと
60代という年齢になると、体のこと、お金のこと、いろいろ備える人も多いはず。でも、「60代からやりたい放題に生きる方がいい」と提唱するのは、話題の書籍『60歳からはやりたい放題』(扶桑社刊)を上梓した精神科医の和田秀樹さん。今回は、これからの生き方について教えてくれました。
60代、これからの時代の生き抜き方
人生100年時代、60代はどう老後の計画を立てるとよいのでしょうか? 今回は、終の棲家のこと、ご近所さんとのつき合いのことを、和田さんが提唱します。
●終の棲家は60代までに決めておこう
終の棲家を決めて引っ越しをするなら、できるだけ60代までには行う方がよいでしょう。体力もさることながら、70代、80代は脳の機能の低下も含め、新しい環境に慣れるのが難しくなるからです。
同じような話として、親を子どもが引き取る際に、環境への不適合を起こすことはよくいわれることです。もともと軽度な認知症だった人は、症状が重くなることもあります。現在の環境を変えるということは、高齢になるほど大変になるケースが多いです。
もし、子どもが一緒に住むことを提案してきたのであれば、自分自身が住んでいる家に一緒に住んでもらう方がよいでしょう。
終の棲家を決めることは、いわゆる「終活」の一環として語られることが多いのですが、今いわれている終活の多くは、自分のためではなく、残された家族のために行う側面が強い気がしています。
しかし、年を取ることで迷惑をかけることは、だれしも当たり前のことです。終活としてとらえるのではなく、残りの人生をどこで楽しく暮らしていけるかを楽しく考えて、実現してください。
●今の時代こそ、嫌われることを恐れてはいけない
昔と今の時代で大きく違うのは、介護保険ができたことです。昔は、村八分にされるような嫌われ者でいると、周囲の人のサポートが受けられず、路頭に迷うことがありました。村八分になったおじいさんが、いざ介護が必要になったとき、周囲の人がだれも助けてくれずに困った事態になることも多々ありました。
だからこそ、ご近所づき合いが大切になっていたわけです。
しかし、今は要介護認定されれば、介護支援を受けることができます。つまり周囲のサポートがなくてもなんとかなるので、「嫌われてもいい」と開き直ることができる時代です。
時代が変わったのに、「昔と同じようにご近所の様子をうかがわなくてはいけない」「周囲の人と仲よくしなくてはいけない」という考えだけが残ってしまい、自分を殺して、周囲に合わせようとする人が高齢になればなるほど多いようにも思います。それでは一生、遠慮の人生になってしまいます。
でも、これまでご自身を押し殺して生きてきた人ほど、「どうやって自分らしく生きられるのか」と思うかもしれません。
自分を出す最大の方法は、思ったことを言葉にしてみることです。「これは言っちゃまずいんじゃないか」と思っていることを、言葉にしてみましょう。すると思ったよりも周囲からの反応がよいこともあります。たとえば「高齢者に免許返納させるのは差別だ」「タバコを吸っている人を迫害するのは差別だ」などと言ってみましょう。
養老孟司さんの『バカの壁』(新潮新書)でも書かれていますが、こちらが言った言葉を相手がその通りに理解してくれる保証はほとんどありません。本音を言ってみると、それに反対する人も間違いなくいるでしょう。
ただ、逆に、こちらが言った言葉に対して、相手が思った以上に好意的な反応を示してくれることもあります。
10人に言って2人賛同してくれる人がいるならば、言いたいことが言える相手が5人もいると考えられます。それだけの人が賛同してくれるのであれば、老後はきっと退屈しないでしょう。
『60歳からはやりたい放題』(扶桑社刊)では、60代が第二の人生を楽しむためのコツを紹介。ぜひチェックしてみてくださいね。